始まりと終わりの朝
チュンチュン。
ジリジリと降り注ぐ太陽光と小鳥の鳴き声が聴こえる。
時刻はもう朝。
あの後俺は意識を失い風の吹く方へと身体を預け今ここ進帝高等学校の屋上のベンチで寝転がっていた。
上に妙な重みと柔らかな感触がある。
更に小さな寝息までも耳に入ってくる次第。あれ?
ここは何処で、昨日何があったんだ?
むにゃ、みにゃ。
眠気がまだ残っている頭を無理矢理活性させ昨日の記憶を呼び覚ます。
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しばらくの時が過ぎた。
・・・・ということは今上に乗って心地良さそうに寝息をたてているのは?
そこまで思い出し、重い瞼を上に上げる。
「うっ。」
一瞬眩い程の明かりが解放された瞼の内側水晶体に映し出される。
そこで、恐る恐る背後に覆い被さるように乗っかっている人物を起こさないように立ち上がろうと行動に起こす。
が、矢張それは無謀な挑戦であって最後に微小だが、衝撃を起こしてしまい空しくも少女こと成宮瑠璃を起こしてしまった。
「うっ、う〜ん。」
と可愛らしい声を漏らす。それから‘パチッ’と瞼を開けた。
まだ、寝ぼけ混じりの意識で目を擦り意識を正す。
太陽の光が妙に間近で感じる。
一瞬にしてここが外だということに気づく。じゃ、何で私は外に?
そう思ったとほぼ同時に下に何かが敷いてあることに気付いた。ペタペタと数回触りそれが何なのか次第に分かって・・・・・。
顔中、赤色に染まるのと同時に昨夜の事が思い出される。瞬時に立ち上がりその人物から数メートル距離を保ち大声で叫ぶ。
「何で貴方が私の下にいるの?昨夜、私に何かしてないっ?」
昨夜私は確かにロックブレスホーンの咆炎を喰らったはずだ。それを万が一避けられたとしてもあの窮地からどうして逃げられようか。
尚もまだベンチで寝転がっている俺は当然成宮の訴えでもあるような絶叫を聞いていた。だが、起き上がってはならない。
どうせ起き上がった時点で女子特有、ヒロインのお約束でもあるような小言が待っているのだ。
そんな面倒臭いこと、いちいち聞いてられるか。
第一、俺はそういう場面が特に苦手なのだ。それならいっそ寝た振りでもして彼女の理性が整うまで待てばいい。
そんなことを考え瞼を固く閉ざしていた俺の背後に‘ペタッ’と何かが張り付いた。
何だろ?と思う間も無く鋭い声。
「攻」
瞬間俺とベンチが吹き飛んだ。と言うより背中で何かが爆発したのだ。何かが。
「何すんだよ」堪らず俺は叫んでいた。瞬間、しまった。と思った。
目の前には昨夜の煌煌しい銀髪の髪から元の漆黒の黒髪に戻っていた成宮が立っていた。そんな髪はボサボサでまさしく寝起きの姿だった。
成宮の寝起き姿を見れてラッキーと思わなかったわけじゃない。それが血相を変えた
表情じゃなかったら。
それから数分間恒例とも言えよう儀式が始まった。唯一の抵抗として正座ではなく胡座をかいて成宮の小言を聞いていたことは賞賛してもらいたいものだ。
それはそうとそんなこんなで今日という朝を迎い入れたのであった。




