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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第一章 魔獣イラストレーター

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1-8  付録② 泥試合

 ――『泥試合』という言葉が冒険者仲間の間にはあった。そして今日はそんな日だ。


「最悪だ」


 雨が降ってきた。それも普通の雨ではない。雨風が強すぎて地面から逆に吹き上げてくる程だ。頭からつま先まで、マントから武器の隙間まで泥だらけだ。それでもゴーシュは依頼を続けるらしい。


 こんな状況じゃ絵なんか描けないだろうに、それでも帰ると言わないので、呆れながらもやはり今日も剣を振るう。


 討伐はまさにそれ自体が生物いきものだ。状況は刻々と変化する。今日みたいなこんな天気のこともある。しかし、あまりにも天候が悪い場合はたいてい引き返す。みんな命懸けで挑んでいるのだ。すこしでもリスクを減らすのは当然の心得と言えよう。


 そんな心得があっても、貴重な場面では無理をしてでも狩りをするのもまた、冒険者の矜持と言える。ハイランクの魔物をあと一息で仕留められると言うのに、雨が降りました、はい帰りましょうでは勿体ないだけでなく仲間に後ろ指をさされるような、情けない行為だ。


 あと少しで採集できる時に帰るのは悪手といえる。同じ場所にまた来られるとは限らないし、来られたとしても獲物は高確率で逃げているだろう。


 そんなほまれ高き、悪天候での狩りをすることを、『泥試合』と冒険者の仲間内では言っていた。『泥試合』は自慢できることだ。


 俺みたいに()()()()()()()()()()泥試合をしているのではなければ。


 またまた帰り道のグラドたちに、「蟻相手に泥試合してやがる」と笑われたが、いつものことなので気にしない。






 土砂降りの雨が上がったと思ったら、今度は雲が去りけるようながさしてきた。体中についた泥もカピカピに乾燥している。


 ゴーシュが蟻んこ一体の絵を描き上げたようなので、これでもう帰れると思いきや、


「シオン! 晴れたよ! これでようやくまともに描ける」

 と生き生きとまたお絵かきをはじめたゴーシュ。忘れないうちに泥試合も描きたいのだそうだ。


 記憶を頼りに描いているようなので、今回ばかりは俺は魔物を相手にしないで済んでいる。


 そしていつものことなのだが、ゴーシュの依頼で延々とアンティモと戦っていたおかげで、またもや新たな発見があった。


 それは、泥試合をするとコイツらも泥だらけになり、そしてそのまま晴れて泥が乾燥すると、動きが鈍くなるということだった。


 おそらく昆虫仕様の足の関節など、節々に泥が入り込み、乾くことで泥とともに脚も固まってしまうのだろう。そのまま放っておいたら何体か完全に固まってしまっていた。


 おそらく自然な状態では雨が降ったら巣に帰るのだろう。しかし、しつこい人間の攻撃(異常事態)があった場合帰れなくなってしまい、捨て身で対処するしかなかったのだと想像できる。


 これは考えようによってはとても楽な倒し方かもしれない。数匹ならいいが、今回のように複数のリーダーが生まれる程大量に集めた場合、泥で固めてしまえば一気に退治できるというわけだ。


(今のところ用事はないが、アンティモの部位大量獲得などの依頼があれば、この方法を使ってみよう)


 そんなことを考えながら。思いの外集まった標本のような泥アンティモを眺めていた。






 ◇◇◇

 シオンとゴーシュが後にしたその地には、無数のアンティモが泥で固められて標本のごとく置き去りにされていた。


 その数優に数千。


 後にこの地はアンティモ平原と名付けられ、観光地となると同時にそのアンティモの生態研究の地として活用された。


 ◇◇◇


【アンティモ】

 ランク F

 形態  昆虫タイプ。蟻とほぼ同生態。

 行動  群れる。社会性がある。


 備考  10匹集まると中の一匹がリーダーとなる。リーダーのランクはE。

 Eランクのリーダーが10匹集まると、更に上位のリーダーとなる。ランクはD。

 アンティモ平原のリーダーは推定ランクB。

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