勇者と魔王のショートコント 34 家庭訪問
——魔王城の中庭には立派な一軒家が立っていた!
魔王
「いつの間に……」
勇者
「まあ遠慮せずに中に入れよ」
魔王
「遠慮せずにって私の庭だろ!」
勇者
「そうカリカリするな。そうだ、ウチは可愛い犬も飼ってるんだぞ」
魔王
「犬……?」
——勇者が扉を開けると四つん這いの中年男性が飛び出して来た!
魔王
「うひゃああああ!」
勇者
「あれが犬だ」
魔王
「いや呪いか!」
オッサン
「わんわん! 私は犬でございます」
魔王
「お前も黙れ!」
勇者
「まあ犬っていうのは嘘で本当はウチの親父なんだけどさ」
魔王
「ここは地獄の入り口か!」
勇者
「いいから上がれよ」
魔王
「断る! 入ったらまた何が出てくるか分からんじゃないか!」
勇者の父親
「魔王さん、あなたに会うのは2回目ですね」
※第9部分 勇者と魔王のショートコント Heaven 参照
魔王
「一瞬過ぎて顔も忘れてたわ……」
勇者の父親
「こんな不束者の息子ですが、どうかよろしくお願いします」
魔王
「待て待てオヤジ、貴様は何を言ってるんだ」
勇者の父親
「何って、魔王さんが来月ウチの息子と結婚されると聞きましたもので」
魔王
「おい勇者!」
勇者
「プヒュ! プヒュー!」
魔王
「口笛ヘタクソか!」
勇者の父親
「あれ? 違うんですか?」
魔王
「違うに決まってるだろ!」
勇者の父親
「では年が明けてからということで?」
魔王
「いや時期の問題ではなくて! 結婚自体をしないのだ!」
勇者の父親
「では私にもチャンスがあるということですね!」
魔王
「なんだそのポジティブ思考は?!」
勇者の父親
「いやでも、やはり私は孫の顔が見たい……。どうか息子と結婚していただけないでしょうか」
勇者
「そうだそうだ!」
魔王
「殺すぞ」
勇者の父親
「バカな子ほど可愛いと言いますが、その通りだと思います。息子は昔から少し変わっておりましてね」
魔王
「どう考えても貴様の遺伝子なんだが」
勇者
「それからそれから!」
魔王
「黙ってろ」
勇者の父親
「しかしそんな息子でも今はシッカリ働いているわけなんですけどね」
魔王
「待て」
勇者の父親
「お乳の時間ですか?」
魔王
「どんな拷問だ?! そうじゃなくて! 貴様の息子はそこの勇者の名を借りたクソニートじゃないのか」
勇者の父親
「ええ、息子からは魔王城で『観葉植物』として雇われていると聞きましたもので」
魔王
「おい勇者!」
勇者
「おっとそろそろ家に帰らなきゃ」
魔王
「ここだろうが!」
勇者
「まあそういうわけだからさ、中に上がってけよ」
魔王
「断る! 貴様だけでも手に負えないのに貴様のオヤジまで居たら死んでしまうわ!」
勇者
「いや母ちゃんも居るぞ」
魔王
「なに家族で住み着いてくれてるんだ貴様ら!?」
勇者
「これからは魔王も一緒だな!」
魔王
「嫌じゃあ!」
つづく
100部に到達できたのはここまで読んでくださった皆さんのお陰です!
お読みいただきありがとうございました!