勇者と魔法使いのショートコント 手料理
魔法使い
「勇者さん、私、料理を作りましたよ」
勇者
「お前が? 珍しいな」
魔法使い
「ということで一人で食べますね」
勇者
「じゃあ何で俺に報告したんだよ」
魔法使い
「冗談ですよ。勇者さんに食べて欲しくて作ったんです」
勇者
「……」
魔法使い
「あれ、どうしたんですか勇者さん?」
勇者
「いや疑うわけじゃないんだけどさ、毒物とか入ってないよな」
魔法使い
「めちゃくちゃ疑ってるじゃないですか」
勇者
「だってお前が作ったんだろ!?」
魔法使い
「すごい勢いで失礼なんですけど」
勇者
「ちなみにどんな料理を作ったんだ?」
魔法使い
「グラタンです」
勇者
「よりによって俺の好物じゃないか!」
魔法使い
「そろそろ怒りますよ私も」
勇者
「食べたい……、でも死にたくない……」
魔法使い
「なんで私の料理を食べる=死なんですかね」
勇者
「……でもどうして急に料理を作ろうと思ったんだ?」
魔法使い
「料理といえば普段は闇魔道士が作ってるじゃないですか」
勇者
「そうだな」
魔法使い
「それって支配だと思うんですよ」
勇者
「また訳の分からない事を……」
魔法使い
「だって人は食べないと死ぬんですよ!? ということは私たちを生かすも殺すも闇魔道士次第じゃないですか!」
勇者
「なんか微妙に違う気がするんだが……」
魔法使い
「だから私が食事当番になってこのパーティーを支配します!」
勇者
「お前の方がよっぽど闇の者っぽいんだが。ところでそのグラタンには何が入ってるんだ?」
魔法使い
「心配しなくても体に栄養のあるものは何も入ってませんよ」
勇者
「じゃあこれ何で出来てるんだよ」
魔法使い
「でも昔っから体に悪いものほど食べたら早死にするって言うじゃないですか!」
勇者
「うん、要するに俺を殺す気なのか?」
魔法使い
「違いますよ! 私はただ勇者さんを支配したいだけです!」
勇者
「余計に食べたく無くなったんだが」
グラタン
「早く食べろよ」
勇者
「なんでお前が喋るんだよ!?」
魔法使い
「そのグラタンは闇の儀式により意思を宿したのです」
勇者
「もうお前が闇魔道士に改名しろよ!!」
グラタン
「男のくせに駄々こねやがって、みっともねぇぞ」
勇者
「グラタンのくせに喋る奴には言われたくないわ!」
魔法使い
「早く食べて下さいよ。グラタンもこう言ってることですし」
勇者
「グラタンを女友達みたいに言うのやめろ!」
グラタン
「一口でいいから! 頼むよ、先っぽだけ口に含むだけでいいから!」
勇者
「童貞かお前は!」
魔法使い
「童貞は勇者さんじゃないですか」
勇者
「うるせえ!」
魔法使い
「っていうかこのグラタン、喋って気持ち悪いから捨てますね」
勇者
「何がしたかったんだお前は!」
おわり
お読みいただきありがとうございました!