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魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第二章 冒険者たち     (推定累計ポイントEランク)

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2-9  美少女冒険者ネリアの疑い

 今日もゴーシュからの無茶振り依頼をこなして無事町に帰り、食堂で食事をしているとザバックがやってきた。


「お、シオン久しぶりだな。どうだ。ここではちゃんとやれているのか?」


 そんな、オカンのようなことを聞いてくる。他にも、クランに入ったのか? 家は借りられているのか? など。


「母親みたいだな」

「せめて兄と言ってくれないか」


 横の席についたザバックと食事しながら一通りお互いの近況報告を終え、いったんそれぞれの宿に戻ることになった。ザバックは自身のクランの仕事があるようで、当面の間は一緒に行動できないそうだ。一緒に行動するつもりも特にないが。


「なあ、ザバック。世話役は必要ないから好きに行動すればいい」

「お前らはなんか放っておけないんだよ。現にランクが下がってるじゃないか」


 それを言われたら反論できないので、とりあえず明後日の方向を向いておく。相変わらず陰気な顔した冒険者たちが歩く町並みが見える。この支部はちょっと活気がないな。


「そういえばシオンお前変な噂を聞いたぞ」


「うわさ?」


「そうだ。しかもあまりよくない雰囲気だ」


 気をつけろよ、そんな不穏な言葉を残してザバックは帰っていった。






 翌日。狩りにでかけようといつも通りゲートを潜ろうとすると、


「ねえあんたシオンでしょ?」


 そう声をかけられた。


 そこに立っていたのは年若い女性の冒険者。つややかな黒髪に芸能人のように大きな瞳、なにより出るところの出た見事なスタイル。


 女性の冒険者がいないわけではなかったが、その中でもここまで可愛らしい者はあまり見かけない。そしてたわわな胸が強調されるような防具を着ていた。そんな格好も珍しい。


(……防御力が低そうだ)


 そう考えながら胸元を見ていると、女冒険者は胸を反らせてあでやかに笑う。


「お得な話があるのよ」


 俺の腕を取り、胸を押し当ててくっついてくる。いい香りまでして少しくらくらする。が、興味のない営業を断るにはきっぱりと言う方がお互いに無駄がない。


「悪いが興味ないな」


「ねえ、そんなこと言わないで。二人きりで話したいの」


 上目遣いで一生懸命に話しかけてきて大変可愛らしい。しかし、仕事は目一杯入っているのでこれ以上何かをする余力はない。


「悪いが興味ない」


 あくまで突っぱねていると、女冒険者は一歩退き表情を変えた。自分の魅力が通じなことが不服なようだ。


「なによ。私知っているのよ。あなた見習い冒険者に適当なこと教えて、指導料とか言ってお金を巻き上げているでしょ」


「何の話だ」


 作戦を変えたようで、甘えるのではなく次は蔑むような態度になった。脅してくるつもりのようだ。目的は何か。金か。


「私見たのよ。噂だけじゃないわ。実際若い子達があなたにお金を渡しているところ」


 なるほど。素材換金で得たお金を俺に渡している場面、見ようによってはそう見える。さらに、「勉強になりました!」とか言ってくれる者もいるのだから、なおさらだろう。まさに俺は傍から見ると悪徳業者だ。


「それは誤解だと思うが」


「何が誤解よ。私嫌いなのよね。あなたのように人をだます人。警邏に通報されたくなければ私の言うこと聞きなさい。それにしても抜けているわね。人前で堂々と詐欺行為してるなんて」


 それはお前の方ではないのか? と言いたくなったが、とりあえず誤解だということを何回か説明してみる。しかし全く聞き入れてくれないため、だんだん面倒になってしまった。


「まあいい。ついてくればわかる」


 そういえあきらめて帰ってくれるかと思ったが、不服そうな顔をしたまま彼女はついてきた。きっと暇なのだろう。






「このお姉さん誰?」

「一緒に行くの?」

「バイト?」

「シオンの友達?」


 子供たちが口々にそう尋ねる。


「いや、知らない人だ」

「バイトでも友達でもないわよ!!」

「俺が詐欺をしていないか見張るらしい」

「え、名前は〜?」

「ネリアよ。私はあなた達を守りに来たのよ!」


 子供たちの言葉に女冒険者は憤慨していたが、子供たちはそれすら楽しそうだ。


「え~。シオンさんはそんな人じゃないよ」

「シオンは詐欺なんかできないよ」

「むりだよね」

「逆に騙されそう」


 子供たちは、楽しそうだ。


 子供たちから変な信頼を受けながらも、子供四人とネリア、なぜかついてきているローレンス、そしてゴーシュを連れたってジープに乗って出発する。(ゴーシュ運転で)。


 ちなみにゴーシュはずっと腹を抱えて笑っていた。






 そして今回のクエストが終わり、町に戻ってきたところでうなだれるネリア。出発するまで偉そうにしていたネリアだが、いまは()()しすぎて話すこともできないようだ。


「ク、ク、ク」


「ク?」

 まるで悪魔になってしまったかのような笑い声かとも思ったが、


「クモは、苦手、なの」


 そう息も絶えだえにようやく口にしたネリアに


「あれは苦手じゃなくても誰でも気持ちが悪いよ」

「そうそう、気持ち悪い!」

「不気味!」

「シオンも怖がってた!」


 同じくかすれ声で話すマリウスたち。


 ――今回の相手は蜘蛛。


 三階建ての建物よりも長い脚と、それに支えられる球状の胴体。さすがの俺でもなかなか気持ちが悪かったのが、その胴体が裏返って高速で転がってくるのだ。裏側は鮮やかなピンクで、ぬめぬめした液体が付いている。脚は内側に格納されている。転げまわって付着した物体を捕食するようだ。


 いつも通り、退治するわけではなくなるべく戦いを引き延ばす。


 危ないのでゴーシュとマリウスたちとネリアは安全な高い木の上に誘導しておく。子供たちも魔法が使えるようで、なんだかごちゃごちゃやり取りしながらも高い木の上に上って見学しておいてもらった。


 戦いを引き延ばすと言いつつ、できることは少ない。ひたすら逃げるのみだ。つまり延々と持久走をする羽目になった。


 最終的にゴーシュが満足する頃合いを見計らって、息の根を止めて終わりだ。






「シオン。あれ、最後どうやったの? あまりよく見えなかったけど蜘蛛が勝手に死んだ気がした」


 マリウスたちがそう尋ねるので、息を整えてから答えてやる。情けないことに一日中走り続けるのは流石にこたえたので大の字に横になりながらだ。


「あいつ、中表なかおもてに裏返っていただろう? つまりどこかに繋ぎ目があるということだ。そう踏んで逃げながら観察していたんだが、ボールの空気穴のような穴がやはり開いていてな。直径を目測で計算して、転がってくるときに上手く刺さるような位置に剣を逆さに立てておいたんだ」


 町で調べた時点では火の魔法で三日炙るとしか書いていなかった。残念ながら魔法の使えない俺は直接攻撃で解決するしかなかったし、最後の方は体力がなく穴に何かしらの武器を投げ込む元気もなかったから苦肉の策と言えた。


 剣を逆さにする方法だが、適当な荷袋に刺して逆さまに立てるというお粗末な罠だ。


 本来なら蜘蛛の方も弱点対策をしているのだろう。つなぎ目にダメージがあったら瞬時にバネのように反発して元の蜘蛛上に戻るような仕組みだったのだろうが、いかんせん今日は俺を追いかけてボディに余計な獲物をあちこちから拾いすぎた。その中には試し打ちの武器もたくさん含まれる。


 必要以上に獲物をまとわりつかせた状態でボディ、つまり円周に獲物を抱え込んでいたのにそれをひっくり返して内側に抱え込んだものだから、体積以上のものをその身の内に抱えこむ形になり、蜘蛛は即行破裂してしまった。予想外の結果には驚いたが、丸く収まったようで何よりだ。


「なんだか生態的に問題がありそうな体の構造だが。元の状態に戻ってからさてどうするかと考えていたのに勝手に破裂してくれた。運が良かったよ」






 とりあえずなんだかんだで今回は魔物を倒すことになり無事素材を回収できることに喜んだ子供たち。


「今回何か学べることはあったか?」


「なんにもなかった~」

「あんなの無理」

「普通に魔法の練習をします!」

「シオンみたいに走るのは頑張れるかも」


 素材をギルドにもっていかせ、素材代から回収のバイト代を差し引いた分を受け取った。最初は取り分割合十ゼロだったが、それじゃ悪いからとマリウスが一部くれるようになったわけだ。いい子だ。


「こういうことだ」


「……わかったわ。疑って悪かったわよ」


 ネリアは疲れ果てながらそう言った。

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