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ウィ・ハブ・コントロール! シーズン4! ―空軍・海軍・姫・王子―  作者: フリッカー
ラストフライト:発動! オペレーション・POP!
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セクション03:緊張

 駐機場に並んだミラージュ達に接続された、外部電源が動き始める。

 エンジン始動の準備が整った機体へ、一同は次々と乗り込んでいく。

 もちろんツルギも、ストームに抱えられてイーグルの後席へ座る。

 だが、その前に。

「ストーム」

「ん?」

「今日はボランティアだけど、頼むな」

「……もちろんっ!」

 久しぶりに、発進前のキスをそっと交わす。

 ほんの僅かの間唇を重ね合わせただけであったが、それでもツルギにとっては充分なもの。

 こうすると改めて、ストームと一緒に飛ぶ事を実感できる。

 互いに顔を合わせて笑みながら、そんな事を思ってしまうツルギ。

「うーん、いいわねえ青春って……いや、2人のはもう青春の域を超えちゃってるか」

 そして、ゼノビアが見ていた事に気付き、一気に顔中を熱くしてしまうのであった。


 駐機場(エプロン)にタービン音が響き始めた。

 外部電源からの電力を受けエンジンを始動したミラージュから、電源コードが整備士の手で外される。

『姫にチーター。わかっていると思うけど、これで失敗したらもうミラージュには乗れなくなるからね』

『ううっ、プレッシャーをかけないでくださいよ……』

 コックピットに座るミミは、どこか緊張気味だ。

 ミステールの忠告を聞いただけで、機体チェックの手が止まってしまっている。

『大丈夫です! 姫様は私が必ず合格させますから、どうか大船に乗った気分で!』

『そのプレッシャーをかけた人は、誰だと思ってるんですか……』

 そんなミミとフィンガーのやり取りには、思わず苦笑してしまう。

 ミミがこういう大舞台で緊張した様子を見たのが、久々だったからかもしれない。

『姫さん、随分テンパってるみてえだな。大丈夫なのか?』

『まあ、私達は私達でサポートしていくしかありません』

 話を聞いていたバズが、そんなやり取りをしている。

 その間に、滑走路への移動許可が出た。

「ツルギ、移動許可出たよ!」

 ストームが、くるりと振り向いて報告する。

「よし、それじゃあ行こう」

「その前に、アレやってよ久々に!」

「アレ……? そうか、アレか」

 ストームの提案を受けて、ツルギははたと思い出した。

 そういえば、ミミの一件でギクシャクしていた時から、全然やっていなかったと。

「ストーム、ユー・ハブ・コントロール」

 久々に、口にする言葉。

「アイ・ハブ・コントロール!」

 それを受けて、ストームが元気よく答える。

 2人を空へと繋ぐ合言葉。

『さあ我が娘・息子達よ、思いっきり飛んでおいで!』

「それじゃブラスト1、行ってきまーす!」

 ゼノビアのハンドシグナルを送ると、エンジンが唸りを上げ、ウィ・ハブ・コントロール号ゆっくりと移動を始めた。

 右に曲がって滑走路へと向かう時に、敬礼したゼノビアにツルギも敬礼で答える。

 バズ・ラーム機も後に続いて滑走路へと向かう。

 次は、アイスチームの番だ。

『ア――アイス1、離陸に向きゃいます、あ』

 だが、緊張からか口がうまく回らず、言葉を噛んでしまうミミ。

 それに気付いて、あたふたと

『しっかりするんだ、姫。こういう時こそ落ち着こう』

『そうっすよね! 弱音を吐いちゃダメだ! 全力でやるっす!』

『ええ! スルーズ家に栄光があらん事を!』

『う、うう……改めてアイス1、離陸に向かいます』

 とっさにメンバー達にフォローを入れられたミミは、恥ずかしさからか顔をうつむけたまま機体を動かし始めた。

 さすがにツルギも、大丈夫なのかと不安になってくる。

 バズがこっそりと笑っていた事については、言わないでおこうと決めたのだった。


 そして、4機のミラージュと2機のイーグルは滑走路から離陸していく。

 勇ましくアフターバーナーの炎を伸ばしながら、1機ずつ滑走して。

 だがそれに反して、ミミは緊張のせいか号令に覇気がなく、普段の落ち着きを失っていた。

 そんなミミをよそに、ストームは相変わらず元気に声を上げながらウィ・ハブ・コントロール号を力強く離陸させたのだった。

「かなり緊張しちゃってたけど、さてどうなるのかしらね……そのままじゃ、最大のライバルに勝てないわよ?」

 そんな6機の軌跡を見送りながら、フェザーはそんな事をつぶやいていた。


     * * *


 離陸して間もなく、最初にして最大の難関が立ちはだかる。

 上空を周回するボイジャーからの、空中給油である。

 既にウィ・ハブ・コントロール号は給油を終え、ブームの下へと向かったバズ・ラーム機が、ブーマーのユーリアが操作するブームとしっかりと接続されたのを見届ける。

『ふう、接続成功です。ところで皆さん、今朝のテレビ見ました? あのシーザー王子に熱愛発覚ってニュース――』

「いや、今その話は止めた方がいい、ユーリア」

 ユーリアが切り出した話題を、すぐに止めるツルギ。

 アイスチームも、既に空中給油を始めている。

 だが、ミミの機体だけが、一行に給油の位置に着く気配がないのだ。

 既に右翼のチーター機は接続を成功させ、左翼のミステール機は給油を終えて離脱していく。

『姫、次どうぞ』

『い、いえ――フィンガー、先に行ってください』

『え? でもここは姫様が――』

『い、いいですから! これは命令です!』

『……りょ、了解』

 結局フィンガーに道を譲り、まだ給油に入らない。

 だがその直後、チーター機がホースを切り離し、右翼から離れ始めた。

『姫様! 今開いたっすよ!』

『え!?』

 途端、動揺の声を上げるミミ。

 そのまま沈黙。

 自分の番が回ってきたにも関わらず、ミミ機は給油の位置につこうとしない。ただ、右翼から伸びるホースをにらむだけで。

『お、落ち着くのです、フローラ……い、一度、できたじゃないですか……』

 挙句、そんな事をつぶやき始めている。

 さすがに見ていられなくなったツルギは、声をかけた。

「ミミ、大丈夫か?」

「この間と同じ感覚でやればいいんだよ! もしかして、忘れちゃった?」

 ストームも、それに続く。

 だが、ミミは。

『……ダ、ダメなんです……! 何だか、後がないって思うと怖くて……手が、手が震えて止まらない――!』

 助けを求めるように、涙ぐむ声を上げる。

 ミミ機の主翼の舵は、僅かに振動していた。

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