勇者と魔王のショートコント 35 家庭訪問2
――魔王はリビングに通されていた!
魔王
「今度は何が出てくるんだ……」
???
「あら、いらっしゃい」
勇者
「おう母ちゃん、魔王を連れて来たぞ」
勇者の母
「あら、あなたが魔王ちゃん? いつもウチの息子がごめんなさいね」
魔王
「(これが勇者の母上か。すごく美人だな……。どうやってあの変態オヤジがこの人と結婚できたんだ)」
勇者の母
「あら、私と旦那がどうやって結婚したか気になるの?」
魔王
「心を読まれた!?」
勇者の母
「実は私、むかし勇者だったの」
魔王
「なんだ世襲なのか……」
勇者の母
「お父さんは私のパーティーの一員だったわ」
魔王
「ほう、変態の職業は?」
勇者の母
「おとり」
魔王
「おとり!?」
勇者の母
「そう、おとり」
魔王
「いや、そんな職業は初めて聞いたんだが」
勇者の母
「でも『おとり職』ってよくあるでしょ?」
魔王
「それはいわゆる『タンク職』のことじゃないのか?」
*タンク職:前衛に立ち、仲間を攻撃から守る役割を担う職業。
勇者の母
「『おとり』をタンク職なんかと一緒にしないで!」
魔王
「ごめんなさい……。待て、何で私が怒られているんだ」
勇者の母
「お父さんは本当に使えなかったわ」
魔王
「おい」
勇者の母
「だから『おとり』にするしかなかったの」
魔王
「発想が悪者のそれなんだが」
勇者の母
「例えば手強いモンスターがたくさん出るじゃない?」
魔王
「ああ」
勇者の母
「そうしたらお父さんを前衛に放り出すの」
魔王
「鬼畜の所業か!」
勇者の母
「あら、魔王のくせに随分と温い事を言うのね」
魔王
「それも完全に悪役のセリフだろ!」
勇者の母
「でもお父さんの『おとり』能力は凄いわ。屈強なモンスター達はお父さんを攻撃することに夢中になるの」
魔王
「絵面が汚すぎるんだが」
勇者の母
「そして今がチャンスとばかりに私は」
魔王
「とどめを刺すのか」
勇者の母
「ご飯を食べるの」
魔王
「放置プレイにもほどがあるわ!」
勇者の母
「シバかれてるお父さんを見ながら食べるご飯は最高に美味しかったわ」
魔王
「本当に何でその男と結婚したんだ?!」
勇者の母
「そしてご飯を食べ終わったら今度はいよいよ」
魔王
「やっとか」
勇者の母
「スイーツの時間」
魔王
「フードファイターか!」
勇者の母
「そうやって私たちは冒険者の間でも有名になっていったわ」
魔王
「完全に悪目立ちだろ」
勇者の母
「まだまだ冒険は続けていたかったんだけれど、妊娠していることが分かったから止めたの」
魔王
「お前らと戦うことにならなくて本当に良かった」
勇者の母
「ということで今からボス戦ね」
魔王
「は?」
勇者の父
「さあ私の尻を叩きなさい!」
勇者
「いや俺の尻を叩け魔王!」
魔王
「よし家ごと消し飛ばそう」
――勇者の家は消し飛ばされた!
おわり
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