4-5 付録 受付嬢の憂鬱
赤髪の冒険者シオン。その名はギルド職員の間で有名だった。
依頼の達成率とか、ランク上昇率とかそういった話題ではない。
その所作が好評だったのだ。
列にしっかりと並ぶ。挨拶をきちんとする。話を遮らないで聞く。ペンも記入用紙も丁寧に扱って、返すときにはこちらを向けて返すという気遣いまでする。
シオンにとっては日本で培ってきた当たり前な行為だったが、この場ではとてもレアなことだった。
シオンが(今となっては極まれに)ギルドに訪れ受付の列に並ぶと、実は密かに受付の取り合いが始まっていた。受付嬢に限らず、男性職員も対応したがった。荒くれ者の対応が多いストレスフルな職場において、シオンのようなまっとうな対応ができる人物は貴重なのだ。
そして所作だけではなく、次第にその人柄に惹かれていく者が増えた。何をするのもおおらか。余裕がある。これが強者の余裕かと職員で噂した。
ザバック辺りに言わせると狩場での無茶苦茶さを見ていない、いいところばかり見ていると言われそうだが、もはや『優良冒険者』の噂をしたいがために祭り上げている節もあり、噂だけが独り歩きしている状態になっていた。
しかしここ最近、そんなシオンの個人情報をよこせという冒険者が増えてきた。まれに情報の横流しをするようなことはこれまでにもあったが、今回は誰一人としてシオンの情報は流さなかった。皆でシオンを守ろうという流れになったのだ。
こうしてシオンの知らないところでシオン探しが難航する理由がまた一つできていた。





