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異世界への行き方~出発の前に~  作者: レベル1のスライム
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使役合戦

風斗達が戦闘をおこなっていた時、もう一方でも激闘が繰り広げられていた。


“シュバシュバババッッッッッッ。”


ロックブレスホーンの鋭い爪が猛スピードでかまいたちを襲う。片手だけによる攻撃だが、かまいたちはそれを避けるので精一杯。


戦闘が始まって五分は経過していたが

かまいたちはまだ一度も攻撃を仕掛けていない。それも仕方無い。成宮から貰える霊力は限られているし、今のロックブレスホーンは昨夜以上に力やスピードが強化されている。

それに対してかまいたちは昨夜以下の

コンディション。昨夜のロックブレスホーンにも勝てなかったのにだ。


しかし、かまいたちは戦闘を投げ出したり諦めてはいなかった。状態が最悪でも勝機が半分以上無くてもそんなのは負けるための言い訳だ。勝負を挑んでいる以上はそんな気持ちで向かっていたら駄目なのだ。

それにこんな状況だからこそかまいたちは冷静でいられる。


一つ一つの技に対して丁寧に対応する。


クルッ。


空中で一回転してロックブレスホーンとの距離を保つ。


ハァハァ。


既に息は上がっている。

のに対してロックブレスホーンは余裕だった。


「チッ。 」


かまいたちが舌打ちをし、刀を構える。

そして、賭けに出る。


ザッ。


かまいたちが全力で地を蹴った。

ロックブレスホーンはそんなかまいたちに先刻同様、爪で迎撃しようとする。


よしっ。


かまいたちは思う。

ロックブレスホーンは遊んでいる。

ブレスをここで撃たれたらかまいたちは即、戦闘不能になる。

かまいたちはひとまず第一の賭けに勝った。

そして、距離が縮んだところ。

あと数メートルでロックブレスホーンの懐に入る距離。そこでかまいたちは後ろに振り向き地面に向かって刀を振る。


ブワッ。


成宮から霊力を貰い暴風を呼ぶ。

かまいたちは今までの二倍程のスピードで跳び、 ロックブレスホーンの巨体を飛び越える。


予期せぬかまいたちの行動にロックブレスホーンの迎撃は遅れをとる。


ザッ。


紙一重でロックブレスホーンの爪をかわす。そして背後に回り込んだかまいたちは暴風を呼んだ後に溜めておいた霊力を斬撃に変える。


「うりゃーーーっ。」


ロックブレスホーンの硬度の背中に斬撃を決める。咄嗟にロックブレスホーンは体を回しかまいたちに爪による攻撃を喰らわそうとする。かまいたちは瞬時に後方へ跳躍。


ブワッ。


ロックブレスホーンの爪が空を切り裂く。


「ウギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」

ロックブレスホーンのかまいたちの見る目が変わった。かまいたちが先刻切り裂いたところからは赤色の血が流れ出ている。

同じくかまいたちの刀にも赤い液体が

ベッタリとこべりついていた。


‘よし。ここまでは予測範囲です。’


かまいたちは満足げに笑みを口に刻む。

ロックブレスホーンの硬度の体になぜかまいたちの技などで傷つけられたのか。

それは何もロックブレスホーンが弱くなったわけでもかまいたちが強くなったわけでもなかった。


弱点。


そう。ただ強化されていない場所を攻撃しただけなのだ。それは食道と脊柱の丁度重なっている部分。そこだけはなぜか強化されていなかった。


恐らく。重なっているところは一人の血縁者の血液だけでは強化できなかったのだろう。

かまいたちがそれに気付いたのはつい先刻。ロックブレスホーンの猛攻の最。

チラッ。

例の場所に傷跡が見えたのだ。

それは風斗がサイクロンを喰らわせた時につけたものだ。あのサイクロン。実は微量だが、斬撃も備えていた。それによってつけられた傷はそこだけまだ回復されていなかった。

かまいたちはそれを確かめる為にロックブレスホーンに斬撃を喰らわせたのだ。そして、ロックブレスホーンを怒らせる為にも。

かまいたちは次にロックブレスホーンがブレスをしてくるだろうと予測をたてていた。


確かにブレスを喰らってしまえばかまいたちなど一瞬で消えてしまう。だが、ブレスには一つの反作用が生じる。


ブレスをした後。一瞬だが、体の動きが鈍くなる。


そこで先程の場所に成宮から貰得るだけの霊力を斬撃に変えて一振り。防御も無しのロックブレスホーンは痛みに耐えきれずそこで終わる。筈。先刻の斬撃であのダメージなのだから。


よって、かまいたちは口からのブレスを待った。この第一撃をかわせば勝負は着くのだ。

しかし、ロックブレスホーンは口を開けない。変わりに地を蹴る音が聞こえる。


ザッ。ザッ。ザッ。ザッ。ザッ。


そう。ロックブレスホーンはブレスではなく突進による攻撃を喰らわせようとしていた。


そして、ロックブレスホーンが弾丸の速さで走り出す。それは昨夜の突進の二倍程の速さ。

かまいたちはブレスに対する準備をしていた。


しかし、避けきれなかった。


ズボッ。


かまいたちの右胸にその巨角が突き刺さった。かまいたちの身体は突き刺さったまま上にあげられる。


「うっ。」


かまいたちの身体が徐々に消えていく。


「うっ・・・んぐ。まだ・・・。」


かまいたちの目には成宮の姿が映った。

日本刀を首 に突き付けられても なお瞳には諦めの色を失っていない成宮の姿が。だから。

「まだ終わるものかーーーーー。」


消えていく身体。

それでもまだ、かまいたちは刀の柄を握る手に力を込め直す。だが、ロックブレスホーンは頭をブンッ。と一振り。かまいたちはそのまま角から抜け、地面に叩き付けられた。


あのまま全霊力を使った斬撃を決めることができたなら多少はロックブレスホーンに傷を負わすことが出来ただろう。

しかし、それはもう叶わない。またロックブレスホーンの近距離まで近付いても返り討ちに遭うのが目に見えている。かまいたちの具現化を許す霊力が徐々に刺された場所から流れ出る。


時間がない上に成宮があの状態。

もう打つ手は無かった。そう、かまいたちが諦めようとした時。ロックブレスホーンに変化が訪れた。


「ウギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」


ロックブレスホーンが急に苦しみだしたのだ。

唖然。


かまいたちは何が何だか分からなかった。

しかし、これは好機。かまいたちは消えゆく身体に鞭を打ち全力で疾走する。

刀に自身の霊力と成宮のなけなしの霊力を込める。かまいたちの霊力放出が加速する。

だが、そんなの構わない。

後ろに回り込んだかまいたちは例の弱点に全ての力がこもった刀を大きく降り下げる。


‘ブシュッーーーー。’


ロックブレスホーンの背中から鮮血が噴き出した。


「ウギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。」


新たな苦痛にロックブレスホーンの叫びが増す。

そして、痛みに堪えれなくなったロックブレスホーンの奇声は消え、そのまま砂浜に倒れた。身体の下半身が既に無くなりたつつあるかまいたちはそれを見て安堵の表情を顔に浮かべた。


ザブーーーーンッ。


かまいたちが消えたのと空から何かが降ってきたのはほぼ一緒だった。



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