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インフライト1

 薄暗くなった職員室。

 そこで、1人ノートパソコンの画面を見つめるフロスティの姿があった。

 期末テストの問題作成は、既に済ませている。

 代わりに彼が見ていたのは、とあるパイロットの情報だった。

 顔写真に映っている黒い肌の人物は明らかにヨーロッパ系の顔ではなく、別に映っている国旗もスルーズとは全く別のものだった。

「こんな奴が来るのか……」

 重苦しい表情のまま、灰皿に置いていたタバコを吸う。

 ふう、と吐かれた白い煙が、薄暗い教室の中へ消えていく。

 今彼が見ている情報は、期末テストの先にある、後期のスケジュール。

 スルーズ空軍航空学園初となる、『留学生』の迎え入れに関する事柄だった。

 だが、スルーズ空軍では過去にパイロット交換プログラムと称して外国軍のパイロットを迎え入れた事さえない。

 故に、早い段階からスポンサーたるヘルヴォル社との間で調整が行われているのだ。

「あら、フロスティじゃない!」

 と、どこからか緩い声。

 フロスティはタバコの灰を落とす手を止め、顔を上げた。

 彼以外誰もいなかった職員室に、来客がいる。

 彼と同じくスーツを身に着けた、1人の女性だった。年齢も彼と同じくらいのように見える。

「……フェザーか」

「こんな所で寂しく何やってるの? よかったら一緒に食事でも、し、な、い?」

「断る」

 親しそうに隣にやってきて顔を覗き込む女性――フェザーを、軽くあしらうフロスティ。

「あら、残念。ファングから『今あいつはフリーだから盗るなら盗って構わん』って言われて期待してたんだけどなー」

「俺はフリーになった覚えなどないが」

 器用に声真似して見せるフェザーに対し、あくまで冷静にノートパソコンを閉じ席を立つフロスティ。

「一途なのねえ……でもいい年なんだから、そろそろ乗り換え考えたら? 私、相手になってあげるよ?」

「悪かったな、一途で」

「今、そうやって教官やってる事が嫌われてるんだとしても?」

 フェザーの問いかけに、去ろうとしたフロスティの足が止まった。

「……そうか、だが俺は止める気などない」

 フロスティは顔を向けないまま、答える。

 そして、再びタバコに口を付けてから、続ける。

「今ここに、うたかたの夢を抱いて闇の職業に就こうとしている輩がいる限りな」

「ふーん、それが男の意地ってヤツ?」

 それを聞いても、さも深刻ではなさそうに問い返すフェザー。

「……それよりお前、期末テストの試験官としてここに来たなら、やるべき事があるだろう?」

「ま、そうだけどね。昔飛んだ仲間が今どうしてるかくらい、知りたくなるものでしょ?」

 くす、と小さく笑ってから、フェザーは両手を後ろに回して後ずさりする。

「じゃ、私は失礼するわ。気が変わったらいつでも声かけてね。私いつでもフリーだから」

 手を振って職員室を後にする旧友を、何がフリーだ、とつぶやきつつフロスティは見送った。

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