空白のノート
高校生の結菜は、最近よく「生きる意味」を考えていた。
ある日の放課後、図書室でふと手に取ったのは、一冊のまっさらなノートだった。表紙に書かれていた言葉は、たったひとこと。
「書いていいんだよ」
ページをめくっても、何も書かれていない。なのに、そのノートには、静かに何かが宿っているような気がした。
その日から、結菜はそのノートに自分の思ったことを書き始めた。
「生きる意味ってなんだろう」
「どうして人は、誰かのために頑張れるんだろう」
「何もない日は、無意味なんだろうか」
問いばかりで、答えなんて見つからなかった。だけど、ページは少しずつ埋まっていった。
ある日、結菜はふと気づく。
「こんなふうに考えている時間が、一番自分らしい気がする」と。
翌週、進路指導で先生に聞かれた。
「結菜は、将来どうしたい?」
結菜は迷った。でも、こう答えた。
「まだはっきりとは決まっていません。でも、わたしはずっと、“意味を探す時間”を大事にしたいです。答えじゃなくて、問いを大切にする生き方が、好きなんです」
先生は、少し驚いたような顔をして、微笑んだ。
春が過ぎて夏が来たころ。
結菜は、満たされたノートを読み返していた。そこにはたくさんの迷いや孤独や、ちいさな喜びが、確かにあった。
ノートの最後のページに、彼女はこう書いた。
「私は、生きる意味を考えていた時間に、生きていた」




