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空から血の底へ

 

 キンジ君の固有魔法『韜晦(とうかい)

 自分の姿を認識させない魔法。これは触れたものにも効果を発揮する。


 私はキンジ君に担がれ前線から逃げた。右腕の骨折、瓦礫の嵐に巻き込まれた際の全身の打撲、打ち身による筋肉の硬直。目を開ける事さえも億劫であり


 私は徹底的に敗北した。


「くだらない足掻きを、そんなもので結果は何も変わらないぞ。更なる絶望の沼に貴様らを沈めてやろう」

「っ!あの魔力の集まり方はやばい!」


 キンジ君が走る、少しでも奴から離れる為に

 でもダメだ、間に合わない!


「ダメ!私を置いて行って、これは私が招いた事なんだから」

「置いていける訳ない。俺だって男のプライドがあるんだよっ!!」


 キンジ君が魔力で足を強化、高く跳び上がる。


「全てを出し切れ、意地を見せろ。馬鹿やろーーっ!!!!」


 魔力を集中、壁の形にして固める。

 そして魔力波を防ぎ切って、その衝撃で私達は彼奴からどんどん距離を離す。広場に無理矢理着地、キンジ君が私を庇って倒れる。


「大丈夫!?今すぐ回復魔法掛けるから」

「ふんっ」

「ぴやっ!」


 おでこにデコピンをされた。

 突然の事に喉の奥から変な音がでた。


「どんだけ無理するんですか。二十分、これが先輩が稼いだ時間です。充分すぎるくらいです。後は応援隊に全部任せましょう」


 キンジ君が照明弾を上に放つ。


「双子の才能でハナメは俺の位置を分かっている筈です。そしてこの照明弾に奴も気付く、もう終わりなんです。だから、安心してください」


 すぐ近くから聞こえてくる車やバイクの音、どうやら助けが来たらしい。

 だが奴も上から降ってきた。その爪には数人の頭が突き刺さっている。


「人間を食ってみたが特に面白くも無かった、だが一つ良い事を思いついた。 鹿乃瓦ホシモチ、貴様だけは楽には死なさん、全ての絶望を味合わせてから殺すと決めた」

「其処の者達下がりなさい、ここからは我々Hawk's eyeがこの現場を仕切らせてもらう」

「先輩、お待たせしました!」


 ハナメちゃんがこちらに元気に手を振りをながら私たちの所に走ってくる。

 その後ろから褐色の肌におしゃれなちょび髭が似合うおじさんが、部隊を引き連れて異形の前に立つ。


 あのロゴは確かHawk's eye、通称H&E、スーが候補にしていた傭兵の会社。

 3社ある中で最も信用出来る企業でありその実績もかなりのもの。

 とスーが言っていた。


「全員、構え。狙うのは頭のみ、あの気色の悪い目玉を潰してやれ!」


 大量の銃口が異形に向けられる。あの異形は私のSIGで確かなダメージを受けていた。幾らこの異形でも耐える事なんて出来ない筈なのに…

 なのに、どうしてこんなにも落ち着かないのか


「…ホシモチ、貴様を絶望に落とすと私は言ったぞ」

「全員、撃て!!!」

「『適合』弾丸の速度への適合、肉体の柔靭化。時間切れだ、下等な諸君らよ!」

「っっっ!!!」


 服の中に雪を入れられたかの様な衝撃と不快感が私を襲う。

 何か、やばい!


 私は隣でその光景を見ていたキンジの頭を掴み地面に叩き付ける。

 激しい銃声。そして響く戦士達の断末魔。


「銃弾を反射する為に肉体の弾性力を高めた。矮小な誇り無き鉄屑では、私を倒すことは出来ない。そして!」


 H&Eの傭兵さん達は今の攻撃で五割程が減った。

 ちょび髭のおじさんも倒れている。

 指揮官のいない軍隊なんて暴走機関車だ、本来の目的なんて果たせない。中には恐怖からか逃げ出す者も見える。


 奴にはもう、魔法も弾丸も通じない。抵抗する術が完全に封じられた。

 だが時は流れる、それが悪い方向であろうと


庇護(おおい)なる神よ、大地の声を聞き、今、救済(たすけ)を求めます」


 太陽か、奈落か、底知れない程の魔力の塊、打つ手が何処にも見つからない。

 そんな事考えてないで動け恐怖を捨てろ。一人でも多く生き残らせろ!


 走らせていた分身体でおじさんを回収、指揮官が生きてさえいれば軍隊は動く!

 私はハナメちゃんとキンジ君を一番下にしておじさんの三人に覆い被さる。

『偽装』発動、分身体を限界の6体まで出して更に上から被せる。


「先輩っ!どうしてこんな事をっ!」

「私を盾にして生き延びて!」


 怖くないと言えば嘘になる、けれどここで逃げたら私はもう一生立ち上がれない。もう二度とスーを裏切れない!

 私は死ぬ覚悟を決めて衝撃に備える。


 ガキンッ


 突如、音がした。空が、白に染まる!


 上に乗っかってた分身体の重量が急に消える。

 それどころか普段感じている肉体の重さも。


「なんじゃこりゃ〜!?」

「体が、体が宙に浮いている!」


 突如、重力が消えたかの様に皆が空へと飛んで行く。

 軽く浮き輪の様に空を浮かぶ。


「地面が掴めない、それどころか銃も!手が水の様にレンガの道を通り抜けるっ!」

「これは誰の魔法なんだ!?」


 奴はどうなった。

 もしこれがあの異形の能力なら、何故さっきの魔力波を撃たなかったのか。

 何故あいつも同じ様に宙に浮いているのか。


 いや、それどころか、あいつの体が光となってどんどん崩れているのは何故なのか!


「何故だ…!何故『適合』できない、神は絶対である筈なのに!私の思い描く世界が崩れていく、私の求める私のための世界があああ!!!」


 そして異形は崩壊した。


「終わった…の?」

「先輩、大丈夫ですか!」

「大丈夫だけど大丈夫じゃない。私達の体もあんなふうって、のわあああ!!!」

「解除された!今のは一体…」


 待ってそれどころじゃない、癖で着地する時に折れた右手から着いちゃってやばい。私はスーと違って我慢弱いからさ〜痛いよ〜、、、


「先輩、鎮痛剤を打ちます、力を抜いてください」

「ヒィィ注射……やるぞ…ふぅぅはぁぁ」

「もう終わってます」


 ! 気付かぬ間に終わっていた。

 まだ若いからめちゃくちゃ下手くそだと思ってたのにおばあちゃん看護師さんレベルだった。いや、それよりも、ちゃんさんってなんだ…?スギちゃんさん? フワちゃんさん?


「また変な事考えてますよね」

「けれど、カッケェよな〜」

「…ふふっ、そうですね」


「もし重力が反転しているならあれやりたい!水が宙で丸くなるやつ!」

「いやこれは人にしか作用してない…」

「それっ!」水魔法バシャ 資料ビチャ

「モルントルン学長ー!!!」

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