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教師探偵  作者: カラスの手
ソフトボール大会
28/28

日本代表監督の思惑

「チェンジ!」一回の表、終了。

ふぅ、スリーアウト無失点に切り抜けられたよ。恋歌の為なら、私の体はどこまでだってやるんだから。

「お、おい、ヤバくねぇか。」

「あぁ、今日の大那ちゃんは化け物だぞ。」

「きっと、日本代表監督がいるからだろ。」



「よくやった、大那さん。ここからは球速を緩めるんだ。」

「だから、言っているじゃないですか。バカ教師。球速を緩めたら、灰仙高校に勝てません。けれど、球速を緩めなきゃ、大那さんの体は壊れます。もう、どうすれば。」

なんか、凄い。先生同士でけんかしているところなんて初めて見た。面白~い。

「日本代表候補に選ばれたことのあるセリフとは、思えんわい。桐谷恋歌がおるじゃろ。最大限に大那の能力を生かすんじゃ。捕手は引き立て役じゃ。引き立て役は何をするか、言ってみ。」

やっぱり本物なんだぁ。ソフトボール始めたころ、この監督をテレビで見たことがある。

けれど感動はしなかった。動物園デートをしたときにみる、動物には興味がない。あれ、たとえおかしいかなぁ。ようするに今は恋歌さえいてくれれば、それでいいんだもん。恋歌の幸せが私の幸せだから。

「引き立て役は主人公を輝かせる。だから、私は夏三の力を最大限に引き出します。」

恋歌、ヤバイ、超優しいんだから。

「よぅ、言おうた。なら、大那夏三のチェンジアップは、この試合使わんでいい。全力のストレートだけじゃ。その後の二試合は、好きにせぇ。」

やっぱり、そういうことになっていたんだ。私が三試合投げることになって。

だけど、恋歌の為だったら、なんだってやる。約束したんだもん、決勝は完封勝利をするって。それに、最初は三試合投げるって宣言したし。

あれ?恋歌、顔色くらい?体調でも悪くなったのかなぁ。

「そ、それって、夏三を三試合連続登板させるってことですか。」

「そうじゃ。」

恋歌、私を気遣ってくれてる。何食わぬ顔をして喋る日本代表監督に食らいついて。

「そ、そんな無茶苦茶です。私は中学からソフトボールやってるから、分かる。まだ一年しかたっていないのに、センスだけで投げられる夏三は本当に凄いです。ですが、死んでしまいます。三試合も全力で投げれば。」

もぅ、褒めてるんだか、バカにしているんだか、分かんないよぉ。けど、ありがとう。恋歌はただ必死なだけ。けれど、そんな恋歌に甘えちゃダメ。恋歌の思いをつなぐ架け橋になるのは、私しかいないんだから。

「恋歌、大丈夫。私は、恋歌の為、チームの為だったら、いくらでも投げられるよ~。」

全部本音。嘘偽りなく、恋歌に笑顔を向け言った。

「私に気を使わないで!!夏三は、分かってない。どれだけ、無茶か。」

恋歌、どうして?どうして、桐谷先生に思いを伝えるんでしょ。

恋歌のきつい一言で、抱きつこうとした手を引いてしまう。

「大切な友達だから、無茶してほしくないの。」

「恋歌、私も同じだよ。大切な友達の為だったら、死ぬことなんて怖くない。」

今にも泣きだしてしまいそうな恋歌の頬を優しく触った。温かい、恋歌の純粋な気持ち、私がかなえさせるんだから。

「よぅ、言おうた。なら、一度死んでもらう。」

「な、なに言ってるんですか。いくら日本代表監督でも、それは駄目です。」

当り前だ、止めに入るのは。まさか、三試合投げたら死ぬなんて、聞かされてない。探偵だったからわかる。この監督、少し頭がおかしい。いくら大那が凄いからって。

「な~に、本当に死にやせん。死ぬちゅうんわ、拳銃の引き金を引くみたいなもんや。それより、始まるわい。」

えっ?拳銃の引き金を引くって、どういうことだよ。あれか、あれなのか。俺がソフトボール素人だから分からない専門用語みたいなものなのか?いや、それにしては誰も意味が分かっていないように見えるし。

「じゃ、恋歌、そういうことだから。それに、つぎは攻め!みんな、勝つよ~。」

「ちょ、夏三。もう、無茶だけは止めて。」

「任せておき~。」

任せるって、駄目だよ。けれど、夏三は私の為だったら、いくらでも無茶する気だ。夏三は、それだけ私のことを思ってくれてる。今何を言っても無駄だ。だからこそ、私にできることは、夏三のコントロール。三試合でも、チェンジアップを多用すれば、なんとか持つ。それでも夏三の体が悲鳴を上げたら、私が試合放棄をする。

捕手である私が、ゲームを投げ出せば、それで済むんだから。

「恋歌、たまには私のわがまま聞いて。」

ベンチに隣同士に座る。もう、なんとなく一緒にいるだけで気持ちがわかる。恋歌は優しすぎる、けれど違うの。その優しさは、自分を犠牲にする優しさは、廉価を余計に辛くさせるだけなんだから。だから、なんとしてでも投げるって決めたの。

「わがまま、聞いてるよ。けど、夏三には。」

温かいなぁ、恋歌の手は。

後輩たちに見られないよう、ぎゅって握った。。恋歌の温もり、優しさ、本当に大好き。こんな細くてか弱い手で、私のボールを受け止めてくれる。いつだって、そう。襲ったときだって、気持ちを受け止めてくれて、この手で抱きしめ返してくれた。恋歌がいなきゃ、本当に私ダメみたい。

けれど、恋歌がいてくれる。だから私らしくいられるんだから。

「夏三、恥ずかしいよ。」

恋歌の吐息は耳元をくすぐる。本当は私のものにしたい。けれど、恋歌は先生が好き。

「ごめん。」











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