ダンジョン編 11 勇者、泉にて
――勇者は穴から転がり落ちた!
――あたりを見渡すと傍に泉がある。
勇者
「うぅ、痛ぇ……ってこんなところに泉?」
???
「誰じゃ!」
勇者
「ん? なんだ人か?」
――声の主は女の子だった!
女の子
「誰だと聞いておるのじゃ!」
勇者
「ああ、すまん。俺は勇者だ。腕試しのためにダンジョンに潜っている。お前は?」
水の精霊
「妾は水の精霊じゃ。この場所は人間の来るところではない。さっさと立ち去れ」
勇者
「分かったよ」
水の精霊
「待て!」
勇者
「どうした?」
水の精霊
「なぜ立ち去るのじゃ」
勇者
「いやお前が立ち去れって言うから」
水の精霊
「それはおかしいじゃろ! じゃあ妾に『金を出せ』と言われたらチンチン出すのか?」
勇者
「ピタゴラスイッチか」
水の精霊
「ふん、分かったらとっとと立ち去れ!」
勇者
「……何なんだコイツ……。さて、さっさとあいつ等と合流しないとな」
水の精霊
「待て!」
勇者
「何なんだよ!」
水の精霊
「なぜそんなにさっさと立ち去ろうとするのじゃ!」
勇者
「……寂しいの?」
水の精霊
「そ、そんなわけなかろう! 水の精霊に向かって無礼じゃぞ! さっさと出ていけ無礼者!」
勇者
「どっちなんだよ」
水の精霊
「でも、どうしてもこの泉で休みたいと言うなら、ちょっとくらいは休ませてやってやらなくもないことは無いけど、あったりすることもないかも!」
勇者
「どっちやねん」
水の精霊
「別に妾はお主とお話したいわけじゃないしコブラツイストをかけたいわけでもないからな!」
勇者
「分かった分かった、予定があるから俺はもう行くぞ」
水の精霊
「少し待て!」
勇者
「どれくらい待てばいいんだ」
水の精霊
「ほんの100年くらい!」
勇者
「終身刑か!」
水の精霊
「駄目か……」
勇者
「でもまあ1時間くらいなら」
水の精霊
「本当か!」
――1時間後!
水の精霊
「ぬははははは。100年ぶりの会話は愉快であった」
勇者
「そりゃ良かった。それじゃ俺は行くぞ」
水の精霊
「まて、あと1000年だけ! あと1000年だけ!」
勇者
「増えてんじゃねえか! 1000年なんて人間には無理だよ」
水の精霊
「どうしてもこの泉を出ると申すか!」
勇者
「申す」
水の精霊
「そんな事を言って良いのか! そんな事をしたら妾が寂しくて何年もむせび泣くことになるけどそれでも良いのか!」
勇者
「変わった脅しだな。うーん、それなら俺と来るか?」
水の精霊
「なっ、お主 妾を誘っておるのか?」
勇者
「そうだ」
水の精霊
「断る!」
勇者
「分かった。じゃあ行くわ」
水の精霊
「ちょっと待て!」
勇者
「なんだよ面倒くせえな!」
水の精霊
「め、面倒くさいじゃと!」
勇者
「面倒くさいわ!」
水の精霊
「水の精霊である妾にそんな口を叩いてただで済むとでも……」
勇者
「うるせえよ! いいから俺に付いてくるのか付いてこねえのかハッキリしろ! どっちなんだよ!」
水の精霊
「……ふっ、よかろう。この100年間で妾をそんな強引に誘ってきたのはお主が初めてじゃ」
勇者
「100年誰とも会ってなかったんだろうが」
水の精霊
「お望み通り、妾はお主と夫婦の契りを結ぼうぞ」
勇者
「え?」
――勇者は水の精霊を召喚できるようになった!
続く
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