ハーレムは唐突に
「で?貴方はその神から授かった力を奇跡的に使えてあの窮地から逃避することができた。でもそれまで溜まっていた疲労等には耐えきれず意識を失った。で、現在に至ると?」
散々、小言を俺に投げ掛けてきてやっといつもの冷静で冷徹な彼女に戻った成宮は昨夜から現在に至るまでの経路を簡潔に述べた。
勿論、それは俺が成宮の下で寝て居たことを弁解するために説明したものだ。
「まぁ、ざっくり言うとそうなるな。」
7月26日AM11:00かれこれ約27時間家に帰っていない。そして睡眠時間も長かった。
起床時間が遅かった。というより意識が復活したのが遅かったと言うべきか?
起きたのはAM9:30分。
だが、学校はいまや本来は28日から突入する夏休みを美穂先生のこともあり本日から突入中である。よって俺達は学校に遅刻をする等という恐れは無いのであった。
それは即ち通知表という何故か貰いたくないようででも貰いたいような冊子を授与されることに繋がる。
高校生活最初の成績は平均より多少上であった。それは事前に確認済みだ。
だが、そんなことはどうでもいい。問題なのはその冊子をあろうことか例の戦場に置いてきてしまったのだ。それも鞄ごと。
まぁ、実際通知表以外は大したものは入っていなかったので 別にいいのだが。だが、万が一人に見られたらアウトだ。かなり恥ずかしい。それが知人ならば死ぬほどだ。正確に言うとクラスメートや同学年、同高の奴ら。
しかし置いてきてしまったのはしかたない。まだあの神社に置いてある可能性だってあるわけだし。可能性としてはかなり低いが。
とりあえずこの事は保留ということで。
今、俺達は偶然だがその学校の屋上のベンチで座っているので夏休みに入っていなくても遅刻はしていない。いや、やはり無理か。
誰も俺達が此処に居ることは知らないのだから。
「じゃぁ、今度は成宮の番だ。大体は察しはついてるが何なんだお前?」
俺は昨夜のことを思い出しながら成宮に問いた。
「別に教えても構わないのだけど。貴方、おもいっきり巻き込まれているし。でも、その前に食事にしない?食事をしながらの方が話も進むと思うわよ?あと出来れば服も変えたいわね。」
と、言い終わると同時に成宮はベンチから立ち上がった。
確かにその意見には賛成せざるを得ない。
何故なら最後に食べ物を口にしたのは昨日、美穂先生の実家を訪れた際に出された茶菓子。
饅頭一個だけだなのだ。
よって、成宮が食事というワードを使った瞬間
“ギュルギュル〜。”
という情けない音を腹が奏でた。
「食事にするのは素直に賛成だ。聞いての通り身体も食べ物を欲しているからな。」
そう言うと又も腹が鳴った。俺は恥ずかしがること無く改めて問いた。
「だが、何処で飯にするんだ?生憎だが俺、そんな金持ってないぞ。確か総計3000円程度だったと思う。」
後ろポケットに差し込んである長財布の中身を確認しながら俺は言った。
「十分食べれる金額だと思うけど。」
冷たいというか投げやりな突っ込みが返ってくる。すかさず俺はこう付け足す
「それは、一人の場合な。二人だとそんなに食えないと思うが。」
「何言ってんの?貴方に出して貰おうなんて言語道断。考えてもいないし。お断りよ。」
何故か、必死な口調と表情の成宮さん。
「まぁ、いいわ。とにかく貴方、立って。ここから出るわよ。」
出る?そう言えばここは学校の屋上だった。ということは出るためには真正面に見える
(かなり遠いが)押し引き式の扉から出なければならないのだ。それは問題ないが。
あの扉鍵は開いてるのか?
学校が夏休みに入っていても教師はいるだろうが。毎年の夏休みは部活動をする為に何人かの生徒もいるのだが、例の事件もあり今日はいない。よって運動場は静かで屋上からは生徒の一人も見えない。それなら教師がいるかどうかも疑わしいぞ。
そんなんだから開くのか?あの扉は?そんなことを黙々と思案していると成宮が不信に思ったのか
「どうかしたの?」と聞いてきた。
「ああ。思ったんだがよあの扉開いてんのかな?」
真正面の扉を指差しながら俺は言う。
「ああ〜。そんなこと。」
何だ。というかのような口調に態度。
「何だ。って。」
「大丈夫。問題ないわ。そんなこと。開いていようが閉まっていようが。」
そう言うと成宮は制服のスカートのポケットから一枚の札を取り出した。
その札をいきよいよく飛ばし一言
「爆。」
鉄製の扉はベンチ同様無惨に跡形も無く吹き飛んだ。多少長く思案していたことがあろうことかたった二行程度で万事解決。
「・・・・・。」
言うまでもなく酷い表情の俺に成宮は更に衝撃の言語を口にした。
「何、ボサッとしてんの?さっさと立って行くわよ私の家に。」
「へっ?」




