血池
愛知県のとあるところに「血池」と呼ばれる池がありました。別名は「おいて池」。なぜかというとそこで釣りをした人が帰ろうとすると、池から不気味な声で「お…いて…」と言う声が聞こえるので、皆が釣った魚を放り投げて帰ってしまうのです。
この噂を聞いて立ち上がったのは、釣った魚を捌くのが趣味の太一さん。「そんなものが怖くて釣りができるかよ」と威勢の良い啖呵をきり、妻が止めるのも聞かず、その池に釣り竿とクーラーボックスを持って出かけていきます。
さて釣りを始めた太一さん。釣れるわ、釣れるわ。上機嫌です。しかし、周囲はだんだん暗さを増し、冷たい風も吹いてきました。止せばいいのに、太一さんは仲間に自慢するためにスマホで自撮りをします。「どうだ、釣った後も池のほとりで自撮りしてやった」
さて、いよいよ帰ろうと立ち上がった太一さんに、例の「お…いて…」という不気味な声が聞こえてきました。太一さんは耳を塞ぎ、「釣った魚をおいてけるか」と啖呵をきり、その場を逃走。声が聞こえない所まで来ました。
池の周りを少し走った程度で立ち止まった太一さん。すると背後から重たそうな金属音と足音が聞こえてきます。ハッと身構えた太一さんの前に現れたのは、血だらけの刀を持った男でした。その男はこう言います。「お…いて…」。しかし太一さんは慌てながらも「おいていかねえぞ…」と言い張ります。しかし刀を持った男は「お…いて…」と言い続けています。
「なんだこの男は…」と怯える太一さん。しかし太一さんはこの男の言っていることに違和感を覚えました。もう一度耳を澄まし聞いてみると男はこう呟いていました。
「おお…痛え…」
よく見ると男は身体中至るところにけがをしています。そして男は血だらけの刀を持ち上げたかと思うと池の水でその刀を洗い始めました。
さすがの太一さんも血だらけの刀を洗った池で釣れた魚を捌くつもりにはならずクーラーボックスを置いて逃げていきました。
後に聞いた話では、血池付近では昔大きな合戦があり、戦い終わった武士達が血だらけの刀を池の水で洗い流していたという言い伝えが残されていたそうです。




