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お人よし冒険者と鍵開け師  作者: さかみち


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6話

 二人が串焼きを全部食べ終えて一息ついた後、再びトランの用事を済ませるために移動し始めた。

 今度は大通りをそのまま進んでいき、『ロイ魔道具店』と書かれた看板のかかっている店の前にたどり着いた。

 

「道具屋と違ってこっちはなんか立派だね」

 

 店は大通りに面していることもあり大きく、外装もきれいだ。

 

「王都一番の店だからな」

 

 トランがそのまま店に入ると、クレも後ろからついていった。

 店の中では剣や弓、魔石が並んでおり店の奥からは何かをたたく金属音が聞こえてくる。

 

「やあ、トランじゃないか」

 

 トランたちに声をかけてきたのは若そうな男だった。澄んだ青色の瞳に流れるような金髪、そして耳はとがっていた。

 男はトランの横にクレがいることに気が付くと、少し膝を追ってにこやかに挨拶をする。

 

「やあ、初めまして。私はこの店の店主のロイというんだ」

 

「オイラはクレ! アニキとパーティを組んでるんだ!」

 

 ロイは目を丸くすると、嬉しそうに少し笑いながらトランのほうを見る。

 

「へぇ。君もパーティを組んだんだね。僕もうれしいよ」

 

 トランはロイの暖かい視線が恥ずかしいのか、話を遮って懐から出したナイフをロイに押し付ける。

 

「そんなことより、こいつの調子を見てくれないか?」

 

「ふふ……。わかったよ。今はちょうど手が空いてるから、すぐに見てこよう」

 

 ロイはまったく気にしていないのか、ナイフを受け取るとそのまま店の奥に入っていった。

 クレはそのやり取りを見て、珍しそうな顔をしていた。

 

「なんというか、不思議な人だね。アニキなんだか子ども扱いされてなかった?」

 

「あいつは長生きのエルフだからな。出会った時からあんな感じだ」

 

「エルフってすごいんだね……」

 

 トランの武器を整備してもらう間、二人は店の中を見て回ることにした。

 クレが棚に並んでいる武器を眺めていると、さっきトランが渡したナイフと同じものが置いてあるのを見つけた。

 

「ねえアニキ。この店の武器って普通の武器屋のとは違うの?」

 

「ここの武器は魔道具ってやつだ。まあ、魔石と同じで魔法を使える代物だよ」

 

 トランのざっくりとした説明に、クレは首をかしげながら続けて質問する。

 

「だったら魔石で良いんじゃないの?そっちの方が持ち運びやすそうだし」

 

「魔道具の利点は戦闘用の強い魔法を撃てることだ。……原理はよく知らないが」

 

「へぇー。じゃあオイラもひとつ買っていこうかな……」

 

 何を買おうか考えているのか、ワクワクとした表情で棚に掛けられている値札をのぞき込む。

 

「高っ! アニキ! これ高いよ!」

 

 値札にはポーションと同じか、それ以上の値段が書かれていた。トランはそのリアクションを想定していたのか、半笑いしながらクレをなだめる。

 

「魔法に関わるものってのは高いもんなんだよ」

 

「ははっ。もう少し安くしようと努力はしてるんだけどね……」

 

 二人が騒がしくしていると、トランのナイフを持ったロイが店の奥から歩いてきて、そのままトランにナイフを渡す。

 

「特に問題はなかったよ」

 

「助かる」

 

 トランはナイフを受け取ると懐にしまい込む。ロイはその様子に満足をしてからクレに向きなおって優しく先ほどのセリフの補足をする。

 

「まだまだ魔道具や魔石を作れる職人と魔法使いが少なくてね。もう何年かすれば値段も落ち着くと思うよ」

 

「先は長いなぁ」

 

 その言葉を聞いて肩をがっくりと下げる。しかしほかに気になることがあったのか、クレはすぐに機嫌を戻してトランに声をかける。

 

「そういえば、今回は何でそのナイフの修理に来たの? オイラとパーティ組んでから使ってるところは見たことないけど」

 

「魔道具が魔法を撃つには魔力が必要だ。今回は点検と補充だな」

 

 トランの言葉に、ロイが補足をする。

 

「それに、魔道具にも魔石と同じように魔法陣を刻んであるから、すり減ったりしていないか見ておく必要もあるんだよ。大事な場面で不発なんてことがあるかもしれないからね」

 

「普通の武器みたいに使うことってできないの? それっぽい見た目してるし」

 

「魔道具は耐久力が無いし、魔法陣に傷がついたりしたら中の魔力が暴走して……最悪爆発するね」

 

 ロイは真剣な顔でクレに忠告する。クレもその言葉を重く受け止めたのか、一歩後ずさって蒼い顔をしている。

 

「オ、オイラしばらくは買わなくていいや……」

 

「ふふっ。君がもう少し大きくなった時を楽しみに待っておくよ」


 

 店から出ると外は日が傾き始めていた。大通りの露店商たちもだんだんと店じまいを始めており、にぎやかでありながらも少し寂しさを感じる景色であった。

 トランとクレは横に並んでいつものように歩き出す。クレは魔道具店の看板をちらりと見た後、トランにこう言った。

 

「そういえば、アニキの持ってるそのナイフってどういう魔法が出るの?」

 

「ん? こいつは火の魔法が出るやつだ。まあ、一発しか撃てないから使ったのは数回だけだが」

 

「そっかー」

 

 二人がしばらくのんびりと歩いていると、二人が泊っている宿屋に着いた。

 

「じゃあ、今日はこれで解散だ。……」

 

 宿の前でクレにそう言うトランだが、何か言おうとして言葉をひっこめる。バツが悪そうに宿屋に入ろうとすると、クレが背中に声をかける。

 

「今日はありがとう、アニキ。楽しかった!」

 

「そうか。……明日はギルドに行くからな。寝坊するなよ」

 

「うん!」

 

 クレは嬉しそうに部屋に戻ると、そのままベッドに飛び込む。一日王都を歩いて疲れていたのか、すぐに瞼が重くなっていく。

 

「また明日から……。すぅ……」

 

 トランと一緒に王都を歩いたことを思い出したのか、クレは楽しそうに笑いながら眠りについた。

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