2-18 付録 ザバックと呑み会
よろしくお願いします。
「ザバックは爺さんも親父さんも冒険者なのか」
「ああ。そうだ。そのせいで俺も物心ついた頃には、冒険者になるのが当たり前だと思い込まされていた」
町中の居酒屋でザバックたちと呑んでいたところ、彼の生い立ちの話題になった。なんだか苦労人のようだ。
この町の住人の大半は冒険者だ。居酒屋の一階には討伐を終えて打ち上げをしている、すでにグダグダになった冒険者たちが溢れていたので、二階の半個室にあげてもらった。
周りにいる客もやはり冒険者で、おとなしく呑んでいる者が多いが、ザバックの会話をチラチラと気にしている。こいつもなんだかんだで有名らしい。
「まず俺の爺さんが冒険者になったんだ。住んでいた国はここからだいぶ離れた土地だったし、周りには冒険者なんていなかったから、親族中で大反対された。でもかなりアレな性格をしていたんで、誰も結局は止められなかったんだけどな」
まだ成人になるかならないかの年頃だった親父さんは、そんな爺さんの面倒を見るためについていったらしい。
「ああ。お前の面倒見の良さは親父さん似なんだな」
「親父は面倒見が良いというよりも苦労を背負い込むタイプだな」
「なおさらよく似ている」
そう言ってやると半眼で睨まれたが、
「そう言うお前らの家族は?」
と尋ね返された。食べ物の絵を夢中になって描いているゴーシュは、顔も上げずに、
「僕の家族は普通だよ〜。兄弟も普通に働いてる」と答えていた。
「まあ、俺の家族も普通だな。俺とよく似ている」
と答えると、
「じゃあ普通じゃないな」
との返し。なんでだ。
「とにかく格闘一家だ。みんな体を動かすのが好きなタイプだな。俺もその影響でいろいろな競技を体験したものだ」
「なるほどね。よくわからないが、その経験のおかげでお前は体幹がいいんだな。そういえばずっと気になってたんだが。出禁にされたギルドで、お前突き飛ばされたとかいってたよな。それくらいでお前がふらつくわけがないだろ、シオン」
「いや、その時は本当に油断してたんだ。誓ってわざとじゃない」
「本当か?」
「本当だ」
ザバックは絶対に信じていない顔をして酒をあおった。
「まあその話はおいとくとして、その格闘技はどんなやつなんだ? お前の体術に似たやつはよそではあまり見かけない。というかそもそもお前は、どこ出身なんだよ?」
「日本だ」
「にほん?」
「ニホン?」
俺の答えに、ザバックもゴーシュも首を傾げていた。
「いや、どこだよ。初めて聞いた。鉄道は通ってるのか? 俺も今度行ってみたい」
ザバックが食いついてくる。酒がだいぶ入ってきたようだ。いつも以上にしつこい。
「いや、俺も帰り方がわからないんだ」
「……は??」
「迷子でな」
「…………は?」
おかしい。よその席からも「は?」と聞こえてきた。
「まあ、ここは楽しいし、別に困ったことはないから、気にしてない」
「……帰らなくて家族は泣いているんじゃないか?」
「まあ俺の一族は既に何人か行方不明なんだ。割とある話だから平気だろ」
「は? 行方不明?」
先程から驚かれてばかりだ。若干面倒になってきたが、おかげで親戚のことを思い出してきた。懐かしい。ある意味俺の原点だ。
「ああ。叔父さんはアマゾンで生物学の研究者をやっている。論文の報告で時折生存報告代わりになってるな。ほぼ行方がわからない。
年の離れた兄貴は、海外旅行中の飛行機で経由地を間違えてそれ以降行方不明だ。たまに現地で道場破りのようなことをしているのが聞こえてくるから、厳密には行方不明ではないな。
その他にもちらほら連絡が取れないやつがいる。
まあ一族みんな楽しそうに生きてるよ」
「そういうシオンも最近は楽しそうにしてるよね。最初は僕の依頼にわめいていたのに」
俺の話にゴーシュが興味を示してきた。
「普通のクエストと違って、討伐失敗しても報酬減額とかはないしな。一つの魔物に集中できるのはむしろ性に合ってたのかもしれない。それに叔父さんの影響で密林地帯で生き物を追う経験はあったから、素養はあったんだろう」
「へ〜、そうなんだ。知らなかったよ、シオン」
「俺もお前に兄弟がいたなんてしらなかったぞ、ゴーシュ」
「いや、いろいろとおかしいだろ、シオン。そもそもお前ら二人はなんでお互いのこと知らないんだよ」
ザバックがツッコミを入れてくる。さすが面倒見がいい。
「雇用主の事情を詮索するものじゃない」
「僕の話を聞かれたくないからね」
ここらへんの線引きもゴーシュとは一致していた。気の合う雇用主と巡り会えて本当に良かった。
――こうして冒険者たちの夜は更けていく。
読んで下さりありがとうございます。
皆成人しております。飲酒できる年齢です。





