セクション08:対艦攻撃
「ブラストチーム、攻撃準備!」
発射ポイントが迫っている。
ツルギは、レーダーが目標となる船を捉えたのをしっかり確かめる。
ハープーンも異常がない事を再確認。
『ブラスト2、異常なし』
ラームの報告を聞きつつ、念のため背後を確認。
シーハリアーは1機も追ってきていない。
アイスチームは数の有利を武器に、護衛としてほぼ完璧に敵を引き剥がしてくれたのだ。
これなら、心置きなく対艦攻撃ができる――!
「ハープーンを片方だけ持ち帰っても仕方ない。2発全部撃とう!」
「ウィルコ!」
ストームの返事を合図に、攻撃シークエンス、開始。
レーダー、ロックオン。
HUDの映像には、船の位置を示す四角形が表示される。
後は、発射ポイント到達を待つのみ。
それに向けて、ツルギはカウントダウンを開始する。
「タイミングを合わせるぞ。5、4、3、2、1――今だ!」
発射ポイント到達。
直後。
「ブラスト1、ミサイル発射! ばーん!」
『ブラスト2、ミサイル発射!』
ストームとバズの叫びに合わせ、2機の右翼からハープーンが投下された。
ノズルに火が付き、一直線に目標へと飛んでいく。
「もういっちょ!」
さらに、反対側に積んだハープーンも発射。
計4発のハープーンが、軌跡を残さず船へと飛んでいく。
2機のイーグルはすぐさま旋回して退却。
発射機としての役目は既に終わった。後はミサイル次第である。
『ミサイル、目標へ接近中。アルタイル、戦果確認の用意をしてください』
ピース・アイがアンネリーゼに促す。
ミサイルがどうなったのか、肉眼で確かめる術はない。
ただ、ツルギはシチュエーション・ディスプレイを注視する。
ディスプレイ上で、ミサイルのシンボルが船へと向かっていくのがわかる。
それを、固唾を呑んで見守る。
『命中まで推定、3、2、1――』
ピース・アイがカウントダウンする間に、船へとみるみる近づいていく。
そして――
『今!』
ミサイルのシンボルは、全て船と重なって消えた。
果たして命中したのか。
緊張の瞬間。
後は、確認をするアンネリーゼからの報告を待つのみ――
『こちらアルタイル。ターゲットへの命中を確認。見事な爆発だ』
アンネリーゼの報告が、ツルギ達の緊張を一気に解き放った。
「やったあ――痛っ!」
ストームは喜びで突き上げた右腕を、キャノピーに思いきりぶつけた。
『へへっ、俺達の手にかかりゃ、ざっとこんなもんよ! 姫さんに感謝しなきゃな!』
バズも、得意げに声を上げている。
そしてツルギは、ほっと胸をなで下ろした。
「でも、あたし船が爆発しながら沈没する様子、見たかったなあ……」
「もう退役する船だぞ。見た所で何も面白くないって」
「だって、あたし達がやったんだぞー、って実感が湧くじゃない」
「まあ、そうだけど……」
勝利の余韻に浸って、ツルギはストームと会話をする。
これで、作戦目標は達成。
あとは――
『皆さん、作戦成功です――と言いたい所ですが……』
ピース・アイが、どこか意味ありげにそんな事を言った。
「え?」
ストームが首を傾げた直後、突如として警報が鳴り響いた。
ロックオン警報。
「まずい! ブレイク!」
ツルギが叫んだ直後、警報がミサイル警報へと変わった。
フレアを滝のようにばら撒きながら、2機は散開。
幸いにも警報は鳴り止んだが、攻撃したのは一体何者なのか?
「誰が――!?」
ツルギはすぐに後方を確認する。
そこにいたのは。
『これで勝ったと思うなよ、フローラ! せめてこいつだけでも落として、屈辱を味わわせてやる!』
アイスチームに足止めされていたはずの、シーハリアー。
しかも、乗っているのはロック。
3対2の数の差を、突破したというのか?
自分が知らない間に、アイスチームの誰かが落とされたのだろうか?
疑問が数かす浮かぶが、今は考えている余裕などない。
「ツルギ、もうあいつとやり合ってもいいよね?」
ストームが、ロック機と交戦する許可を求めてきた。
「ああ、今はハープーンを撃った後だ。心置きなくやっていい!」
「ウィルコ!」
対艦ミサイルを打ち終えたこちらに、空中戦を挑めないという選択肢はない。
迷わず承諾すると、ストームはスロットルを強く押し込み、アフターバーナーを点火。
ウィ・ハブ・コントロール号は、上昇して振り切ろうとする。
『ミサイル発射ッ!』
だが、相手も簡単には逃げさせてくれない。
そこを狙って、ミサイルを撃ってきた。
「当たるもんかっ!」
すぐに、右へ降下旋回。
翼をヴェイパーに包むほどの急旋回をしつつ、フレアを撒いて回避する。
『ミサイル切れか……だがまだ終わらんぞっ!』
ロック機のミサイルが切れたようだが、彼の戦意は未だ消えない。
たちまち2機は、旋回戦に突入した。
互いに敵の背後を取るべく、右旋回を何度も繰り返す。
それは、あまりにも激しすぎるメリーゴーランド。
重力の何倍もの力と戦いながら、両者は背後を狙う。
だが、その決着がつく前に。
『ミサイル発射!』
何者かの横槍が入った。
『っ!?』
ロック機はすぐに逆方向へ切り替えしながらフレアを撒く。
かくして、ウィ・ハブ・コントロール号はロック機を振り払う事ができた。
「今のは……?」
すぐに状況を確認する。
新たに向かってくるのは、1機のミラージュ。
どうやら、アイスチームも追いかけてきたようだ。
『味方を盾にして逃げ、ツルギを狙うとはいい度胸ですね、シーザー……ッ!』
そして、ミミからの無線が流れる。
その声は、いつになく怒りを湛えているように聞こえた。




