Deer Stalker Morn Trung
ハンカチで鼻と口を覆いながら貧民街を進む。
生ゴミ、タバコ、その他諸々が混ざり暴走した臭い。
道はゴミや廃材が沢山放置されているし会う人みんな目つきが怖い。
入って十何分だが正直言って二度と来たくない。
それでもすぐに帰れないのは理由がある。
「金眼オレンジ髪の女の子、自分から出てきてもいいんだよ〜」
うちの生徒がとある女の子に襲われる事件が最近頻発している。
動機は謎、物や心を盗られたり怪我させられたりしていた。
それを解決してこいとマツバ君に言われ取り敢えず来てみたが
「めちゃでか〜いここ、宛もなく彷徨っても見つからな〜い!」
一応襲われた生徒にその子の特徴を随分と熱の籠った声で事細かく説明されたけど、目印となるような派手な建物も無いから殺風景で歩いて迷いそうだ。
さてさてどうしようか。私は魔女帽子の中からディアストーカーを取って被る。
探偵がよく被る奴だ、訳すと鹿を追う者。こういうのは雰囲気が大事だからね!
「まずは聞き込みっ!Hey待ちなBoys!」
「なんだこのチビ、物乞いなら表でやりな」
「お前ここのにしては随分と小綺麗だな、世間知らずの金持ちか?」
「金持ち、金を持ってきてくれたのか。うしし」
頭を掴みゴッツンコさせる。
向き合って添い寝なんて仲良しだね!
死...寝ているから起こさないように真っ黒な影に放り込んでおく。
さて気を取り直して
「そこの可愛い子〜!ちょっとお茶しよ〜よ!」
「いいんですか〜!それじゃあのお店入りましょ!」
ボロボロのコンクリ打ちっぱなしの建物。
ウェスタン風の扉に帽子を掛けてから中に入り階段を下って地下に入る。
何故か鍵をかけられたけど気にしない。
何故か顔の怖い人が睨んでくるけど気にしない。
深く考え過ぎない方が人生楽しいんだぜっ!
「ほな、お会計56万になります」
「帰る!!」
でも考えない事と危機感を持たない事は別なんだぜっ!
黒ローブで体を覆い外に掛けていた帽子に跳ぶ。
だがまだまだぁ!この程度でへこたれるモルントルン様じゃないのだ!
跳んだ時に目があった男の子に声を掛けてみた。
「やぁやぁ君!飴ちゃんあげるあら教えて欲しい事があるんだけど」
「飴ころ如きで機嫌を取れると思ってるその態度が気にくわねぇ!失せろクソババァ!」
捕まえて木に吊るした。
「ほらほら食うてみいや。ブラックアイボリー、ヴィュー・ブーローニュ、ピクルスの入ったハンバーガー!!おら!これ食って情報を吐けー!」
「ピクルスに、なんの、恨...みが...ぁ」
泡吹いて気絶してしまった。仕方ない、下ろしてやろう。
こんな所でぐずぐずしてられない、気を取り直して事件現場から離れる。
しっかしどうしようかな。人相手に聞き込みするの向いてないのかも。
「どう思うわんわん」
「グルルゥ!ガゥ!」
「あ痛ー!!」
手噛まれた!狂犬病怖い!魔力で菌を探す、多分無い。
ムカついたが犬に暴力を振るのはナンセンス、立ち去ろう。
少し歩いてまだ他よりもほんの少し綺麗だった教会の入り口に座る。
さて、さてさてさて
「もう嫌いだよこんな街ー!!!みんな意地悪過ぎるよー!!」
久しぶりに泣いた。嘘泣いては無い。
けれど悲しくなったのは事実だ。
私は何十年か前に記憶が無いままプロイシスに流れた。
けれどプロイシスのみんなはそんな私を受け入れてくれた。
今でもあの人達の優しさを覚えている、忘れられない大切な記憶。
だからこの町に恩返しをしようと、プルリ魔法学校を設立した。
私が受け取った優しさを今度は生徒のみんなが誰かに伝えて欲しい。
そのために生徒を守る、それが私の仕事だ。
「よ〜し、もういっちょ頑張りますか!」
「あっ、動いた」
「のわっ!距離感がバグり散らかしてる!」
目と目が合うこの距離、ていうかここまで近づいて気付かない私もおかしいな!
でも...本当に綺麗だ、透き通ったこの金の瞳。
まるで!まるで...まずい鶏ガラ醤油ラーメンのスープしか例えが出てこないっ!?
「元気そうですね、良かったです!」
子供らしい無邪気さと愛らしさある顔が離れてその子の全体像が見えてくる。
茶色のもこもこしたブーツ、コバルトブルーのショートパンツ
ヘソだし白シャツ、薄緑のカーディガン、そしてこのオレンジの髪!
まるで、黒い点一つない新鮮な柿みたい!あぁ愛おしい!
「あの、私の顔に何か...?」
「君のその瞳はレモン果肉のように綺麗でその髪もふわふわしているのに君の纏う雰囲気は随分としっかりしているね、つまりまとめると連絡先教えて」
「ナンパだこの人!逃げろ〜!」
「待ってよ〜!」
絶対連絡先を聞き出してやる!そして私の学校に入れてやる!
「ご年齢は?」
「ひみちゅ!」
「ご趣味は?」
「教育!」
「逃げろ〜!!!」




