先生
5歩進めば受付がある。
久しぶりなので、保険証を出した。
今日はどうされましたか。
淡いピンクのナース服の女のヒトが話した。私は、答える。
最近急に痩せてしまって、ちょっとしんどいのと、あ
まり眠れません。
簡潔にまとめれたか、と考えながら、
女のヒトの次のコトバを待つ、
では、おかけになってお待ちください。
ふうっ 、とりあえずミッションクリア。
長椅子に座った。クリニックにはざっと10人のヒトがいた。
がんばれ私と言い聞かせ、何をして待つかを考えた。
雑誌が見える、今はやめておこう、
TVが目の前の壁にかかっている、今は見たくない。
少しうつむき、目を閉じた。
今は、影響がたくさんありすぎるから、
とりあえず、ひとつの感覚をダウンさせてみた。
おちつく
アタマの中でのそう感じた。
二、三分たっただろうか、
ナカヤマさん、診察室へどうぞ。
女のヒトが少し微笑んでこちらを見ている。
私は、立ち上がり歩いた。
10歩ほどで扉のない診察室の中に入り、
椅子に座ると、カルテに向かっている淡い水色の制服を着た先生が、
こちらを見た。
本当の事を言わなきゃ
と考え、先生を見返した。先生は半袖だった。
上着も着ていない、しかし、その時は気にならなかった。
どうしましたか。
キビキビとした口調で、穏やかだけども、
まっすぐの目でこちらを見ている。
今年に入って体重が4キロ減ったんですが、普通に食べてるけど、体重が戻らない、 んです。1月末から10日間、1日15時間働いていて、その仕事はもうやめたんです が、少し休んで、前の仕事に戻りました。3つのバイトをかけもちしてます。
と、事実を間違えないように言った。先生は、
あなた、今なんキロですか、
と言うので、私は、
39キロです。いつもは、43キロです。
と言った。
身長はなんセンチ、
私は、答える。
160センチです。
先生は、すぐに、
ちょっと体重おちすぎだねえ、働きすぎだよ、そんな働き方は止めなさい。
仕事、変えなさい。
となかば、あきれて、そして、怒られた。
久しぶりだった。
頭ごなしに、怒られることが。
とても、うれしく感じた。
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