異邦人
「私には霊能力がある。って言ってもよく陰陽師の映画とかで札に力を加えるあんな感じの能力よ。
だから守護霊とか浮遊霊とかそう言った幽霊めいたものは見えない。この能力の力量としては風間君がさっき言っていたような陰陽師の一番上でも私達にとっては見習い程度になるわ。だから違うのよ。日本の陰陽師とは。
日本の陰陽師は守護や偵察を主にしているわよね。
でも私達は攻撃。闘いを主にしている。」
「じゃぁ、あのかまいたちとか呼ばれていたイケメンは何だ?」
「イケメンかどうかは分かんないけどあいつは式神。これに関しては貴方の想像通りだと思うわ。
ただ、これも霊力を符に注ぎ入れて呼び出すんだけど。式神はその操る主の霊力が膨大なほど力を増し強力な霊や妖怪を呼べる。
かまいたちに関しては中の中。至って普通の
式神よ。
私は攻撃をかまいたちに頼んで私自身は防御や援護に回っているわ。勿論基礎的な攻術は使えるけど。
まぁ、これが私の能力ね。」
そこで一旦成宮は喉を癒す。次いでに俺もグラス内のの液体を喉に流す。ちなみにデザートであるティラミスは二人共、既に食べ終わっていた。
「次に私がこの世界の人間じゃないってことだけど。
これは言い方が少し違った。改めるわね。
私はこの世界の人間であるが異世界での人間でもある。要するにどっちの世界も私達は行き来出来るってこと。」
そこで成宮は間をくれる。恐らくは俺に気を遣ってくれたのであろう。理解してる?みたいな。
だから俺は「ああ。解った続けてくれ。」と言った。
「ええ、じゃぁまず私達がいる世界についつ話すわね。って言っても私もその世界の詳細は知らないわ。今から話すことはあくまで私の想像にすぎない。」
前置きはさておきと言うように成宮は卓上に置かれているブドウジュースを一口口に含む。
「現代、数々のパラレルワールド理論や異世界理論、異次元理論、宇宙論が名のある優秀な科学者方の論文なんかで認証されてるわよね?私達生物はとても小さな粒子である原子でできていることは知ってるわね?
でもどの理論も今、現代ではどうしても成し足りない障壁にぶつかる。
その一つとして人間の体を粒子に変換させるということ。
けど私はこの体を無数の粒子に変換させることができるの。」
「なっ!?」
俺は短い驚嘆を漏らす。
「粒子になった私はこの世の空間にある
ミクロサイズの穴に入れることが可能になるのよ。その穴を次元の穴と呼ぶ人もいるわ。」
淡々と語る成宮に少し、いや、だいぶついていけず 俺は思わず待ったをかける。
「すまん。疑ってるわけじゃないんだが成宮の言ってることはかなり無茶苦茶だぞ。まず、何故お前が粒子になれるようになったんだ?いきなり正体とか明かすなよ。」
ついていけないから。
と言いながら必死に先刻成宮が言った言葉を受け入れようとする。
だが、そんな俺の言葉に対して成宮は実に残念そうに首を横に振った。
「その質問には答えられないわ。何故なら私も分からないから。その日の記憶が無いのよ。」
「それって?」
「ええ、多分貴方が思っていることは正しいわ。私も同じように考えてるから。」
一即。
「何者かにその日。私が異世界に行くまでの日の記憶を消されたのよ。」
「じゃぁ、成宮の記憶はどこまであるんだ?幼少の頃の記憶とかは大丈夫なのか?」
「それは大丈夫よ。喪った記憶はその日だけ。その日、一日分の記憶が綺麗になくなってるわ。あるのは、翌日の異世界にいた記憶だけ。だからその世界を
異世界だと気付くのには数週間掛かったわ。まぁ、怪しいところだったけど。
平安時代をベースの造りだったから最初はタイムスリップかと思ったわね。」
テヘッ。とか言って舌でも出してくれれば
可愛いのに。と思ったが成宮がやるはずもなく、俺も言うはずもなく話は続く。
「だが、分からないな。何で粒子になった成宮がその異世界に転送されんだ?粒子になった成宮にも意思はあるのかよ?」
「そうね、意思は無いこともないんだけどもそれは自分が自分だって認識できる程度ね。体を自分で動かすとかは無理。」
「だったら・・・。」
皆まで言わせず成宮の言葉が遮る。
「話は終わってないわよ。確かに私達は意思がないはけど絶対にあっちの世界にはいけるの。磁石ってあるじゃない?
要はあれと一緒の原理よ。粒子になった私がN極、というかこっち側の世界がN極だったとする。で、あっちの世界がS極。当然SとNは引き合うゆえ空気中の無数の素粒子、フォット(光子)やウィークボソン等の粒子と粒子になった私達は引き合う。
そのスピードは光の何十倍の速さと言うわ。だから粒子になって気付いたらもうあっちの世界にいるのよ。」
「本当にあったんだなそんな世界が。
じゃぁ、もし科学が進んでその次元の穴とか言うのを見つけたら俺達一般人もその世界に行き来出来るのか〜?」
俺は興奮を抑えきれずに嬉々とした声音で呟いた。それこそ正に人類のロマンだ。
「ええ、不可能ではないわ。でも、私が行き来している世界に行ける可能性は低いわね。」
「何故?」
「私達が通る次元の穴。長さにしてこの地球百周の長さなの。それで、私が行き来している世界はその最終と聞いたわ。当然、その最終に辿り着く迄にも幾つかの世界はある。」
そこで成宮は人差し指を立てて言った。
「いい?私達にどの世界には行くかの選択肢はないの。粒子になって初めに辿り着いた世界にしか行くことは出来ないわ。」
「何でだよ?意味わかんねぇぞ。」
「いい?さっきも言ったけど私達はN極なのよ。そして次元の穴の中に幾つかある世界は全部が違う磁場を発してる。N極の私達は当然S極の一つしかくっつきあうことしかできない。まだ、分かんない?」
「成る程。一度行った世界を粒子になった俺達はSと認識してしまう。と言うことは意思がほとんどない俺達は自動的にその世界に転送されるんだな?」
「そう言うこと。だからほとんどが次元の穴で初めに突っかかる世界に転送されることになるわね。」
「じゃぁ、成宮は何で・・・」
そこまで言って俺は言葉を切った。
何で成宮はそんな最終尾の世界に行けたんだ?と聞こうと思ったが。成宮はそこに行ったと言う記憶がないんだ。だから代わりに
「じゃぁ、成宮は何で昨夜、上村と闘ったんだ?上村も成宮と同じ世界の人間だろ?」
と質問を強引に変更した。
話はまだ続く。今までは序章にすぎない。
今からが本題。




