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お人よし冒険者と鍵開け師  作者: さかみち


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5話

 それからしばらく後、トランとクレはモンスターの討伐依頼から薬草の採取、時には王都の住民の探し物まで、順調に依頼をこなしていった。

 討伐依頼や採取依頼ではトランが経験と知識を生かしてこなしていき、クレが器用な手先を生かしてサポートする。二人はパーティとして相性が良かったのか、順調に成果を積み上げていった。

 そんな日々の中で、二人は一日依頼を受けず休むことにした。


「アニキ! おっはよー!」

 

 元気よく扉を開けて入ってきたクレ。カーテンが締まっており日が入ってこない部屋の中でも、床に落ちている服や物を踏まず器用に歩いている。

 

「なんで部屋に入ってきてるんだ……」

 

「細かいことはどうでもいいでしょ? それより、暇だよー」

 

「鍵かけてたはずなんだけどな……」

 

 トランがだるそうにベッドから這い出てくる。いつものようなしっかりとした雰囲気は鳴りを潜めており、完全にオフモードだった。

 トランは大きくため息をついた後、クレの前で着替え始めた。クレはトランをじっと眺めつつも、話をやめない。

 

「アニキは今日一日自由にしていいって言ったけどさ。オイラ王都に来たばっかりだからどこに行けばいいのかわかんないよ」

 

 服を着終わったトランはクレの方に向き直り、すっかり失念していたという風に声をあげた。

 

「好きに探せばいいだろって言いたいが……。そうだな、今日は武器の整備と道具の補充をするから一緒にこい。これから先何度も利用する場所になるからな」

 

「うん!」

 

 クレは目を輝かせてトランに同意すると、腕を引っ張って部屋から一緒に出ようとしていた。

 トランはそんなクレを落ち着かせようと頭を軽く押さえながらも、抵抗しないまま一緒に歩いていく。


 宿で朝食を食べた後、二人は王都に繰り出した。

 人の集まる人間の国の中枢部分。そこには人間だけでなくエルフ、ドワーフ、獣人など、様々な種族が入り乱れていた。

 露店で客の呼び込みをする人、治安維持をするために見回る衛兵、これから依頼に出かける冒険者……。

 クレの目にはどれも新鮮に映っている。

 

「今まではギルドで依頼を受けるだけだったからちゃんと見たことなかったけど……なんというか、色んな人が居るね」

 

「まあな。俺も初めて来たときはお前みたいに周りをキョロキョロ見渡してたよ」

 

 その時のことを客観視しているのか、トランも愉快そうに微笑んでいる。

 クレもトランに言われてから落ち着こうとしていたが、すぐに面白そうなものが目に映ってしまい、結局はキョロキョロしている。

 トランについて歩いていると、王都の大通りから少し外れた場所の店にたどり着いた。道も大通りほどの広さは無いが、それがかえって落ち着いた雰囲気を出している。店の外には道具屋とだけ書かれた看板が立てかけられている。

 トランとクレが中に入ると店の中はきれいに掃除されており、棚の商品もきれいに整頓されていた。

 

「あっ、縄に、こっちは煙玉? なんだかいろんなものが売ってあるね」

 

「ああ。ここは手広くやってくれてるから助かる」

 

 クレが興味深そうに店の中をぐるぐる回っていると、店の角の棚に緑の液体が入っている小さな瓶が目に入った。手に取って振ってみると揺れに合わせて波打っている。

 あたりを見回してみると、店の商品を並べている初老の男性が見えた。

 

「ねえおじさん。これってなんなの?」

 

「そいつはポーションだ。見るのは初めてかい、嬢ちゃん」

 

 ポーションという言葉にピンときていないのか、続けて質問をする。

 

「これは飲むとどうなるの?」

 

「たちどころに傷が治るのさ。ああ、傷に振りかけてもいいがな」

 

「こんな便利なものがあるなら前にけがをしたときに、アニキも使えばよかったのに……」

 

「ははは! まあ、傷の度合いにもよるが、基本冒険者どもは使いたがらないな」

 

 道具屋の店主は笑い飛ばし、棚に書いてある値札を指さす。クレがのぞき込んでみると、そこにはクレの一か月分の食費よりも高い値段が書かれていた。

 

「高っ! なんでこんな高いのさ」

 

「そりゃあ、魔石と同じで魔法使いが手間暇かけて作る必要があるからな。まあ、人件費だよ」

 

「うう、世知辛い……」

 

 

 結局、クレはナイフ数本と罠用に縄を買うだけにとどめて店を出た。トランも大したものは買っていないのか、荷物は片手に収まる程度だった。

 

「アニキ。オイラお金持ちになりたいよ」

 

「……俺も、買うものをギリギリまで悩む生活からは抜け出したいと思ってる」

 

 少し気落ちした二人が大通りに戻って歩いていると、どこからか肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。クレはしょぼくれていた気持ちがどんどん回復していくのを感じながら、匂いのもとを見つけようとしている。

 

「あっ! アニキ、あっちだよ!」

 

 串焼きを打っている屋台を見つけると、クレはトランの腕を引っ張って一目散に向かった。

 

「おっちゃん! 串焼き二つ頂戴! オイラとアニキの分ね!」

 

「あいよ! あんたら兄弟かい?」

 

 クレは手際よく肉を焼いている様子をじっと見ている。トランはその様子をしり目に屋台のおやじに返事をする。

 

「いや、冒険者仲間だ」

 

「なんだ、そうなのか! じゃあいっぱい食わねぇとな!」

 

 愉快そうに焼いていた串を多く渡してくれた。

 

「ありがとうおっちゃん!」

 

 クレはお礼を言うとすぐに串にかぶりついて美味しそうに頬を膨らませている。トランもその姿を見て小さく笑いながら串にかぶりつく。

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