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セクション11:フィンガーの夢

 分厚い雲の上は、今起きている事件とは無縁なまでに青い空。

 そこへ、雲の中から2機の戦闘機が、浮上する潜水艦のように姿を現す。

 ストライクイーグルと、ミラージュが1機ずつ。

 その片方には、ストームとツルギが乗っている。

『こちらピース・アイです。姫様の捜索に、ささやかながら協力させてもらいますね』

「ありがとう。君がいてくれたら心強い」

 今回の捜索には、ピース・アイも参加してくれる。

 以前ストームを捜索した時はピース・アイが参加できず、自力での捜索を余儀なくされたが、これなら自機では捉えられない範囲をフォローしてくれる。

「海軍から何か連絡は?」

『いいえ。イージス艦ゲイルドリブルも消息を絶つ直前にレーダーで追跡していましたが見失ってしまったようです』

 ツルギはデータリンクシステムの調整をしている間、情報を確認する。

 その間。

『姫様……!』

 隣を飛ぶミラージュに乗るフィンガーは、ただそれだけつぶやいていた。

 彼女の機体には、バディ・ポッドが搭載されている。

 これで、ミミの機体を発見できれば空中給油が可能となる。

 もっとも、ミミの腕前からそれが実際に行えるかどうかはわからず、あくまで保険程度の意味合いでしかないのだが。

「……ねえ、フィンガー」

 そんな時。

 ストームが、フィンガーに呼びかけた。

『……何?』

「ちょっと聞かせて。『スルーズ・ワン』のパイロットになるって言ってたけど、そのために姫様に好かれたいって思ってたの?」

 ストームが問うた瞬間、フィンガーが僅かに息を呑んだのがわかった。

「『スルーズ・ワン』と言えば、確か王室専用機のコールサインだよな……」

 ツルギは思い返す。

 王室専用機。

 スルーズの王家が海外へ向かう際に搭乗する専用の旅客機で、所謂政府専用機に分類される。スルーズ航空の一部門『ロイヤルフライト』が王室から委託される形で運航しており、『スルーズ・ワン』というのは、アメリカで言う『エアフォース・ワン』に習って付けられたコールサインだ。

「そして、そのパイロットには空軍で経験を積んだ腕利きのベテランが選ばれるんだった、って聞いたけど――」

『半分正解』

 ツルギの解答に、フィンガーがうなずいた。

『でも、それだけじゃ足りないの。王室を安全に海外へ運ばなきゃならないから、国王陛下が信頼できる人じゃないとなれない。それが「スルーズ・ワン」のパイロットなの』

 言われてみれば、確かにそうだ。

 王室専用機は、言わば王室の自家用機。曲がりなりにも王室の所有物なのだから、パイロットも信頼のおける人物を選びたいはずである。

『私、小さい頃から王室に憧れたし、姫様のファンだったの。何とか王室に入って、姫様たちと一緒に暮らせないかなって考えて、見つけたのが「スルーズ・ワン」のパイロットって仕事だった。なるには途方もない時間がかかる仕事だけど、私はこれだって決めて航空学園に入ったの。「スルーズ・ワン」のパイロットに一番近づける、ファイターパイロットになるために』

「そうか……だから」

『私、姫様と一緒に飛べたのは、運命だって思ってる。今の内に姫様に気に入られたら、目指している場所に近づけるはずだから……でも、なんでこんな事しちゃったのかな、私……』

 コックピットの中で、フィンガーは顔をうつむける。

『もし、姫様が死んじゃってたら、どうしよう……?』

「見つければいいんだよ、その前に」

 声を震わせう彼女に声をかけたのは、ストームだった。

「そしたら、またやり直せばいいでしょ。だから、まだあきらめちゃダメ!」

「今は、ミミが無事でいる事を信じよう」

 励ますストームに、いつの間にかツルギも続いていた。

『そう、ね』

 フィンガーがようやく普段の声を取り戻した、その時。

『レーダーに戦闘機大の機影捕捉。識別信号を確認。これは――姫様のミラージュです!』

 ピース・アイから、知らせが届いた。

「本当かっ!? 高度は?」

『およそ2000、雲の下です。まだ飛んでいます!』

 間違いない、これはミミの機体だ。

 高度およそ600メートルとはいえ、まだ飛んでいるとなれば、生きている可能性が高い。

「すぐに行こう! ストーム!」

「ウィルコ!」

 イーグルとミラージュは、ミミ機がいるとされる方角へ左降下旋回。雲の中へと潜る。

 しばし視界が白く染まった後、薄暗い雲の下へと抜ける。

 風が強いのか、海は少し荒れているようだ。

 そんな海を見下ろしつつ、ピース・アイからの情報を頼りに2機の戦闘機は加速していく。

 ツルギは、搭載しているスナイパーXRポッドの対空モードを使用し、赤外線画像で正面を捜索する。

 すると、正面に白い機影が映った。

 確認のためズームインする。

 そのシルエットは、間違いなく後方から見たミラージュの姿を描いていた。

「いた、ミラージュだ! ストーム、コックピットの様子を見るからゆっくり近づいてくれ」

「ウィルコ!」

 顔を上げて、肉眼でも確かめる。

 正面で次第に大きく、そして明白になっていく、ミラージュの機影。

 見た所、機体は正常に水平飛行を続けているようだ。

 だが、問題は乗っているミミの方である。

(ミミ……無事でいてくれ……!)

 ツルギの願いを追い風にして、イーグルはゆっくりとミラージュの左隣に並んだ。

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