勇者と女騎士のショートコント 3 元旦
勇者「あけましておめでとうございます」
女騎士「どこに向かって喋っているんだ勇者」
勇者「それはそうと、今年は戌年らしいな」
女騎士「そうなのか?」
勇者「なんだ知らないのか」
女騎士「私の国の干支は『くっころ』しかないからな」
勇者「なんて悲惨な国なんだ」
女騎士「くっころというのは山岳地帯に住む鹿の一種だ」
勇者「『くっころ』いるのかよ!」
女騎士「今年もいい年になるといいな!」
勇者「お前と話してると頭がおかしくなりそうだ」
女騎士「大丈夫か勇者? くっころ科の病院に行ってみたらどうだ」
勇者「余計に悪化するわ! 何を治すところなんだよ!」
女騎士「くっころ力の低い者を集めて、体内のクッコロニウムを高める治療をするのだ」
勇者「もう完全にカルト宗教じゃんそれ!」
女騎士「まぁ私も行けと言われようと絶対に行かないけどな!」
勇者「じゃあなんで俺に勧めたんだよ!」
女騎士「まぁまぁ、そんな事より勇者、今年はどんな年にしたい?」
勇者「そうだな、やっぱりもっと強くなりたい!」
女騎士「やはり、お前ならそういうと思っていた」
勇者「そうか」
女騎士「一緒にくっころ力を上げるセミナーに参加しよう」
勇者「病院と同じじゃねーか!」
女騎士「えいっ! くっころ気絶薬!」
勇者「ぐぁっ! な、なにす……」
――勇者は気絶した!
勇者「うーん、ここは……、ん? なんか歌が聞こえてくるぞ」
くっころ それは神の導き
くっころ それは宇宙の真理
くっころ それは力
くっころ それは命の源
ああ なんと素晴らしき くっころの 輝き
勇者「うぁあああ……! なんだこれ!? 大人たちが狂ったように歌いながら踊っている!?」
女騎士「おお、起きたか勇者! 早く逃げよう」
勇者「逃げようってお前が気絶させてここまで連れてきたんだろうがぁ!!!」
女騎士「す、すまん勇者許してくれ! 私が前に参加した時はこんなおかしなことはしていなかったんだ!」
勇者「本当なのか?」
女騎士「ああ、前はせいぜい互いにハチミツを塗り合うくらいのものだった」
勇者「そっちの方がガッツリヤバいじゃねぇか!!」
女騎士「せっかく勇者とハチミツを塗り合えると思ったのに!」
勇者「ベッタベタになるわ!」
女騎士「家の軒下に!」
勇者「何のテロだ!」
主催者「おやおや、これは若い参加者さんたちだ……」
勇者「あっ、僕たちこれで帰るんで、すいません……」
――しかし勇者たちは参加者たちに囲まれてしまった!
勇者「な、何なんだお前ら!」
主催者「ククク、くっころの素晴らしさを知ってもらうまでは返すわけにいきませんねぇ!」
女騎士「おい勇者! こんな時はアレだ! アレをやろう!」
勇者「なんだ、どうすれば良いんだ!」
女騎士「クッコロコロコロクッコロコロコロ」
勇者「はっ、そうか! クッコロコロコロクッコロコロコロクッコロコロコロクッコロコロコロ」
主催者「おい、この二人を牢にぶち込んでおけ」
勇者「駄目じゃん!」
おわり
あけましておめでとうございます。