勇者と水の精霊のショートコント 2 眠れぬ夜
※勇者と女騎士が捕まったり女騎士の実家を訪れたりするより前のお話です。
――深夜、宿屋の男部屋にて!
勇者
「うーん、なかなか眠れないな。コーヒーを飲み過ぎたのが悪かったのか……」
勇者
「こんな時は羊でも数えるか」
勇者
「――匹、羊が334匹、羊が335匹……、だめだ全然眠気が来ない」
眠気
「来たぞ」
勇者
「帰れ」
勇者
「そういえばこんな時は『くっころ』を数えたらいいって女騎士が言ってたな」
勇者
「――くっころが1321匹、くっころが1322匹……、だめだ頭がおかしくなってしまう。どうすれば」
水の精霊
「そんな時は妾にお任せじゃ!」
勇者
「おい勝手に出てくるなよ。それにデカい声で喋ってると闇魔道士が起きるぞ」
眠っている闇魔道士
「うぅん、だめだ勇者、それはチクワではなくて魔法の杖だ……」
勇者
「何の夢を見てるんだアイツは……」
水の精霊
「ほら勇者! 寝ている奴なんか放っておいて妾とお話をするのじゃ」
勇者
「なるほど、喋ってたらそのうち眠くなるかもな」
――30分後!
水の精霊
「――それで妾はこう言ったのじゃ、『この顔面フィルダースチョイスめ!』と」
勇者
「うぅん、そろそろ眠く、なってきた……」
水の精霊
「そしたら」
勇者
「zzz」
水の精霊
「おい寝るな!」
――水の精霊は勇者の頬を叩いた!
勇者
「痛っ! 何すんだよ、せっかく寝れそうだったのに!」
水の精霊
「人と話しておるのに寝るとは何事じゃ!」
勇者
「じゃあ何のために出て来たんだよお前は!」
水の精霊
「朝までお話するために決まっておるじゃろう!」
勇者
「帰れ!」
水の精霊
「ほほう、妾にそんな事を言ってもいいのか?」
勇者
「なんだよ」
水の精霊
「良いのか良いのか? お主が寝ている間に妾の力で股間だけ濡らして、『おねしょした感』を出すぞ。それでも良いのか?」
勇者
「くっ! なんて卑劣な!」
水の精霊
「分かったら諦めて妾に付き合うのじゃ!」
勇者
「分かったよ、明日起きたらいっぱいお話してやるから、今日は寝させてくれ」
水の精霊
「……ふむ、よかろう。それじゃあ妾はこれでひとまず」
勇者
「ああ、また朝な」
水の精霊
「お布団の上で寝よ」
勇者
「帰れよ!」
水の精霊
「zzz」
――水の精霊は布団の上で眠り始めた!
勇者
「寝付くの早っ! ……ああもう、風邪ひくぞ起きろ」
水の精霊
「zzz」
勇者
「仕方ない、こいつに布団をかぶせて俺はソファーで寝ることにしよう」
――勇者は水の精霊を抱えた!
闇魔道士
「勇者……」
勇者
「うわっ! 闇魔道士、いつから起きてたんだ!?」
闇魔道士
「貴様が『ほぉら俺の股間が濡れ濡れだよ』と言っていたところから」
勇者
「言ってねぇよ!」
闇魔道士
「おい児ポ法、じゃなかった勇者」
勇者
「お前わざと間違えてんだろ!」
闇魔道士
「悪いことは言わん。自首しろ」
勇者
「だから何もしてねぇよ!」
闇魔道士
「冗談だ、貴様が水の精霊に寝床を貸そうとしていたことは分かっている」
勇者
「な、なんだ、本気で誤解されてるのかと思ったわ……」
闇魔道士
「だから我の学生時代の話を」
勇者
「さて朝だ起きるか!」
――勇者は逃げ出した!
おわり
お読みいただきありがとうございました!