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企画参加作品

青井くんのせいだよ。

作者: 水泡歌
掲載日:2025/03/05

 プリントの渡し方が丁寧だった。

 きっかけはただそれだけのこと。


 山川 梨花りか。高校2年生。

 1学期。6月。

 2年生になってはじめての席替えをすることになった。

 くじ引きで決まったのは窓際の1番後ろの席で。

 出席番号順の席から後ろにひとつずれただけの席だった。

 前の席には話したこともない男子が座った。

 青井くんと言っただろうか。

 おとなしくてこれと言った特徴もない男の子。

 友達とも離れちゃったし、今回の席運あんまりかも。

 そんなことを思いながらぼんやりと窓から校庭を眺めてた。

 SHRショートホームルームになって担任の先生がプリントを配る。

 前の席から1枚づつ取って後ろの席に渡す。

 青井くんからプリントが回ってくる。

「あれ?」と思う。

 こちらに身体を向けて、私が伸ばした手にちゃんと渡してくれる。

 この人、プリントの渡し方、丁寧だな。

 そんなことを思う。

 以前に座っていた前の席の男子はノールックでこちらに渡してきやがったので、その違いがよく分かる。

「ありがとう」

 思わずそう言うと青井くんは小さく笑った。

 ただそれだけ。

 ただそれだけのことだった。


 それから私は青井くんをなんとなく見てしまう。

 衣替えしたばかりの夏服の白シャツ。

 色白の細いうなじには真ん中にポツンとひとつホクロがある。

 それがなんかのスイッチみたいでかわいらしい。

 授業中はきっちり伸びた背筋が休み時間になると少しまるまる。

 友達との会話は主にあいづち役で自分の話はあんまりしない。

 でも、とても楽しそうに話を聞く。


 青井くんはとてもふつうの男の子だ。

 その「ふつう」の中に時折ほっとあたたかいものが灯る。

 そのぬくもりが好きだった。


 期末テストになって一時的に座席はまた出席番号順に戻った。

 それぞれの机の中をからっぽにして移動する。

 私は青井くんの席になる。

 青井くんは扉の近く。はしっこ1番前の席に行ってしまう。

 遠いなあ……。

 そんなことをぼんやり思う。

 前の席からテストが回ってくる。

 渡し方はやっぱりノールックで、青井くんとは全然ちがう。

 青井くんの席に座れるのはなんだかうれしい。

 でも、あなたが前の席にいないのはさびしい。

 こんなことを思うのはきっと──


 青井くんのせいだよ。

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― 新着の感想 ―
青春ですねぇ~。 甘酸っぱい空気がします。 恋に青春に、楽しそうな学生生活が羨ましい。 ノールックの男子が、河村勇輝ばりにナイスアシストパスですね。 可愛いお話をありがとうございました。
テストの時にノールック男子が前にいることの残念さもそうなんだけど、青井くんが遠くに行って寂しく思うところが可愛くて好き。短い文字数なのに素敵がぎゅっと詰まっててすごく魅力的。 ……青井くんの魅力に気…
わあ、ステキなお話で、甘酸っぱい気持ちになりました♡ タイトルとオチが最高に好きです! 可愛すぎるっ。 ホクロのぼたん! なるほどなあと思いました。押さないようにしないと……! 好きだとなんでも好きで…
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