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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第三章 シオンのスローライフ        (推定累計ポイントD→Bランク)

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3-3  シャポン

更新遅くなりました。よろしくお願いします。


 先日の冒険者兄弟の戦いを見ていたからだろうか。俺も派手な戦いというのをしてみたくなった。ちなみに彼らはチグリス兄弟だと、帰り道の車で名乗ってくれた。


 彼らは魔法が使える。手のひらからバンバン炎を出していた。とても格好いい。正直言うと、せっかく剣と魔法の世界に来たのに魔法が使えないことがちょっと悔しい。


 とはいうものの、チグリス兄弟ほど本格的な魔法は普段はそこまで見かけない。


 マリウスたちは若いからか本人の素質か、あまり大掛かりな魔法を使ってはいなかった。

 

 ザバックとは町では会うけれど共闘したのは合同討伐の時きりだし、あの時はすぐにクエストが終わってしまったので残念なことに戦うところは見ていない。

 

 爺さんとも店でしか会わない。

 

 軍隊ギルドの連中はかなりの大規模な魔法を使っているはずなのだが、大規模過ぎてあまり近づきたくないから、やはりゆっくりと見学できない。


 とにかく俺も派手に戦ってみたい。なにかいい方法はないか。そう思案したところ、以前ゴーシュが『今度描きたいものリスト』にあげていたとある魔物を思い出した。


 喋る魚はまた今度だ。自然と上がる広角を抑えつつ、楽しい自主討伐くえすとに繰り出すことにした。







 そのエリアは、噂には聞いていたが、まぁまぁ不気味なところだった。


 景色としては、大渓谷に広がる森林地帯。恐ろしく背の高い針葉樹が谷間に延々と続いているのだが、それだけならとても美しい光景だ。


 しかし、その樹々の上に不気味なものが浮かんでいた。ソレは一見シャボン玉のように見える。木がでかいので縮尺がおかしく感じるが、そのシャボン玉のような物体はとてもデカく、直径は人が縦に三人から四人分ほど並べる。


 色も気持ち悪くて、紫色だ。まだらに紋様がうごめいている。よく目を凝らすと薄っすらと骨格のようなものも見える。


 浮いているだけでこれといって何をしてくるわけでもないのだが、ただただ不気味だった。


 谷間を少し降りた、少し足場のある傾斜部分に陣取る。そしてそのシャボン玉めがけ、火矢を放つよう狙いを定めた。







「お、シオン。また会ったな」

「あ、ホントだシオンだ」


「よう、チグリス兄弟」

 シャポンに向けて狙いを定めていたら、後ろから声をかけられた。


「ってシオン。何やってるんだ」

「シャポンは火気厳禁だよ」


 今日も仲良く息のあった声掛け(つっこみ)をしてくる。


「ああ、わかってるんだがな。ちょっとやってみたいことがあるんだ」


 とりあえずそう返しておいて、シャポンに火矢を向け直す。


「いやいやいやいや。だめだよ。こっちまで巻き添えを食らう」

「奴らはのろまだけど、反撃がとても素早いし強烈なんだ」


 それは前知識として知っていた。シャポンは物理攻撃にはそのまま物理攻撃を、雷の攻撃をしたら雷の攻撃を返してくる。中でも火の攻撃をしたときの反撃は凄まじく、打ち込んだ魔法より反応速度、火力が格段にあがるそうだ。


「ああ。それは知っている。それを踏まえて、ちょっとやってみたいことがあったんだ。俺も火を使って戦ってみたくなってな。お前らの戦い方は格好良かったからな」


 そう言うと、一瞬照れたチグリス兄弟だが、


「「いやいや、だから火気厳禁だっての」」


 とツッコミを入れられる。芸人のようで面白くはあるが、そろそろじれったくなってきた。慌てて止めに入る二人に構わず、三度目の正直、シャポンに改めて狙いをつける。


 当然方策はある。厳密に言うと、シャポンの後方の木に狙いを定め、火矢を射掛けた。念の為即座に近くの木の後ろに隠れる。チグリス兄弟も流石の冒険者、素早く身を隠していた。


 推測が外れたらどうしようかと思っていたが、案の定の反応をしてくれた。シャポンは木の方向、つまり()()()()()()()()炎を吐き出した。いや、吹き出した。


 そしてゆっくりと崩れ落ちていくシャポンを眺めていた。


「……シオン。これはどういうことなんだ?」


 チグリス兄が目を見開いてそう言う。弟は口を開いてポカン状態。


「このシャポンそもそも魔物じゃないんじゃないか。そう思ってな」







 二人が落ち着くのを見計らって簡単に説明した。


 このシャポン、中に骨格のようなものがあるから魔物のように思えるが、よくよく見るとその骨格は個体によって全く違う。


 それに、以前正面から火矢を射掛けたとき、シャポンには炎の噴出口はとくに見当たらなかった。むしろ裂けたようにも見えた。


 つまり、それは口などの器官のようなものではない。裂けるということは、破れたということ。もしかしたは、シャポンは中に何かが入った球体? 火に大きく反応するということは……、中身はガスのようなもの? そこまで推察した。


 しかし、推察にしか過ぎない。そこで今回実験に来たというわけだ。


「よく見てるな、シオン……」

「というか、正面から射掛けるのはやめようよ……」


 二人な言うとおり、よく見ればわかることだ。火力が凄まじくて驚いたが、全耐性のナメクジで作った盾がその時は役に立った。


 俺がやったように今まででも、もしかしたら()()()()()冒険者がいたかもしれない。しかし、推測はできてもその先の実験をするリスクを考えると、メリットよりデメリットの方が多い。一つ間違えれば、火が燃え移って大炎上だ。


 好奇心に殺されたい冒険者はもしかしたら少ないのかもしれない。ちょっと残念だ。


「それで、中身がガスの球体ってことまではわかった。でもコイツらの正体って、結局何なんだ」

「そうだよシオン。コイツらには骨があるし、攻撃を打ち返す目もある。魔物に見えるよ。あと、シオンに反撃しなかった理由もわからない」


 百聞は一見にしかず、だ。二人を引き連れて、先のシャポンの残骸のもとへと向かっていくことにした。







「シャポンの正体は、おそらく植物だ。植物の種子の部分なんだろう。植物も魔物だというのならまあ魔物ではあるのかもしれないが。

 それで、シャポンは魔物を取り込む。食虫植物のような感じか。クラケン草とも似てるがあっちは軟体動物型の魔物に分類されるらしいな。

 そして、取り込んだ魔物は種子内の溶液で溶かされ養分となる。ついでに、ガスも発生する。ガスが大量に発生すると、そのうち空気より軽くなって浮かんでいき、シャボン玉のようになるということだな」


 解説をしても、二人はあまりちゃんと聞いていないようだった。


「目のように見えるというのは、植物や昆虫にもある擬態というものだろう。もしくは攻撃を受けた場所が凹んで偶然目のように見える、とかな。

 なんにせよ、意思があるわけではない。物理攻撃は特殊素材ではね返せるが、炎は単純に表面に亀裂が入り、そこから中身のガスが噴出して火炎放射のようになるのだと思う」


 だから、自分とは違う方向から火をつければそちらにガスが噴射する。そう説明している段階では二人は()()()に飛びついて、完全に俺を無視だ。


 宝の山。そう。シャポンは様々な魔物を取り込み、その血肉をきれいに溶かす。骨格を残して。つまり、シャポンの下は、()()()()()()()()()()()()、宝庫。


 今までこれが発見されなかったのは謎でしかない。とりあえず俺にはあまり興味はないが、チグリス兄弟は「これで故郷に帰れる! 大金持ちになって凱旋帰国だ!」ととても喜んでいた。


 せっかく冒険者仲間ができたと思ったのに、故郷に帰ってしまうのだとしたら残念だ。






「なんだ。シオンは火の魔法が苦手なのか。まあ誰でも得手不得手はあるしな」


 帰り道、またチグリス兄弟の車に乗せてもらいながら雑談をした。火矢を使っていた理由を聞かれたところ、このような会話になった。


「そもそもシオンはでたらめな戦い方するからな。火の魔法が得意とか苦手とか関係なさそうだ」


「軍隊ギルドの奴らほど殲滅戦にはならないけど、おれたちみたいな小規模クランも基本はヒットアンドアウェイだ。シオンみたいにグイグイ近づかない」


 他の冒険者たちのセオリーが聞けるのは勉強になる。


「だって気持ち悪いじゃんか、奴ら」


 ……もしかしたら、魔物に対してかわいいとか思わないのかもしれない。探究心の違いもここからくるのやも。


 やはり、他の冒険者の話を聞けるのはとても勉強になる。





◇◇◇

 シオンが趣味の討伐に出かけている頃。とある人々がこんな会話をしていた。


「リーダー。すみません。シオンになかなか会えません。やつ、ギルド本部に顔を出さないようです」


「なんだと」


「最近では町中での目撃情報も少ないようです。もう少し探ってみますが……」


「どこほっつき歩いてんだ。とりあえず毎日狩りに出てるわけでもあるまい。とにかく探し出せ」

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