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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第四章 クラン抗争と追いかけっこ     (推定累計ポイントAランク)

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4−16 付録 ドラゴンに乗りたい

 そこには紛れもない、()()()()がいた。


 密林の中、シオン一人。縄のような木の幹を登り、鬱陶しいシダ植物を掻き分けたその先にそれは突如顔を出したのだ。


「よう」


 驚きに一度は動きを止めたものの、シオンの顔は歓喜に満ちていた。






 シオンはどうしても龍に乗って空を飛びたかった。龍でも竜でもドラゴンでもいい。


 飛竜に掴まって滑空をしたことはある。飛竜に乗ってみて落下したこともある。でも『龍に乗って空を飛んだか』と言われれば否と言うだろう。


 古龍に乗ったこともあるがあれは空を飛んでいない。


 なぜそんなことがしたいか、という問いは愚問だ。乗りたいから乗りたい。飛びたいから飛びたい。ただそれだけである。



 そのために色々な方法を試してみた。ゴーシュが帰郷しているので十分すぎるほど時間がある。


 フライドラゴンは線が細すぎて、シオンどころかネズミ一匹乗せてもバランスを崩しそうだ。


 ファイヤードラゴン辺りは大柄なので、シオンを乗せた飛翔に耐えられるだろう。しかし案の定気が荒すぎて無理だった。


 ドラゴンはおそらく爬虫類だ。そして爬虫類は鳥類の親戚だとも聞く。つまり、刷り込みと言う方法が可能かもしれない。孵化してから最初に見たものを親だと思い込む()()だ。そう思い立ち、シオンはドラゴンの巣を探したこともあった。


 無事ドラゴンの巣を見つけ出し、親が狩りに行っている間に卵まで近づいてみて、ふと気が付く。


(……これ、いつ孵化するんだ?)


 全く見当もつかない。未知の生物だ。年単位の可能性もあるだろう。孵化のタイミングで都合よく親が居なくなっているとも思えないし、その時までコソコソ巣の端で生活するのもつまらない。


 卵を持って帰るにしても、割らずに帰れるのか。そもそもどうやって温めるのか?


 そんなことを考えて、刷り込み戦法は諦めることにした。


 やはり、野生のドラゴンを捕まえて調教するのが早いのだろうか。そんなことを考えながら特大の黒竜と一騎打ちをしている時、妙案がシオンの頭に浮かんだ。


(そうだ。こいつをあそこに連れて行けば)


 そうして実験的に黒竜を連れて行った先は、木製冒険者のいた森だった。






 巨大な黒竜を木製冒険者の()()樹の根元に埋め、数日してから再びそこに訪れた時。


 なぜかそこは植生が部分的に変化し、密林になっていた。縄のような木の幹を登り、鬱陶しいシダ植物を掻き分けたその先にそれは突如顔を出した。


「よう」


 そこには紛れもない、()()()()がいた。


 あまりの完成度に驚き、一度は動きを止めたものの、シオンの顔は歓喜に満ちていた。


「成功したんだな」


 そうして木製のドラゴンの鼻面をなでる。


 すると唐突にかみつく動作をする木製ドラゴン。紙一重でかわしたものの嬉しさが勝っていて「元気だな」と見当はずれの声をかけるシオン。


 木製冒険者と同様、木製ドラゴンも好戦的なようだが、その行動原理はわかりやすい。水と養分を求めているのだ。求めるものがわかれば操るのもたやすい。


「確か足元のつたを切り、そこを革製の水筒でつないでやって……花束の根元の処理みたいだな。それで感覚器官であるハナの前に水の袋を」


 ニンジンをぶら下げた馬さながらに、水の袋を鼻の前にぶら下げる。そしてすっぽんの魔物を操った要領と同じように、木製ドラゴンを操作してみた。


 木製ドラゴンには皮膚の感覚はあまりないようで、シオンが背中から登っても何の反応も見せなかった。そのため、ここぞとばかりに頭まで登り、木製ドラゴンの眉間の間に座るシオン。心なしかこの時点ですでに満足そうだ。


 そして水筒とは別に手に持っていた特性栄養剤の入った袋を木製ドラゴンに見せ、反応がいいことを確かめた後に、思いっきり振りかぶる。


「よし、飛べ」


 そして木製ドラゴンは高く舞い上がる特性栄養袋を追いかけるべく、いったん身をしずめ、翼を広げ、飛び上がろうとし、失敗し、あわれなこけ方をしてみせた。


 あわや吹き飛ばされるところだったシオンだが、持ち前の反射神経で上手く飛び降り、かわいそうな感じにぺしゃんこになってしまっている木製ドラゴンを前から観察した。


「そうか。お前、木だもんな」


 硬くて飛べないのか。重くて飛べないのか。今のところわからない。


 しかし以前戦った木製冒険者はそれなりに動くことができていた。木製冒険者を持ち上げた時も、中は空洞なのか、大した重さはなかった。それに、この木製ドラゴンも動くことはできている。


 つまり。


「ああ。おまえ、()()()()()しな」


 シオンはドラゴンの頭を撫でながらそう言う。そして、撫でながら、思いつく。




 木製ドラゴンには可哀想なので特製栄養剤を与えておき、シオンはその足元で何やらゴソゴソしていた。


「たしか、これがアレの種だったはず……」




 そこからさらに数ヶ月後。


 シオンが()()()()()()を割ると、まるで羊膜を破ったかの様に新たに木製ドラゴンあらためシャポン液に漬け込んだ特製木製ドラゴンが完成した。


 シャポン液のおかげで強靭になり、更によく()()()


 このドラゴンについて、結局乗ることはできたし大空を飛びまわることもできたのだが「やっぱり木製は木製だ。ドラゴンではない気がする」そうつぶやいたシオンによって野に解き放たれた。




 そしてそう遠くない未来に、この木製ドラゴンが引き連れてきた本物のドラゴンに、シオンは乗ることができたのであった。

ここまでお読み下さりありがとうございます。


前話でひとまず第四章のストーリーは終了です。


おまけである『付録』話を二〜三話投稿した後、第五章に入ります。


次回作は、20:00~21:00更新予定です。

よろしくお願いします。

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エンジェライト文庫様より2023/12/23電子書籍化
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― 新着の感想 ―
[良い点] 試行錯誤がリアル! そして・・・乗れたんだ!?(驚愕) ほ、本願成就、おめでとうございます、シオンさん(褒めてません(笑)) [気になる点] もしもーし、ザバックさーん? えっと・・・がん…
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