大切なものを集めて
待たせたな(スネークorヤンクミ)
今日はギブスを外す日、お皿に盛り付けられた魚のようにベッドで寝かされている。着けてくれたおじいちゃんの指型がくっきりついたこのギブス。愛着は…一切ない!臭い重い不快!早く取ってくれ〜
穴が開くほど扉を見つめていると看護師さんが一人入ってきた。
ナース服の似合う、優しそうでおっとりした人だ。
「ホシモチさん、気分はどうですか?」
「絶好調!とても清々しい気分です」
「ふふっ、それは良かったです」
看護師さんが優しい手つきで包帯を剥がして、冷たいスプレーをかけてくれて。
ギュイイイィンガルガルガル!!!
どうやって外すのかと思ったらピザカッターが出てきてびっくりしたよね。
「これで真っ二つにします」
「いやあああ!!!」
現代のシザーハンズ、ピザカッターハンズ!しかも電動!氷属性!
「あ、あの、これ痛くないんですよね…?」
「はい、ほ一んの少し、こそばゆいだけですよよ。ふふっ」
なんで最後笑ったの?
「リラックスを決めてください!女の子ですよね!」
「私は女の子だし次女だよ!」
振り落とされる処刑のギロチン、もといピザカッター!
刃がギプスを挟る、挟る、挟るっ!そして狂刃は私の腕に到達!
うわあああ!!!………そこはかとなく気持ちいい〜
一週間ムズムズして痒かったところがいい感じに刺激される。
「どうですか、ご気分は」
「気持ちいい〜です、極楽極楽〜」
慣れてくるとリラックスしてきた。体を看護師さんに任せて目を閉じる、あぁこれがずっと続けばいいのにな〜♪
「次はこれを使います!」
少しだけ右目を開ける。なにか、銀色の物だ。
両目を開ける、ライトが眩い。段々と視界が整い、そして見えたのは大きなハサミのようなもの。
…スーから聞いたことがある。人は死ぬと地獄行って、罰として生きたまま舌を引き抜かれるって。
...いやああああああ!!!
「ふふっ、そんな目で見つめられると困ってしまいますねぇ」
「最近あった怖かった事はこれくらいかな」
「………」
「えい!」
「くはっ、落ち着いて…ください兄さん、えぇ大丈夫ですとも」
「わわっ、鼻血出てるよハナメちゃん」
「このバ力は気にしないでください先輩」
二人は結局私が退院するまで毎日お見舞いに来てくれた。
傷も完治、ギプスも外れ晴れて自由の身になった私は今日退院する予定だった。
「話としてはすごく面白いんですけど、もう少し事件に関係ありそうな話はありませんか?」
「うーん、ごめんだけど本当に身に覚えがないんだ」
二人は私に、隣の病室について何か知っていないのかと質問をする。
隣の病室、患者さんはあの『適合』の魔法を持つ偉業との戦闘で負傷した人だった。
その人が私に感謝の手紙をくれたことがきっかけで友達になって、暇で暇で仕方がない時に文字通り転がり込んで話し相手になってくれたりした。名前はペングネルさん。そのペングネルさんが亡くなった、死因は不明。
部屋に抵抗の痕跡はなく、床に倒れているところを発見された。
そして第一容疑者は、この私だ。
「二人は私を信じてくれるんだね」
「勿論です、私たちは先輩が目的のための殺人をするような人ではないと知っています」
「俺たちのことを信じてください、絶対に先輩を殺人犯になんてさせない」
あぁ嬉しいなぁ…ずっと、怖かったんだ。大切な存在を作る事が、失う事が怖かった。
だから家も、シーツも、テレビも、友達も、大切な存在を作らないように拒んできた。でも、やっぱり辛いんだ。
…ありがとうスー、バカな私に、大切な事を思い出すきっかけをくれて
「俺たちも出来る限り手を尽くします」
「あの『適合』の魔法を持つ敵を見つけ出した実績を持つ、名探偵ハナメに任せてください」
「うん、期待してるね!」
ペングネルさんを殺した真犯人、見つけ出して必ずその罪を償わせる。勝ち逃げは許さない。
「…ねえ兄さん、ナースコールの位置ってここでしたっけ?」
「あぁと、なんか違う気もしなくもない、けどなぁ」
「…そうですよね」
二人が部屋から出て行ってしまった。早く退院したいなぁ…ひとりぼっちは寂しいから。
「メロン…飽きたぁ」
「そうだな〜、ゼリーババロアサラダパスタ、全部が甘ぇ」
「パスタは結構美味しかったでしょ、アボカドトマトバジル、結構いける」
「アイデアは良かったな……なぁシカモチ」
「ん〜なに?」
「退院したら俺の家に遊びにこいよ、メロンじゃなくてイチゴのケーキを作ってやるから」
「本当!?約束だからね!」
「あぁ、俺に二言はねぇ」




