勇者と魔法使いのショートコント ケガ
勇者
「痛っ」
魔法使い
「どうしたんですか勇者さん!」
勇者
「ちょっと机の角に手をぶつけただけだよ」
魔法使い
「私に見せてください!」
勇者
「え? いや血も出てないし大丈夫だよ」
魔法使い
「アアー!」
勇者
「何だよ!」
魔法使い
「これ重症じゃないですか! さっさと人工呼吸しないと!」
勇者
「手を打っただけって言ってんだろうが!」
魔法使い
「手打ちうどんが何ですって?」
勇者
「言ってねーよ! ケガなんてしてないって言ってんだよ!」
魔法使い
「何言ってるんですか勇者さん! もしかしたら内出血してるかもしれないじゃないですか!」
勇者
「してないし、してたとしても心配しすぎだろ」
魔法使い
「内出血を放っておいたら酷いことになりますよ! ちょっと腫れているだけだと思って放っておいたらミサイルが飛んできて死ぬこともあるんですからね!」
勇者
「全員死ぬわ」
魔法使い
「とにかく、早く処置しないと大変なことになるんですよ!」
勇者
「じゃあ調合師に見てもらってくる」
魔法使い
「ダメです! あの女は危険です!」
勇者
「何それ自分に言い聞かせてんの?」
魔法使い
「あの女、きっと勇者さんに媚薬とか飲ませてあれやこれや悪戯するつもりですよ! そうに違いない!」
勇者
「おまいう」
魔法使い
「とにかく! 私が魔法使いらしく何とかします!」
勇者
「いや、でもお前攻撃魔法しか使えないじゃん」
魔法使い
「残念でしたね! 私は『呪い』も使えるんですよ!」
勇者
「ダメじゃねーか!」
魔法使い
「例えばこの人形!」
勇者
「おい、まさかその人形で俺を呪うつもりじゃ……」
魔法使い
「一言に呪いと言ってもたくさんあります。針を刺すことで、刺さった部分の痛みを取り除く呪術もあるんです」
勇者
「すごく嫌な予感がするから刺さないでくれないか?」
魔法使い
「そいや!」
――魔法使いは人形の手に針を差し込んだ!
勇者
「いたたたたたた!」
魔法使い
「そんなに喜んでくれるなんて嬉しいです」
勇者
「んなわけあるかぁ! 刺された部分が強烈に痛いんだよ!」
魔法使い
「あ、これ闇魔道士から(半ば強引に)貰った呪いの藁人形でした」
*第102部分 勇者と魔法使いと闇魔道士のショートコント 6参照
勇者
「いま絶対ワザと間違えただろ!」
魔法使い
「さあ勇者さん! 動いちゃダメですよぉ! 今度は私特製の塗り媚薬を塗ってあげますからねぇ!」
勇者
「もう媚薬って言ってんじゃねーか!」
魔法使い
「えいや!」
――魔法使いは塗り薬を勇者に付けた!
勇者
「うわああああ! …………あれ、布じゃん」
魔法使い
「あ、これ闇魔道士のパンツでした」
勇者
「きったねえ!」
おわり
勇者
「なんで持ってたの?」
魔法使い
「勇者さんの嫌がる顔が見たくて見たくて」
勇者
「……」
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