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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第四章 クラン抗争と追いかけっこ     (推定累計ポイントAランク)

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4-8  ゴーシュ誘拐

 悪事を働く者と言えばどんな人物像を思い浮かべるだろうか。


 大体は、汚らしい強面こわもての中年の男ではないだろうか。もしくは意外にも眼鏡をかけたヒョロヒョロのインテリぶった人物。または、あえて物語にスパイスを入れるために出てきそうな、整った顔立ちの人物。


 今回の場合は、そのどれでもない、半端者だった。


 ただ自分たちにその自覚はない。軌道に乗って小規模なクランから中級クランへと成長したため、そのリーダーは自分の才能を過大評価した。


  にもかかわらず、伴わない実力。思うようにいかない現状。そのリーダーはなんとかして周囲の人間を()()()()()()と思った。


 だから、()()()誘拐という大それたことを思いついたわけだ。


 突飛な行動というのは得てしてこうやって出てくるものだった。本人たちは深く考えていたわけではない。思いついただけ。しかし、『さすが俺たちだ』とうぬぼれて立ち止まろうともしない。


 それがどのような結果をもたらすのか、考えもせずに。






「あ! いた! ザバックさん」


 マリウスたちが慌てて大柄な冒険者ザバックに駆け寄る。マリウスたちが探していたのはザバックではなかったが、目当ての人物に一番近そうなのが、彼なのだ。


「なんだ? どうかしたか? またシオンがやらかしたのか?」


 ザバックは基本的にはこの町に滞在していない。だがなんだかんだシオンつながりで、ムラの子供たちであるマリウスとも知り合いだ。たまたま逗留していた折に子供たちに捕まった。


「違うんです! いや、あながち違うわけではないけど、今回はちょっと違うんです!」

「そうなんです! やらかされたんです!」

「護衛なのに護衛できてなかったってことは、やらかしたとも言えるよね」

「そうそう! シオンさんやらかした!」


 そう口々に好き勝手なことを言う子供たち。


「いいから落ち着け、お前たち。結論はなんだ?」


「「「「ゴーシュさんが攫われました!」」」」


「は?」


 言っていることは聞き取れたが、理解がすぐには追いつかない。


「……。ああ。最近シオンを探している奴らが妙に増えていたが。そうか、ゴーシュを押さえれば自ずとシオンも出てくる。でもなんでマリウス……。まあ、ムラの子供を使うのが手っ取り早いからか」


 ザバックも筋肉だよりの冒険者ではない。しっかり状況を読み取り、子供たちがみなまで言わずとも自体を把握する。


 シオンはゴーシュに基本的には毎日会いに行く。たいてい魔境へのゲート前で合流し、狩りに出るので、風貌も相まってまあ目立っていた。


 ちなみにこれは知られているわけではないが、長期休暇があっても定期的に会いに行く。給料をもらいに。身分が不安定で銀行口座を作れないシオンは現金手渡しだ。


 とにかく、シオンとゴーシュの関係性は町の多くの人々に知れていた。


 にも関わらず、今までゴーシュが無事だったのは偏にギルドの民間人保護規約があったからだ。


「誘拐した奴ら、阿呆だろ。ゴーシュ誘拐してシオンが味方につくわけないし、ギルドまで敵に回してどうしようっていうんだ」


 ザバックは焦りや心配よりも呆れが先に来た。


 しかし、起こってしまったことには変わりはない。


「それで。シオンはもう探しに行ったのか? ゴーシュを」


「だから、そのシオンさんをまず探してるんです! ぼくら」


「そこからかよ!」


 と言うわけで、シオンと馴染みが深いBランカー・ザバックがわざわざ人探しに駆り出されることになった。






 ◇

 一方そのころシオンは、カエルを眺めていた。


「シオンさん、あいつどうするんですか?」


 キファランガも一緒だ。


 ゴーシュが木の冒険者(レア色)を見つけてから、イラスト集の補完の絵を書き加えるために町に一旦みんなで戻った。


 しかし、シオンはカエルの倒し方を試してみたくなり、また同じエリアに舞い戻ったわけだ。


 キファランガはシオンを引き入れる任務があったので、シオンについてきていた。素直な性格だったので、シオンもあまり邪険に扱うことはなく、なんなら冒険のアドバイスまでしていた。


「よく見ておけ。面白いものがきっと見られるぞ」


 そういう二人の前で、巨大なカエルの魔物はゆっくりと二人に背を向けるように回っていった。方向転換だ。


 そして、見えた背中には、無数の丸いものが。


 それは、ひまわりの種のようなものが苦手な人にとっては鳥肌どころではない光景だった。


「背中に卵を背負って孵化させるカエルがいるんだが。こいつは、それの餌版だろう」


 シオンがそう予測するように、背中の玉には、捕食された生き物たちがそのまま蓄えられていた。

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エンジェライト文庫様より2023/12/23電子書籍化
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