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「ごほん。鹿乃瓦ホシモチ、お前の入学を破棄させてもらう」

「いや無理だからね!?」


 花の香りを風に乗せ、人々の笑い声が響く春。幸せの春。

 しかしそれは迷信だった!

 私は今、穴という穴から涙を流している。


 女の涙はね、月の夜の雨なの

 女の涙はね、男を堕とす武器なの


「私は同性だから関係ないけどね」

「嘘だーー!!!」


 鹿乃瓦ホシモチ15歳、絶賛大ピンチであります。

 私はなんとか中学校を卒業し、紆余曲折を経て目標だったプルリ魔法高校に入学できた。

 今まで根無草のスカポンタンと言われていた私もやっと社会的地位を得た。


 そのはずだった


(ねえホシモチ、ハンコとそれに付いてきた紙貸して)

(いいけど何に使うの?)

(とっても楽しいことだよ。まあ、いつもみたいに私に任せて)

(楽しいことか〜もちろんいいよ〜あはは〜)


 騙された!

 私は貧民街で成長した。だから自分が世間知らずなことは理解している。

 だかその代わり人の悪意には人一倍敏感だと自負していた。

 なのにくそっ、この自分の名前が彫られたおしゃれなスタンプが悪用されるなんて知らなかった!


「やっぱり運命の赤い糸は私達を繋いでいるよ」

「そんなものはない、繋がっているのはLINEだけ」

「ほら、糸繋がってるじゃん」

「くっ、策士策に溺れるとはこのことなのか」

「それはちょっと違くない?」


 この子は雪屋スアレス、私と同じ15歳。

 長いから私はスーと呼んでいる。

 スーとは幼馴染で子供の頃から一緒にいろんな事件に巻き込まれてきた。

 …違う、正確に言うならスーが巻き込まれたことに私が巻き込まれた。


 私が単品でいたら問題はそこまで大事にならない、例えるならラーメンだ。

 しかしそこにライスーが合わさるとそれは血糖値上昇爆弾、問題が起こりまくる。

 だから私はスーとは違う学園に入って、休日毎日遊ぶくらいの関係で居たかったのに…


「傭兵もそんな悪くない仕事でしょ、フレックスタイム制のフリーランスだよ」

「命の危険あり、保険なし、超絶実力主義をつけ忘れてるぞ⭐︎」


 まさかまさかの就職、中卒で就職は今時厳しいよ!

 まぁ私もスーも幼卒ですら無いから今更なんだけど。

 

「実力なら十分十分!なんとかなるって!気楽に考えよ〜」

「命の危機を気楽に考えるな!」


 確かに頭は兎も角、自分の強さにちょっとした自信がある。

 けれどそれは私が子供だったからだ。

 だが傭兵として大人になれば私を守ってくれる存在は私だけになる。

 井の中の蛙大海を知らず

 神童と呼ばれた子供が大人になるにつれ本物を知るように

 私の強さもこの町だけのものかもしれない。


「されど空の青さを知る。自信を持ってよホシモチ、それでも信じられないなら私を信じてよ」

「…別にスーが信じてくれても私は強くならない、そういう機能は無い」

「今はまだ強くなる必要はないよ。私が欲しいのは英雄、意志を言葉にする者。ねえホシモチ、貴方の願いは何?」


 …あの日の後悔を忘れたことはない、零れ落ちる命を救うことが出来なかった過去の私が

 未だ私の足を掴み鈍くする。

 けれど、そんな私の手を引っ張ってスーは笑っていた。

 その笑顔に心から救われた。


「私は、私が好きな人達みんなが幸せになって欲しい、これ以上幸せを取り零さ無いように」

「…うん、やっぱりね…。なら私の手を取っちゃお!いつもみたいに私がホシモチのことを導いてあげる!」

「…だあああ!!!分かったよ行くよ!本当っにいつも言葉足らずの上強引なんだから」

「考えてるから誘ってるんじゃん、それにそんな嬉しそうな顔で文句言っちゃって、説得力ないよ」


 スーがいつもみたいに悪戯に笑う。

 別に誘ってもらって嬉しいとは思ってない。

 持っていく銃とかタオルのことなんて考えていない。


「私達のコンビで世界をドンと変えてやろうよ!」

「二人が会えば驚天動地、力を合わせれば天変地異!」


 胸の鼓動が高まるのは、未知の道への期待か、学校を通う前からブッチした不安か。

 けれどそんなことはどうでもいい、前を向いていればいつか、何処にだって辿り着くんだから!


「学校なんて行かなくてもなんとかなるんだよ」

「でも学校に行かないと強盗か詐欺師になるしかないっておじさん達が言ってた」

「ふふーん!私がそんな奴に見えるか!!!」

「見える!!!」

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