11話
「俺とクレはカインのサポートだ」
「わかった!」
トランとクレが正面に、背後にカインがいる状況。ガーディアンは迷うことなくカインに向かって歩き出す。
一歩歩くごとに地面から轟音が響く中、トランは臆することなく背後に近づいていく。
「お前の相手は俺だ!」
一気に頭まで跳躍して頭に剣をたたきつけるが、鈍い金属音を響かせて刃こぼれを起こすのみ。
「……」
「こいつっ……」
剣を撃ち込まれたガーディアンは振り返ると同時に右腕で裏拳を打ちこんでくる。
トランは左腕でとっさに防御するがあえなく吹き飛ばされ、壁に激突する。
「がっ!」
「アニキ!」
カインは背後を向いたガーディアンの隙を見逃さずミョルニルを振りかぶり左足に当てる。
カインの一撃にガーディアンがバランスを崩し尻もちをつくと、その隙を見逃さず頭めがけて再び振りかぶる。
「雷霆よ!」
ガーディアンの頭にミョルニルが当たった瞬間、雷が落ちたかのような轟音と共に部屋全体が光で包まれる。
手ごたえを感じたカインは倒れているガーディアンから距離を取り様子を見ている。
「雷魔法が直撃したはずだけれど……」
カインの心配事が的中したのか、ガーディアンはゆっくりとその体を起こす。両の足で立ち上がると、カインを排除するため一直線に走り出した。
「やはりか……トラン、起きているんだろう! いつもみたいに何か策を考えてくれ!」
「無茶言いやがる……」
トランの左腕は青くはれ上がっており、動かすことはできなさそうだ。
トランは口から血の混じった唾を吐きだすと、口を拭って近くに寄っていたクレに声をかける。
「クレ、一つ頼めるか」
「う、うん。何をすればいいの?」
「俺はこれからなんとか奴の鎧を引っぺがす。多分あの鎧の中身ならカインの攻撃も通じるはずだ。だから……一瞬で良い。奴の注意を引き付けてくれ」
クレはトランの左腕を見る。さっきの攻撃を防御したせいで青くはれ上がり、剣を握ることは難しい。
「任せて!」
クレはガーディアンに向かって走り出し、袖から取り出したナイフをガーディアンに向かって投擲するが、軽い金属音をたてるだけではじかれてしまう。
なおもガーディアンはクレを気にすることなくカインに攻撃を続ける。カインは壁際に追い込められ、どこにも回避することが出来なくなっていた。
クレは焦ったように周囲を見わたすと、カインのミョルニルが目に入った。
「あいつはさっきからずっとカインさんばかりを狙っている。もしかしたらアーティファクトとか魔力に反応するのかも……だったらオイラの箱にも反応するはずだ!」
クレは大きく息を吸い込んで覚悟を決めてガーディアンの足元に近づく。そして背中に張り付き鍵箱をその背中に当てる。
鍵箱はガーディアンに反応したのか、突然音を立てて内部構造を変え始める。
「……!」
クレの存在に気が付いたガーディアンは遠ざけようと背中に手を回す。
クレはカインから注目が外れたことに気が付き、捕まらないように素早く背中から脱出して素早く離れる。
「いまだよアニキ!」
すでに壁を蹴りガーディアンの頭に到達していたトランは、自分が持っていた火の魔法具のナイフを鎧の隙間に突き立てる。
鎧の関節部分に挟まり、ナイフは今にも折れそうなほどきしんでいる。
「こいつはおまけだ!」
トランは突き刺したナイフを強引に傾けて刃が残るようにして折った。
折れたナイフが赤く発光していき次の瞬間、暴走した魔力が爆発しガーディアンを吹き飛ばす。
「……!」
煙を上げて倒れこむガーディアンの顔には大きくひびが入り、一部が崩れ落ちていた。鎧がはげた顔部分には黒い機械のようなものが入っていた。
カインは傷を見逃さず、ミョルニルを振りかぶる。
「これで……とどめだ!」
そしてミョルニルを振り下ろして大きく叫ぶと、再び雷がガーディアンを襲いあたり一面を光で覆う。
光が晴れ、姿を見せたガーディアンはカインの足元で煙を吐きながら静かに横たわっていた。
「はぁ……。何とかなったな」
倒したことを確認し、安堵したカインは腰を下ろす。手から離れたミョルニルがガシャンと大きな音を立てて床に落ちる。
「カインさん!」
クレはトランを支えながらカインのもとに駆け寄ると、心配そうなクレをよそにトランとカインは目を合わせると満足そうに笑い合っている。
「二人は何笑い合ってるのさ! 先に治療でしょ!」
「おっとそうだね。トラン、ポーションだ」
「ああ。助かる」
カインは自分の荷物からポーションをトランに渡す。
トランも右腕で受け取り一息の飲み干すと、左腕の青あざが少しずつ引いていく。
「さすがにすぐ治ったりはしないか」
トランは左腕を動かそうとして痛みが襲ってきたのか顔をしかめている。
「しかし、ほかの冒険者たちがガーディアンに出会わなければいいけれど……」
「まあ、遺跡に慣れてるやつらが多いしうまく逃げるだろ」
トランが破壊したガーディアンを見ると鎧の顔部分は魔石の爆発で完全に壊れており、その中身の機械も雷によって焼き切れている。
「そいつはどうするんだ?」
「このガーディアンも回収して研究所に回すよ。それよりも、この部屋のことだけど……」
巨体のガーディアンが暴れ、魔道具の爆発もあったせいか部屋の中は荒れ果てている。
カインはこの有様を見て大きくため息をつく。
「これは、何か小言を言われそうだ」
クレはカインを励まそうとしたのか、守られていた箱を指さして元気に言う。
「まあまあ!それよりも、ガーディアンが守ってた宝を開けようよ!」
「ははっ。大きな成果が一つはあるんだ。もっと喜ばないとね」
クレはトランとカインの歩く速度に合わせて宝に近づくと、鍵箱を箱に合わせて開錠していく。




