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悪役はぽっちゃりさん。  作者: クロム
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ぽっちゃり4

さて、帰って来ました。マイホーム!


今日は収穫もあったので、一旦マイ畑に行き薬草を種類ごとに植えました。


フルゥは畑がとても気に入ったみたいで、ついてすぐに畑にダイブしていました。


泥んこになってぷるぷるするのでどうしたのか聞くと、害虫の卵や雑草の種を食べていたみたいで肥料も作ったと、ドヤァされました。


とりあえずやることも済んだし、フルゥがかわいいので浄化の魔法で綺麗にしてから屋敷に入ります。


まず向かったのは、父さまのお仕事部屋。


父さまは、休みだの言いつつ余裕分の仕事をしちゃう方です。おそらく、今日もここに居るでしょう。


コンコン。


「父さま、メルフィリアです。


入ってもよろしいですか?」


入り口で伺うと待っていたようにドアが開かれた。


ドアを開いたのは、執事のビチェス・ワーカー。


「ありがとう、ビチェス」


「いいえ、お嬢様。さ、どうぞ」


ビチェスは、三十代そこそこの渋いおじ様で、メルフィリアの好みど真ん中だったりする。


父さまは、一見クールビューティーなのだが、ビチェスは優しそうな執事の鑑だ。



執務室の中、父さまが座って種類を処理していた。視線は私に固定されているけど…


「旦那さま、お茶の支度が出来ております。


お嬢様もこちらへ」


二人で座ってビチェスのお茶で一息ついた。


さて、


「父さま、紹介します!


私の従魔のフルゥです!」


じゃん!


ヨッ!


紹介と一緒に勢い良く差し出すと、フルゥが触手を伸ばし挨拶の如く持ち上げてプルンと震えた。


「…」


「…」


ドキドキ


プルンプルン、ドヤァ!


奇妙な沈黙が、部屋の中に漂い父さまは、お魚のようにパクパク口を開き、ビチェスですら珍しく目を見開いていた。


「…め、メルフィリア、そ、そのスライムが…従魔なのかな?」


「はい!かわいいでしょう?」


「な、何故スライムなのかな?」


「今日、薬草を採集していたらケガでぼろぼろになっていて…助けたらとてもなついてくれたんです。


しかもフルゥは精霊の加護を頂いたすごいスライムなのです!」


父さまに今日あった事をかいつまんで話すと、やはり加護を頂いた辺りでとても驚いていた。


「…なるほど、加護を頂いているのか…


それは素晴らしいが…スライムか…」


いやにスライムに拘る父さまに疑問があるが、ビチェスですら父さまの疑問がわかるのか、顔が渋い。


「父さま?」


「…メルフィリア、良く聞きなさい。


私はメルフィリアが愛しいし、体型も妻譲りだ。

その事に否定的なのは馬鹿な貴族ぐらいだ。


しかし、従魔は違う。


いくら加護を頂いていても、スライムは弱い。

従魔は主の力を示す者だ。


世間の風当たりは厳しいだろう。

いくら女性でも、スライムは使役しない。


それでも、従魔を誇れるかい?」


父さまは真剣なお顔で私の安易さを指摘した。


いくら精霊さんに勧められたとはいえ、私は一応貴族なのだ。


でも、私はフルゥが好きだ。


今さら無かった事には出来ない。


「…旦那さま、僭越ではございますが、私はよろしいかと思います。


確かに世間ではスライムは弱く価値が低くございますが、その多様性は未知数です。


見たところ、そのスライムは決してお嬢様の敵を許さぬでしょうし、しばし様子を見てはいかがですか?」


へこむ私をフルゥは優しく寄り添い、ビチェスに庇われた。


父さまの言う事も分かる。


父さまは一度従魔にしたならば、周りに負け、フルゥをないがしろにする事は許さないと言っているのだ。


私も勿論そんなつもりはない。


「…父さま、私は世間になど屈しません!


フルゥ以外の従魔だっていりません。


必ずやフルゥと一緒に乗り越えてみせます!」


『ぷ、ぷるぷぅーっ!!』


フルゥを抱き締め宣言すると、フルゥも一緒に「が、がんばるーっ!!」と叫んでくれた。


父さまとビチェスは驚いていたけど、最後には優しく嬉しそうに笑ってくれた。


「…わかった。


別に従魔は増えて構わないよ。


メルフィリアの覚悟はきちんと届いたからね」


「楽しみでございますね。


しかし、お嬢様は優秀でいらっしゃる。


従魔を使役するのはだいたい七つの頃ですから。

いくらスライムとはいえ、素晴らしいですよ」


ビチェスに褒められびっくりしたけど、テイムには力を示す関係上7歳が最年少だったらしい。


フルゥと一緒に照れながら頬っぺたをくっつけモニモニしていると、父さまがフルゥをガン見していた。


「…フルゥってとても気持ちよさそうだね…


メルフィリア、父さまにも少し抱かせてくれないかい?」


そろそろ伸びてくる父さまの手にフルゥは私を一回見てから、プルンっ!と飛び乗った。


「っ!!」


『ぷゅぷゅぷー』


父さまの手のひらで優しくぷるぷる震えるフルゥに父さまはギュッと抱き締めた。


「な、なんてかわいいんだっ


しかも冷たくて柔らかくて気持ち良い!」


『ぷゆーぷ!』


フルゥも笑顔で父さまにスリスリして、淡く光った。


「え、光った?」


「フルゥが、父さまの疲労がすごいので癒しの魔法を使ったんです」


「おや、凄いですね。フルゥ」


ぷるぷる、ドヤァ。



その後、父さまもフルゥを大好きになったみたいで、自分もスライムをテイムするか悩んでいた。


でも、こんな素敵なスライムはフルゥだけですからね!






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