表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣イラストレーターと最強のFランカー  作者: 成若小意
第二章 冒険者たち     (推定累計ポイントEランク)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/79

2-8.5 半人前ローレンス

 素直な見習い冒険者の子供たちに紛れて、もう少し年上の若者もまれに手伝いに混ざるようになっていた。彼はローレンスと名乗っている。一見人当たりが良さそうな青年だが、ちょくちょくトラブルを起こすことがあるようだ。


「シオンさん、ローレンスはずるいんですよ!」


 子供たちは時折ローレンスの愚痴を言うことがあった。ちなみに素材回収の仕事を申し出る顔ぶれは毎回異なるが、ある程度固定メンバーがいる。


 まだ少し頼りないが、率先して行動するリーダー格のマリウス。

 いつもやる気のないウラヌス。

 元気だけが取り柄の、やや幼いエルス。

 おとなしいが、沈着冷静ユピト。

 そして少し年上の、ずる賢いローレンス。


 ローレンスはやや痩せすぎてはいるが、見目のいい少年だ。いや、もう青年といってもいいかもしれない。いつもニコニコとしている(子供たちに言わせるとへらへらしている)し、マリウスたち見習いよりかは年上だが俺よりは年下なので、俺からしてみればみんなと同じ素直な後輩に見えていた。


「どこがずるいんだ?」


「はっきりとこれが悪い! って言えないところが更に嫌な感じなんです」


 普段はおとなしいユピトも不満を口にするほどだった。


 口々に意見を言うものだから話を把握するのに一苦労したが、まとめるとこんな感じだろう。


 例えば、ローレンスは町にいる、まだ見習いをやるには早い子供を連れて手伝いにやってくる。口実としては、『将来のための見学をさせてやりたくて』などと言う。


 そして実際手伝わせてみても、当然その小さな子供は大した手伝いができない。その小さな子供の面倒を見るというていでローレンスは人よりも多くの荷物を持ちつつも、その他の面倒な仕事は手伝おうとしない。


「後でその子から、手助け費用として半額バイト代を徴収するらしいんです。そうすると、みんな平等に配分されているはずのバイト代を、1.5倍ほど多く受け取れることになるんですよ」


 やる気のないウラヌスがそう不満を口にする。


 そもそもローレンスは単独で討伐に出られる年齢だ。なんなら正式なFランカーなので俺よりも身分が上になる。なぜ手伝いに来ているのか謎だ。


 とはいえ人の評判だけで当人を評価するのは不公平だろう。彼の人となりを見るためと、もう少し彼に見合った仕事がないか探すために、別の討伐に誘ってみた。


 ゴーシュ抜きの、趣味の討伐だ。






「えっと……シオンさん。これはどういう状況でしょうか?」


 新人Fランカーのローレンスは、あっけにとられた様子で目の前に広がる光景を見ていた。


 彼を連れてきた場所は洞窟。少し潜った先に、十メートル程の深さの谷間のようなものがある。そこに俺が()()()()()()()()()()()()()()ナメクジタイプの魔物が大量に蠢いていた。ちなみに一匹のサイズはウサギくらいある。


「シオンさん。もしかしてこれ、塩とか撒きました」


「ああ」


「火の魔法も使いましたか?」


「ああ。魔法ではないが、油をまいて火をつけてみた」


「こいつら、塩とか火で増えるって知らなかったんですか?」


「いや、知っていた」


 そう答えたら、ローレンスは突然髪をかきむしり始め、


「あ”あ”! 何やってんすか。なんで知ってるのにこんなに増やして……って、また何をやり始めようとしてるんすか」


 普段のニコニコした顔ではなく慌てふためく彼。


「ローレンス。お前困っていることはないか?」


 ナメクジ魔物に塩を撒きながらそう言うと、


「今現状に困っています! なんで増えるって言ってるのに塩を撒くんですか! というか、なんでこの状況で普通に人生相談しようとしてるんですか。ああもう、まためちゃくちゃ増えちゃったじゃないですか」


 ローレンスが言うように、なめくじの魔物は自分でやっていてなんだが、()()ほど増えている。


 確かに最初は驚いた。この魔物を初めて見つけた時のこと。ナメクジには塩だろうと思って試しにナメクジ魔物に携帯食料の一種として持ってきていた塩を振りかけてみた。そうしたら、二つに分裂したのだ。


 もちろん何が起こるかわからないので、適当に掘った穴に一体だけ閉じ込めてからの実験だ。


 続いて火で炙ってみた。それでも増えた。


 そうやっていろいろと実験をしていくうちに、面白いことを発見したのだ。


「ちょっとここで待っていろ」


 ローレンスにそう言い残して、自分だけ洞窟の谷間に降りていく。


 あたりには気持ちの悪いナメクジがウニョウニョしているが、見た目通り気持ちが悪いだけで特に害はない。谷底で膝下までナメクジに浸かりながらなんとか進んでいく。


本気まじで何やってるんすか! シオンさん!」


 上の方でローレンスが叫んでいるが、とりあえず放っておく。


 そして目当てのものを探し出し、狙いを定めて、持ってきていたもりで突く。


 このナメクジだけ色が違っているのでわかりやすい。


「ローレンス。獲ってきた」


「……何をですか」


 谷底から登ってきた俺のことを、すでに呆れ顔を通り越して不審者を見る目になっているローレンス。獲ってきたものを見せてやる。


「全属性耐性のナメクジだ。お前にはこいつの回収を手伝ってほしい」






 全属性に耐性があるナメクジ。そんな奇跡のような魔物を見つけたのは偶然だった。


 塩でも増える。燃やしても増える。調べたところ、そんなナメクジを退治する方法は氷の魔法で固めてから粉砕するのだそうだ。しかし、俺は魔法なんて使えない。


 そこで違う方法で退治できないかと、水をかけたり、砂をかけたり、油をかけたりとしばらくの間実験していた。


「とりあえず氷魔法以外で退治できる方法は探せた。塩を入れた油を熱くしてから撒くんだ。おそらくなんの攻撃を受けているのか判断できなくなって、対応できずにやられるのだろう。それはいいとして、実験の過程で変なものを見つけたんだ。色が違う個体だ」


 その色付き個体はどの方法でも増えることは無かった。しかし、死ぬこともなかった。試しに他の魔物に魔法で攻撃させてみたが、全くの無傷だ。


 これも理由は推測なのだが、ナメクジが増えるのは攻撃された傷を治すときに、細胞分裂をする。その過程で二体になるのだろう。そしてそもそも傷ができなければ、増えることもないわけだ。


 すべての属性の攻撃が効かない素材。これをどう活用しようか、今からワクワクしている。


 そして、ローレンスにはこの仕事の手伝いをしてもらおうと思っていた。






 事情を話すと素直なもので、むしろ俄然やる気を出して協力し始めたローレンス。


 二人で塩を撒いて大量に増やし、全属性の個体が出たら回収。そして毎回塩油を巻くのも手間なので、氷魔法でローレンスに退治してもらうのだ。


 その作業の最中、ローレンスの身の上話を聞く。


「マリウスたちは、そりゃ幼いのに仕事をして大変だとは思うよ。でも、衣食住はある。保護者がいる。でも、俺は自ら稼がなきゃならない。クランに所属しているけど、なんにも教えてくれないし、割り振られる仕事が危ない割には実入りが少ない」


「とどのつまりは、もっと稼ぎが必要ということか」


「ああ。そうだよ」


 ローレンスはまだ経験不足であるものの、氷魔法も実戦で使えるし、状況判断も的確だ。


 そんな彼でもこすい手を使わなければ生きていけない程度に、この業界は厳しいらしい。


「いつでも仕事があるわけではないが、もう少しお前に合った手伝いをわりふれるようにする。だからチビたちにもう少し配慮しろ」


「ああ。わかったよ」


 ずる賢くて懸命に生きるこの若い冒険者は、少し心を開いてくれたようで苦笑いをしながらも肩の力が抜けた状態でそう答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓↓↓書籍化しました!↓↓↓
(画像クリックで書籍詳細が表示されます) cd486hpren7w4se8gx1c24dvmeqc_9r5_u6_16o_17e12.jpg
エンジェライト文庫様より2023/12/23電子書籍化
販売ストア一覧
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ