冷静なヒーロー
死闘の戦場。次元違いの戦場。
目の前には、天使の様な華奢な身体を
渦組めている美少女。
その天使に今にも炎を浴びさせようとしている猛獣。
その光景を嘲笑う様に。楽しむ様に。眺め映画監督みたく指揮をだしている男性。
以上の空間の中に俺、新神風斗は飛び出ていた。
何故も何も自分もあっち側の人間になってしまったのだから当然だ。
「成宮。で、俺はあの獣をどうすればいい?」
ロックブレスホーンの咆炎をどうにか避け成宮を階段の二段目にもたれ掛かる様に座らせた俺は意識がまだある状態に成宮に問た。
「・・・・。」
無言。返答なし。
疲れて口も開けれないのだろうか?
「まぁ、じゃ、あの獣を一丁くたばらせに行くかな。」
確かに今状況でそれがベストで得策なのであろうが今の俺にあの獣を倒す力、労力があるのだろうか?
第一、俺は力を得たと言ってもいきなり超人みたいな力を得たわけではないのだ。
今にしたって通常の。本来の俺の力、新神風斗の力であるだからあの獣に対しても上村に対してもゴミ同然であろう。
始めと何ら変わらない。
だが、そんな俺でもプライドというものがある。女の子が1人、殺されそうなのに黙っているのはできない相談だ。
以上のことから俺は結果が見えている勝負に赴こうとしている。
そんな俺の心中を知ってか知らずか成宮が弱々しく呟いた。
「待って。貴方にそんな力はないはず。私には貴方が死にに行く様にしか見えない。」
「だが、このまま何もしずに黙って死ぬなんて俺は嫌だ。」
子供みたいな反論を返す。
その時、背後が物凄い明るく暑く感じた。
と、同時に“バコーンッ”という破壊音が炸裂。
「うわっ!」
予期せぬ事態に驚く俺に対して成宮は平然と口を開く。
「今の防御符は一回こっきりで消滅したわ。次はない。」
「じゃぁ、早く言えよ。時間がないなら。」
と言いながらも俺は成宮の華奢な身体を背負う。
仄かな熱と豊満とは言わないがそこそこある胸の弾力の感触が一気に俺の背中に伝わってくる。流れとはいえこんな美少女をおんぶしていることに密かに喜びを感じていた。
「なっ、何をするの?」
小さく弱々しいがしっかりとした声が俺の耳に届く。本当にそれは間近で。
ただでさえ胸の感触だけでもかなりきているというのに息遣いとかが間近で聞こえるとかマジで昇天してしまいそうだ。
というのは本来の健全な時の俺では思ったことで 今、この状況でそんな呑気なことは意識出来る余裕はない。
まぁ、胸の感触はじかと意識しているが。
男として当然じゃない?
成宮は怪訝そうではあるが抵抗はしてこない。というより出来ないのかもしれない。そんなこと構わない。
「大丈夫だ。安心しな。絶対死なせないから。」少しきめすぎたか?
べたすぎたか?
「ベタね。」
やはりベタでしたか。ガックリ。
それはそうとガチで時間がない。
正面のロックブレスホーンの口が又も赤く橙に光っている。
「悪いけどかなり揺れるよ。」
言うと同時に俺は地を蹴った。直後ブレス。
今までいた場所。即ち本殿が焼失される。
常人のスピード。しかも人を背負っている状態の速さときたらもう予期した攻撃を避けるにも必死だ。無論。
成宮が重いというわけではない。
逆に軽いくらいだ。
今年の女子平均体重なんか知らないが。
多分、成宮はそれ以下。
だが、体力的にかなり限界がきているこの体には成宮の体重でもかなりの負担だった。
実を言うと成宮に話し掛けた時から既に倒れそうだったのだ。
「やっぱ、無茶よ。」
俺の息遣いの荒さとか頬に流れる汗等を見たり聞いたりしたのであろう成宮が俺の身体の状況を察して言った。
「大丈夫。ではないな。」
ここで見栄を張る意味も無いので素直に白状。
「けど、身動きがとれないわけじゃないんだ。何とかこの場から撤退できればいいんだろ?」
「無理よ。そんなこと出来るわけない。」
俺の背中でぶんぶん首を振る成宮。
「残念ですね。お二人さん。そろそろ死んでいただきますよ。」
上村の声でロックブレスホーンの口が開く。その時点で又も俺は地を蹴った。
何とかかわすことに成功。と、思った矢先直ぐに第二射が俺を襲う。
これは間に合わない。
高温の温度がどんどん近付いてくる。
何とか間に合え。間に合え。と念じるように今ある全力で地を蹴って走る。
成宮がそこで「ありがとう。」と言った気がしたがよく聞き取れなかった。
何故ならこの時、俺は違う声を聞いていたからだ。
“ワシの朋友よ。さぁ、口にしろ。主の頭中に浮かぶ言葉を。”
と。直後俺達は灼熱の炎に飲まれた。




