異能決戦
新神風斗と成宮瑠璃は風に身体を纏わせフワフワ宙に浮きながら上村の元へゆっくり降りていった。
“ザッ。
”
間もなく足が地につく。サラサラとした海の砂が足を少し埋める。
この場に居るのは僅か三人と一匹。
そして、今からこの場は間もなく荒れることになる。それは、世界違いの決闘であり死闘である。勝敗を決めるのはどちらか双方の命が尽きるまで。つまりどちらかが死なない限り闘いは終わらないのだ。
「思っていたよりか遅かったですね。」
初めに口を開いたのは上村だった。空色は夕方にむけて赤く染まっている。
「・・・・・。」
俺と成宮は無言で敵である目前の人物を睨む。鮮烈な血液を服にベッタリ着いていることからつい先刻上村が最後の犠牲者を出したことが見てとれる。
「雑談はなしですか?なら早速貴女方を始末します。」
と上村が隣で殺気を露にしている獣。
ロックブレスホーンに咆炎を命じる。
ボワッ。と昨夜同等の炎がロックブレスホーンの口からいきおいよく発射された。
すかさず成宮が袖から一枚の札を取りだし投げる。すると無数の文字が生まれその文字の壁に炎がぶつかった。
ドゴッ。
と言う音が聞こえロックブレスホーンの咆炎はその文字の壁に防がれた。だが、その時その場には成宮は一人だった。何故なら俺はロックブレスホーンが炎を口から咆哮した時には既に動いていたからだ。
「脚。」
と言い脚に風を纏い風の力で疾走したのだ。勿論目指すは敵であるロックブレスホーン。そんな疾走中の俺に気付いた上村は即ロックブレスホーンに咆哮を中止させ、向かってくる俺に警戒させた。
その時俺は詰めてあった距離を半分まで埋めていた。だからもう充分だ。俺はそこで脚を止めた。そして左右の手を手刀の形に作った。そして短く。
「斬。」
と言いながらも俺は左右の手を激しく動かす。ブンブンブンブンと音を発てるその手からは幾つもの風の斬撃を生み出した。その幾数の斬撃は二本の巨角を生やした化け物に向かって襲いかかる。ガッガッガッ。ロックブレスホーンはほとんどの斬撃を体で受け止める。
‘ぎゃぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!?’
ダメージをかなり受けたのだろう。
ロックブレスホーンは悶絶の奇声を高らかに叫んだ。だが、それでも風斗の攻撃は終らない。
斬撃をある程度の数 生み出し終えると又も脚に風を纏いロックブレスホーンとの距離を詰める。
すかさず上村は「撃退しなさい。」と命令を下す。
だが、ロックブレスホーンは斬られた傷に痛みの奇声を上げており主人である上村の声は届いていなかった。風の速さで距離を瞬く間にゼロ距離まで詰める。俺は握り締めていた拳をロックブレスホーンの腹に食い込ませるように入れた。そのまま次。
「爆。」
と一言呟きロックブレスホーンに入れたままの拳を爆発させた。と、言っても爆風を拳に取り入れただけだ。そのまま俺はその拳を宙に向かって振り上げた。
すると‘ボゴッ。’と言う音と共にロックブレスホーンの巨体が空高くに吹き飛ばされた。地面上の砂があまりの威力に上に枚散った。次で決めるために俺は再度脚に風を纏い脚に力を込め空高く跳躍する。
ボワッ。
と先の倍ぐらいの砂塵がその場に舞う。
空中に吹き飛ばされたロックブレスホーンは腹にかなりの衝撃を受けていた。だが、痛みは微量であった。何故なら主人である上村が痛みを和らげていたからだ。両手を広げロックブレスホーンに向けている。手は青く光っている。そして命じるのだ。
「咆哮です。ロックブレスホーン!」
大声で叫ぶ上村。 ロックブレスホーンに以下の声は届いていた。だから、下から迫って来る一人の青年に赤熱の炎を浴びさせる。
が、
風斗は脚に纏った風を爆発させて空中で身体全体の軌道をずらしロックブレスホーンの攻撃を難なりと避けた。さらに又も爆発。
ロックブレスホーンに向かって音速のスピードで迫る。
ガッ。
ロックブレスホーンにそのスピードで体当りを決める。ロックブレスホーンの体の強度に俺は少し表情を崩す。そのかいあってか、その強度を誇る巨体は凄い速さで吹っ飛んでいった。
俺は追い討ちをかけるべくその巨体を少しスピードを落としながら追う。ロックブレスホーンは怒りと傷みでもう既に我を主人を忘れていた。そんなロックブレスホーンに最早勝機は無い。間もなくその頭上に思い衝撃が走り二本の巨角を誇るその巨体は物凄い速度で地面に叩きつけられた。
勿論その者は新神風斗である。
だがそんな連撃を繰り広げた風斗の表情はまだ固かった。




