寝過ごしの代償
「いったあ一!!」
「それでもUn Menhir Ceasarの副料理長ですかあなたは!」
「あはは、すいません料理長。少し疲れてて」
「それは本当に申し訳ないです!!」
...しかし心配だ、疲れているというのは嘘ではないようですし。
現在の時刻は午後10時27分。遅くはありますが飲食店は夜の客入りが多いので、営業時間が遅くなることも多いでしょう。そして今日の私はお酒のせいで午後起きだったので、イスルの出勤時刻を確認できていません。
ですが料理人として、彼の師匠として、私には分かります。
「...一つ教えてもらえますか」
「ん?なんでも聞いていいですよ?」
「料理人を辞めてまで、やりたかったことってなんなんですか」
プロが人に出す物を味見しない訳がないんですから
「っ!!...勘の良さは変わらないんですね。あなたは、あの日からなにも変わっていない」
「2年経過したという実感がないですからね。それにあなたもなにも変わっていない」
「見えてないだけです、俺はあの頃とは違う」
「へえ、どう退化したんですか?」
「少なくとも料理なんていうくだらない仕事は捨てた」
イスルが顔を顰めて睨みを効かせる。
なんですこれ?第二次反抗期ですか、おそらく二十歳にもなって。
あと質問に答えて欲しいんですけど、私の命令にはYESかはいかOui Chefと教えたはずなんですけどね。まったく、料理人としても人としても再教育してあげましょうか。
「料理人の私にそこまで言うんですから、さぞ立派なご職業に就いていらっしゃるんですよね?」
「...軍人です、階級は中佐」
...めっちゃ凄いじゃないですか!?
あの寒がり自己不信引き篭もり高1にこんなポテンシャルが...!
言い返せずにいると、イスルが席を立ち背を向ける。
「疲れたので部屋に戻っていいですか?」
「はいもちろん、お皿洗いはやっておきますので」
イスルはそのまま階段の方へと歩いていく。
今は引き止めるべきじゃないですね、お互いに頭を冷やさないと失言してしまう。私は色々と失言が多いと人から言われるので注意です。
「あぁそうだ、この家から絶対に出ないでください。あなたはなにも、知らないんですから」
...まったく、この2年で随分と調子に乗ったようですね。
ですが、やはり2年程度で人は変わらないようです。
真面目にサボり、優しくイタズラをして、図々しく甘える。
それがイスルです、私の弟子であり大切な友人。
そしてイスルがこうなったら原因は、おそらく外にある。
しかしイスルの思いを無碍にして外に出るのは逆効果。ここで出てしまうと、おそらく私は後悔する羽目になるでしょう。故に説得する他ない。料理人として、そして師匠としてのやり方で。
「Realisation 夢は己の手の内にあります」
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寝ぼけてると自分でも理解できないこと自分でやらかす。
食べ終わった食器を流しに持ってこうと思ったら洗面台に置いていたり、手に持った歯磨き粉のついた歯ブラシを櫛と間違えて髪を解いたり。
自動運転の切り替えを忘れて、アクセルガン踏みで寝落ちしたりとか。
「ここどこなの!?」
雪で視界は終わってる、空に飛ぶとレーダーに掛かる。かといって適当に動いたらまもなく餓死か凍死、動かなくても助けなんか来ない、いない。状況は最悪だ。
だがなんにしても暖は欲しい。
錨二基を周囲に走らせ、私が入れるくらいの穴を掘って風を防ぐ。
床が冷たいのでアルミシートと燃えないよう鉄板を設置、自作のボックス型送風機の中に固形燃料を入れて着火。これで簡易のシェルターと暖房の完成。
でもこれはー2がー1になっただけだ。温度の話じゃない。
しかしこの後の動きは既に決めた、だがそれには体力が必要だから一旦休憩する。休憩、タバコ、吸うわけない。もうコリゴリだよ。
でも捨てないよ。タバコはいざという時の火種にもなるし、他にも兵士の買収、鎮痛・止血効果。学校に投げ捨てれば混乱も起こせる便利アイテムだからね。
健康面では百害あって一利なしというけど、戦場では違う。
ここでは状況専用のアイテムを持つことではなく、アイテムを状況に適用させることが大事だ。つまりは魔法と同じ、スケールとイメージの勝負になる。
そしてアイテムの確認も重要だ。アイテム自体に不備があったら元も子もない。特に武器、今回は偵察任務ではなく暗殺任務だからだね。
武器を取り出し、アルミシートの上に並べる。
メインウェポンはAKM、AK-47の近代改修版。
私がこの銃に求める物は頑丈さと軽さだけ、だがこれにしかその目的は果たせない。耐久性重視でベークライトマガジン採用。今回はGP-30、小型グレランも装着して多人数戦も対応する。
サブウェポンはデザートイーグルMark XIX 50AE弾を使用する。
ハンドガンにしては珍しいシングルアクション。
本来は近距離戦に使うが、今回の運用は400m以内の狙撃用。
普通の狙撃銃は大きすぎて持ち込めないがこれならと持ってきた。
ストックとスコープ、ニ脚を用意したから多分いける。
もう一つはベレッタM92
無難、優秀、最強、言うことなし!
バラした荷物をリュックに片づけ背負う。錨で周りの雪を崩して痕跡消去。
準備完了。さて、空を飛ぼうか!




