表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/64

インフライト3

 スルーズ空軍航空学園海軍分校は、海軍航空隊唯一の航空基地、セネットにある。

 海軍基地らしく沿岸部にあるこの基地のゲートから、2人の少年少女が姿を現した。

 金髪の少年はロック、水色の髪の少女はビクセンである。

 今はちょうど昼時。

 他の多くの生徒達と同じように、2人もまた昼食に向かおうとしているのだ。

「今日は期末テスト突破祝いにピザを食べに行くぞ、ビクセン」

「え、ほんまに!?」

 ピザ、という単語を聞いて、ビクセンが目を輝かせる。

 ロックは、そんなビクセンに微笑んで続ける。

「ああ。僕が奢るから、遠慮せずビクセンの好きなものを頼んでいいぞ」

「お、奢り……お、おーきにシーザー様! 遠慮なくごちそうになりまひょっ!」

 まるで子供のようにはしゃぐビクセンを連れて、通りへと出て行くロック。

「あーあ、王子またあの女とおでかけか……」

「仕方ないわよ、王子の『お気に入り』だもの」

「くーっ、なんであんな女なんかがお気に入りなの……っ!」

 そんな2人を、ゲートの裏から複数の女子生徒が悔しそうに見つめていた。


 2人は、基地の前にあるピザ屋に入ると、窓際の席に座り早速ピザを注文した。

 テーブルの前に並べられたのは、大きなサイズのピザが3枚と、サイドメニューのフライドポテト。

 あまりにも年頃の少女の手に余るようなそれを、ビクセンは迷いなく口に頬張った。

「うーん、やっぱこの店のマルガリータ最高やー!」

「よくもこんな大きいのを頼んだな……後で腹壊すなよ」

「前から、これくらいおっきいピザ食べたいって思ってたんやー、ああ幸せ……」

 ゆっくりと食べるロックとは裏腹に、隣のビクセンはぱくぱくと食が進む。

 そんな姿を見て、ロックも表情が緩んでいる。

「ともあれ、これで後期からは晴れて艦上デビューだ。空母――いや、強襲揚陸艦サングリーズでの実習に、遂に取り組める訳だ」

「はあ、夢の空母着艦まであと少し……これも全部、シーザー様のおかげや……ウチ、シーザー様と出会ってなかったら、こんな事にならへんかったかも……」

 上目で天井を見つつ、そんな事をつぶやくビクセン。

「何言ってるんだ。それだけ力があったって事じゃないか」

「そ、そやけど――ウチ、コックピット入るといつも暴走するし……そんなウチを、わざわざお気に入りって言ってくだはったシーザー様のお力があってこその――」

「わざわざなものか。好きだからお気に入りに決まっているだろう?」

「へへ、そやね。ウチもシーザー様が好きで――って、ええ――!?」

 途端、フライドポテトを頬張ろうとしたビクセンの手が止まった。

 口に入れるはずだったポテトが、手から皿の上へ零れ落ちる。

「シ、シーザー様、今、好きって――!?」

「あれだけ勇猛に飛んでくれた方が、安心して背中を任せられるものだよ。君の実力は、充分なくらい信頼してるさ」

 ずい、と顔を近づけるロック。

 その碧眼に間近で見られ、一気に頬を染めるビクセン。

 逃げられない。奥に座ってしまったために、ビクセンは追い込まれてしまっている。

 ロックの手が、そっとビクセンの頭を撫でる。

「それでいて、普段はこれだけ可憐なのだからね――リューリ」

 ファーストネームで呼ばれ、さらに頬の赤みが増していく。

 彼がビクセンをファーストネームで呼ぶのは、私的な時だけ。

「か、可憐――!? な、何を言うて――!?」

 恥ずかしさのあまり思わず目を逸らしてしまったビクセンの顎に、そっと手が回される。

 唯一逃れようとした視線さえ、彼は逃がそうとしない。

「だから僕は、君の事が好きだよ」

「ちょ、ちょ、ちょ、ち、近い、近いです、シーザー様――っ!」

 透き通った碧眼で、間近から見つめられる。

 動揺のあまり、目を閉じて声を出す事しかできず、固まってしまった手を痙攣させるしかできないビクセン。

 そんな時、携帯電話の着信音が鳴った。

「ん? 何だ?」

 ロックは顔を戻し、懐からスマートフォンを取り出す。

 ようやく離れてくれた事で、ビクセンはふう、と安心したように息を吐いた。

「もしもし――はい、はい――わかりました。今外出中ですが、なるべく早急に済ませて戻ります」

 そんな事を話して、通話は終わった。

「ちょっとふざけすぎたな。急用が入った」

「え、急用?」

「さっさとこれを片付けて学園に戻るぞ」

 ロックは先程までの大胆不敵な行動を忘れたように、食事に戻る。

 それをしばしぼんやりと眺めていたビクセンであったが。

「どうした? 食べられないのか?」

「い、いえ! 全然、平気やで!」

 ロックに問われて、慌てて自身も食事に戻ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ