調査
暑い。
今、頭にあるのはそれだけだった。
太陽が一番に活躍する時刻になんせ俺は外にいるのだから当たり前か。
担任の先生こと、島並弘毅の話を聞いた直後俺達生徒は強制帰宅宣言にもとずく形になった。
島並弘毅の話は急すぎて俺達生徒は理解に苦しんだ。と言うよりも理解するのを拒絶した。
いきなりうちの職員が失踪しました。などと言われて理解しろというほうが難しい。
島並の話によるとどうやら天草美穂先生はこの
1週間学校に来ていなかったらしい。
もちろん休暇届けなど出してはいない。
美穂先生は、俺はよく知っていた。学校に居ることに疑問を感じたり学校に居ることが苦痛と感じた時なんかによく保健室に行ったもんだ。仮病を思案して家に帰るためにだが。
勿論マジで身体がだるかったのもある。
まぁ、仮病の大半はばれていたが。と言っても前半は俺の全勝。後半(6月〜)は全敗。
そんなんだから美穂先生とはかなり親密な関係になっていたのではないか。
もちろん恋愛関係等ではなく普通に生徒と教師の関係である。
まぁ。でも美穂先生は学校内の男子生徒3分の1程度が夢中になるくらいの容姿はもっていたので、俺としてはそういう禁断な関係もいいとは思っているが。
赤茶色のロングヘアー。 それといって、品のある顔立ちで可愛というよりも美人さながらの美貌をもちあわせているひとであった。年齢はさすがに知らないが。(とゆうか女性にそのようなことを聞く、聞かないの配慮はさすがに俺にもできる。)
まぁ、だが推測20代前半といったところだろう。
そんな先生が失踪事件の被害者になっているだと?ついこないだも(2週間ぐらい前) 保健室で早退するか?しないか?で、もめたばかりだというのに。
担任の教師。島並の話を詳しく 言うと。
1週間ぐらい前から美穂先生は学校を無断欠勤したらしい。それを聞いて1週間は先生に会っていなかった気がするなっ。と思ったものだ。
最初は多少気になった程度で特になにもしなかったらしい。だが、次の日にも来ない。相変わらず電話もない。 さすがに教頭あたりが
「2日も無断欠勤とは教師にあるまじき行為。」
などと言い怒っていたらしい。
教頭の言い分は他の教師も抱いていたらしく美穂先生の自宅に電話をいれた。
10回ぐらいのコールの後、留守電にきり替わったという。 居留守でも使っているのでは?とますます教頭は怒り狂った。
他の教師は、美穂先生が居留守などするはずがないと思っていた。
だが人間なんて生き物は、裏表。陽と陰。がある生き物で学校での美穂先生を裏もしくは陰の方と考えた教師も少なからず教頭と同じ思考を持っていた。
よって携帯電話に掛けることになった。もちろん掛けたのは、美穂先生と仲が良い女教師だ。
だが結局。結果 は変わらず空しくまた留守電サービスの声を聞くはめになる。
もう仕方がないので次の休み(土曜日)に美穂先生の自宅へ全職員(予定がある教師は除いて)乗り込むということになった。
だが、さすがに全職員というのは女性職員に凄い反発を食らったらしく女性職員の一部が行くことになった。だが教頭は、未練がましくもまだぶつぶつ言っていたらしい。教頭らしいな。と思った場面だ。
正直あまり教頭のキャラは知らないが。何となく教頭ってそんなキャラだろ?ベタな学園ものの物語を見ると。言うまでもないが教頭は男である。
今思えば確かにこの週の土日はどの部活動も休みになってクラスの生徒がはしゃいでいたな。
俺にとってはどうでもいいことだったから記憶が薄れていたのであろう。
そんなこんなの土曜日。予定通り女性職員は美穂先生の自宅へと訪ねた。ちなみに美穂先生の家は2LDKのアパートだという。
だが。その時点で。自宅の扉に立ったところで分かったという。扉のポストに多量の新聞や手紙やらが豪快に詰められていた。それはもう溢れるぐらいに。間違いなく美穂先生に何かあったというのは一目瞭然。
だが、一応は呼び鈴を鳴らす。当然と言うように無反応。その後も何回か呼び鈴を鳴らし
「美穂先生?」
「美穂先生?」
と何度も存在確認する。だが、一向に出てくる気配はない。仕方がなく、やむを得ず管理人にわけを話し鍵を貰う。 鍵穴に鍵を差し込み美穂先生の自宅内へ 。玄関には多量の新聞やらの便りが広がっており靴を脱ぐのにもその上に置かないと置けないと言う状態。
だが、変わっていたのはそこだけであった。リビングはいかにも大人の女性が住んでいる部屋だなぁ。と言った雰囲気で綺麗に片付けられてもいた。それと言って荒らされた感じでもない。
「美穂先生?」
「美穂?」
再度呼んでみる。だが、何も返事はかえって来ない。
ふっ。と ある女職員が留守電が溜まっていることに気づく。普通は人の留守電などは聞かないのが社会の常識である。
が、事態が事態だ。
早速皆で留守電の伝言に耳を通す。
母親の伝言7件。友人の伝言26件。その他、通販関係等の勧誘伝言・請求伝言12件。そして、学校からの伝言1件。計47件の伝言を(学校以外のもの)全て拝聴する。
時刻は、昼過ぎ迄かかった。
短いので30秒。長いので2分程度。
伝言なので大半は前者の方が多い。
これほどまでの時間を費やしたのだからと言うのだろうか?有益な情報が確かにあった。
まずは美穂先生が失踪し始めた期間。
1週間と1日前。すなわち8日前。それは単純に母親からの伝言の数を数えただけだ。ちなみに美穂先生は、毎晩10時頃に必ず母親に電話していたという。だが、ある日ぱったりと電話をしてこなくなった娘に心配して毎晩伝言を残していたのだ。恐らくこの日の晩にも電話を入れたことだろう。
そしてもうひとつの証拠。新聞の日数を数えた。勿論、玄関に散らばっていたものだ。以上の結果から美穂先生の失踪期間が分かったのだという。
さらにもうひとつの情報。こっちの方が有益ではあるが美穂先生のプライバシーに関わる問題だったので生徒・職員にさえ知らされていない情報だ。
そんな情報を何で俺が知ってるかって?そんなのはやはり聞いたに決まっている。
無論。この自宅捜査隊のメンバーにだ。 美穂先生とは早退議論を交わす程の仲なんです。と言い張った結果 渋々教えてくれた。 最後には念を押されたが。対して話す相手もいないことは先生も知っていたのだろう。 空しい事実だ。
まぁ、そんなわけで粘りに粘ったかい一般生徒。一般職員(主に男教師)が知らない情報をゲットすることに成功した。
やはり、自宅捜査隊は何か隠してると踏んで間違いなかったようだ。ただの勘だったが。 だが、その情報は聞かなきゃ良かったと思わなくもない内容だった。
「次いきましょう。」
「次で、36件目ね。」
ピッ。 (少しの間)
「夜分遅くからこんな話を残していくことを許してね。美穂。あなたまだ無茶してんじゃない?もう6年も経ったのよ。いい加減あきらめなさいよ。美穂の身体が壊れてからじゃ遅いんだから。いい?とりあえずこの伝言聞いたらまた連絡するのよ。あなたまで居なくなったら私はもう生きていけないわ。ぐすっ。」
母親からの伝言はこれが最後であった。この日も恐らくは同じ伝言を残していたのであろう。そして、娘が失踪事件の被害者だと知った日からは伝言を残しているのであろうか?そして、あの伝言の内容。6年前には、何があったのだろう?
全てを聞くために俺は美穂先生の実家の前で足を止めた。