Your Blessing
You must remember our memories.
No say Goodbye.
But,I cant exist beside you.
[Surely you are smiling now.]
朝は変わらずに僕らを起こす。
僕も変わらないままでいいのかな、懐かしい景色の向こうの君を見る。
少しずつ距離がズレていく、何回目かの誕生日。
間の悪い時期の誕生日に、二人だけでいいやと祝ってきた。
ずっと寂しいから、二人で必ず祝おうねと約束した。
時が経つにつれて、年に数回になったメールもこの日は必ず送った。
それもきっと今年で終わりだね。
もう互いに縋る年齢でもなくなって、周りはちゃんと友達がいて。
確かに唯一無二と言える親友は君だけだけど、ここまで遠くにきたらもう十分だ。
『行ってきます。』さようならなんてそんな、二度と会えないような言葉は言わないよ。
友達にメールを送った。君も風の便りに知るだろう、そんな気がした。
『行ってらっしゃい!』
『いつ帰ってくるの?』
『折角俺が帰ってきたのに……国内に居たけど。』
『お土産待ってる。』
『かっこよくなってこいよー』
『寂しいから早く帰ってきてね!』
皆からの返事。暫く会えないと考えるだけで寂しくなるんなら、やめればいいのだけれど。
僕はどうしても行きたかった。
君との思い出を美化するために。
--If I didn't come back,would you wept for me?
I said that,
and a teardrop ran down your cheek.
出発当日、毎日通った道に暫しの別れを告げた。
「行ってきます。」
家族に声をかけ、旅路を行く。
本当はね、皆みたいに待ってるって言って欲しかったんだ。
またカラオケしたり、ゲーセン行ったり、セッションしようぜ、って。
確かに1日だけは切れない絆があった。
だけど今日僕がこの国を出てしまえば、きっとその繋がりさえ切れてしまう。
たった一人の親友のことだけれど、こんなにも怖くなるんだ。
音楽プレーヤーで青い空に良く映える曲を流す。
赤いイヤホンからは、澄んだ男性の声と心地良いバンドの音。
楽器も触れなくなっちゃうかな、それもまた寂しくて。
今までの記憶を綺麗に"思い出"にするまで、何年かかるか分からない。
その記憶が記憶のまま身近であるうちに、僕は思い起こしていた。
一時間くらい電車に揺られて、空港に着く。
『待ってるぞ。』
写メ付きで送られたメールにクスッと笑う。携帯をしまえば、見送りの待つ場所に向かった。
「皆ありがとうな。」
皆笑って「ううん」と言う。
「寂しかったら、メールしてよ。」
「Twitterとか、facebookとかでも連絡とれるだろ?」
口々に言うのは、寂しさを隠すためだろうか。暖かい言葉に少し感動を覚えた。
「うん、多分すぐ寂しくなると思うから、そのときはよろしく。」
「任せて任せて!」
ニコニコしてると、一人が時計に目をやりながら首を傾げた。
「おかしいなー、もうすぐ来るはずなんだけど。」
「ん?」
誰が来るの、そう聞こうとしたがその必要は無くなった。
「ごめん遅くなった。」
変わらない声、変わらない背丈。見てない時間は多くないはずなのに、少し大人びた顔。
間違えるなんて有り得ない、確かに僕の相棒。
「つーかお前!なんで何も言わないんだよ。友達が教えてくれなきゃ、俺知らないままだったんだぞ。」
目を見るなりそうツンと怒る君に、僕がどれだけ安堵したことか。あまり怒らない君を見れたことが嬉しくて、僕はクスッと笑った。
「何笑ってんだよ、居なくなるって聞いて来たのに。」
「ごめん。来てくれてありがとう。」
そう言えば、君は右手を差し出した。
「何年かかってもいい、絶対帰ってこい、待ってるから。俺の相方はお前だけだから。」
純粋に嬉しかった。差し出された右手を握って僕も答える。
「うん、絶対。僕の相方も君だけだ。」
「また騒ごうな。」
おう、そう返事をすると案内アナウンスが流れた。
「じゃあ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
空気を読んでくれた優しい友達も、一歩下がったところから手を振ってくれる。
やっぱり行くのやめて、今すぐあいつらのところに戻っちゃおうか。あまりに皆といるのが居心地良くて、そんなことを考えた。
だけど僕の足は止まらない。振り返りもしない。
帰るまで待っててくれると言ったから。
「早く遊びてーな。」
むしろお前らが来いよ、心の中で笑って言う。
目の前が少し滲んだ気がしたけど、気にしないことにした。
I never forget our memories.
Because they form my basis.
(海の向こう側で僕は、君が笑っていることを願うんだ。)