セクション10:帰還
アイスチームとブラストチームの機体が、堂々とファインズの滑走路へ降り立ち、凱旋する。
駐機場では、アイスチームの勝利を聞きつけた生徒達が、早くも駐機するミミ機の近くに集まり始めた。
エンジンを停止し、キャノピーを開けたミミは、彼らからの歓声に戸惑った。
生徒達は早速ミミ機を取り囲み、さまざまな祝福の声を送っている。
ようやく勝利の実感を掴めたのか、ミミは普段通りの優雅さを見せつつ、乗機を降りる。
「姫様ーっ!」
と。
不意にフィンガーの声がしたと思うと、ミミの胸に何かが飛び込んできた。
「やりましたね! 『王女の誇り』大成功です!」
フィンガーが、ミミに抱き着いたのだ。
またしても予期せぬ行動に戸惑っていると。
「そうだね。いろいろあったけど、私達アイスチームの手で掴み取った勝利だ」
「フィンガーの事も、ちっとは見直したかな」
遅れてやってきたミステールとチーターが、そう続けた。
2人共、勝利の喜びで笑んでいる。
「……そうですね」
ミミは僅かに笑むと、未だ抱き着いたままのフィンガーを見下ろす。
「フィンガー、今日のフライトで、文字通り王女としての誇りを取り戻せました。本当に感謝しています。今日ほど、あなたが僚機でよかったと思った事はありません」
「え……? ほ、褒められた……姫様に褒められた――!?」
ありのままの感謝の言葉を述べると、フィンガーが目を白黒させる。
「あ、ありがとうございます姫様ーっ! このフィンガー、姫様に一生ついて行きますーっ!」
そのまま、フィンガーは感動のあまりミミの胸元で泣き始めてしまった。
ミミはそれに戸惑う事なく、そっと彼女の背を撫でた。
「ミステールもチーターも、助けてくださってありがとうございます。そして――」
残りの2人にも感謝の言葉を告げると、視線を別の方向に映す。
「彼らの事も、忘れないでくださいね」
その先にいたのは、駐機したイーグルの上でこの様子を見ていたツルギ達だった。
不意に視線を向けられてツルギは一瞬驚いたが、すぐに笑みを見せながらサムズアップ。
ミミも、同じく笑みを見せながらサムズアップで答えてくれた。
「姫様、それにチーターも」
すると、緩い女性の声が耳に入った。
生徒達の渦の中から、フェザーがやってきたのだ。
アイスチームの面々は慌てて整列して姿勢を正す。
「ずっとモニターしていたけど、見事な戦いぶりだったわ。文句なしの追試合格よ」
フェザーは笑みを浮かべながら、結果を告げる。
「ありがとうございます」
「このチーター、これからも精進して参ります!」
ミミとチーターは、それぞれ感謝の言葉を返す。
「一時はどうなる事やらと思ったけど、王位を目指す王女の底力、しかと見せてもらったわ」
「とんでもありません。私がこの追試を戦えたのは、仲間達の助力があってこそです」
「そういう所も、『人望』という力の1つよ。これは将来が楽しみね」
フェザーとミミがやり取りする中。
「フローラ……!」
今度は別の人物が、割り込んできた。
ロックだ。
4機もの敵を相手に思う存分翻弄された反動か、隣にいるビクセンに肩を支えられなれば歩けないほど疲弊している。
それだけ彼は、強烈なGを浴び続けていたのだろう。
「僕には理解できない……! お前のあの力は、一体どこから湧いて出てきたものなんだ……? 適性なら、僕の方が勝っていたはずなのに……!」
納得が行かないと言わんばかりの表情と息切れた声で、ロックは主張する。
「シーザー……! あなた、この期に及んでまだ――」
ミミが前に出ようとしたが、伸びてきた腕に遮られた。
フェザーだ。
「では1つお聞きましょうか。あなたは、王になるのが当たり前と思っているそうですが、何を根拠にそうおっしゃるのです?」
そう問いかけるフェザーの眼差しは、先程とは一転して鋭さを帯びていた。
ロックは怯まずに、彼女の問いに答える。
「何を言ってるんです……そんなの、僕自身が選ばれた者だから――王になる運命だからに決まってます!」
「ですから、自分が選ばれたと思う根拠を聞いているのです」
「僕は、スルーズ家の男です! それが理由です!」
「……そうですよね。曲がりなりにもスルーズ家に生まれた最初の男なのですから、そう思うのも確かでしょう。では、王になるために何か努力している事はありますか?」
「努力……?」
フェザーの新たな問いかけに、ロックは僅かに動揺したように見えた。
「姉と、一緒にしないでくださいよ……努力なんてものは、足りないものを補おうとする者がやる事だ、姉よりも恵まれている僕がして、何の意味があるんです?」
「それが、あなたの最大の間違いですよ、王子」
まるでその答えを待っていたかのような、鋭い指摘。
ロックはその一言に、怯んでしまう。
「なぜあなたが姉に負けたか、教えましょうか? それは、あなたに向上心――いいえ、それを生み出す『夢』がないからです」
そんな彼に更なる追い打ちをかけるように、フェザーははっきりと指摘した。




