勇者と調合師と水の精霊のショートコント 2 勇者、おぼれる
――調合師と薬草を取りに来ていた勇者は、吊り橋から落ちて川に流されていた!
勇者
「ガババッババガ!」
水の精霊
「勇者、助けに来たぞ!」
勇者
「グボボボボバ!」
水の精霊
「ん? なんだか楽しそうじゃから少し観察するか……」
勇者
「ゴボボヘー!」
――勇者は水の精霊によって川岸まで運ばれて来た!
勇者
「ゴホゴホっ、死ぬかと思ったぁ」
水の精霊
「ふん、溺れただけで死にかけるとは情けない奴じゃな」
勇者
「だいたい死ぬわ! 人間だもの!」
水の精霊
「そんな事で妾と結婚生活を送れると思っているのか」
勇者
「ははっ、水死体と暮らす気かい!」
――その時、調合師が崖の上から川へ落ちて来た!
調合師
「助け……て……」
勇者
「なんで調合師が!? まあいい、このロープに掴まれ!」
***
勇者
「っはあはあ、お前どうして落ちて来たんだ……」
調合師
「実は、勇者が落ちた後助けを呼ぶために山を降ろうとしたの……」
勇者
「モンスターにでも襲われたか?」
調合師
「いいえ、歩いて山を降りるのが死ぬほど面倒だったから落ちた方が速いかなって」
勇者
「発想ぶっちぎってんなお前!」
調合師
「面倒な事は嫌いなの……」
勇者
「でも降りは自分で歩けよ」
調合師
「えー」
勇者
「えー、じゃねえ! まったく、よくそれだけの理由であの高さから落ちようと思えたな」
調合師
「だって、私が落ちても助けてくれるって信じてたから……」
勇者
「お前……」
調合師
「水の精霊が」
勇者
「ははっ、ですよねー!」
水の精霊
「しかし勇者、お主よくロープなんぞ持っておったな」
勇者
「これか? 実は吊り橋が壊れて落ちた時、無意識に手すりのロープを掴んでたんだ」
調合師
「きっとヒモ同士通じ合うところがあったのね……」
勇者
「この紐で縛り上げるぞテメェ……」
水の精霊
「しかし調合師が水に落ちた衝撃で気を失っていなくて良かったわ」
勇者
「本当だよ。引き揚げづらくなるし、人工呼吸する必要もあったしな」
調合師
「勇者のエッチ……」
勇者
「なんでだよ!」
水の精霊
「確かに勇者と唇を重ねるのは相当の覚悟がいることじゃな」
勇者
「俺の口は地獄の門か」
調合師
「勇者に人工呼吸してもらうのは別に構わない……」
勇者
「えっ、そうなの?」
調合師
「死ぬよりは若干マシ……」
勇者
「若干かよ!」
調合師
「それに、この川で好きなだけ口を清められる」
勇者
「穢れか! 俺の口は穢れてんのか!」
水の精霊
「ふふっ、勇者よ、妾ならいつでもしてやる準備が」
勇者
「さて、そろそろ帰るか」
調合師
「おんぶ……」
勇者
「えー」
水の精霊
「……もっかい川に落とすぞお主ら」
おわり
お読みいただきありがとうございました!