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その、各国による核乱発……第五次世界大戦が起きたのは、今から約四百年前。当然のごとく、人間の数は激減した。だが、その頃には、アンドロイド技術が発達しており、ずいぶんと役に立ったらしい。NASAは十年毎に地球へアンドロイドに偵察に行かせて放射能数値を測らせているが、四百年間経ってもまだ生き物が住めるレベルには達していない。
そう言った理由から僕に親はいない。もちろん、ハイヴで産まれた子供たちすべてにだ。僕たちは、プロジェクト・コンジェムノというシステムの下、人工受精から、子宮を模したカプセルの中で育ち、取り出される。そして、識別番号で振り分けられたアンドロイド――人間と見紛う男性型と女性型の機械に育てられる。皮膚なんかは人工の割りに、人間のものとまったく変わらないので、小さい頃はアンドロイドと気づかなかった。
現政府は、人間同士が自然に命を産み出すことを許さない。物資が限りあるからという理由だけではない。政府は、人間自体が子を産み育てることによって、戦争のニの轍を踏みたくないからだ。だからこそ、数も含め、きっちりと管理しているのだ。
しかし、人間の精神衛生上、性行為自体を禁止しているわけではなく、然るべき態度で臨むなら構わない。過去にそう言った態度で臨むことなく、妊娠した女性がいた。それを隠したまま臨月を迎えたが、子供は出産後に取り上げられ、それからどうなったか僕にもわからない。だが、女性は出産後、二度と妊娠できないように処置を受け、解放された。
このように人間はアンドロイドと違って、感情に依った行動を取ってしまうことがある。こんなことが続けば、政府はミートゥースに感情抑制剤を追加するかもしれない。
――人とアンドロイドを分けるものは、感情。理詰めの機械と感情の人間……人間である僕は漠然とした不安を抱えている。生きることの意味……存在することの意味……生きなければならないことの意味……。
それらがわからないからこそ、僕はこの世界が偽物なのだと思わざるを得ない。