8 僕から見た風景 ※ジェイラス第三王子目線
僕の名前はジェイラス=ファル=ジョンストーン。この国の第三王子だ。
僕は王子だから、小さな頃から褒めそやされて育ってきた。
周りの令息達も令嬢達も、親に言い含められているのか、僕に遠慮して愛想笑いを浮かべる。
何だかつまらないなあと思っていた中、僕の前に天使が現れた。
エリザベス=エイジャー公爵令嬢だ。
「ご機嫌よう。初めまして、ジェイラス殿下」
しっとりした艶やかな黒髪で、笑うとコスモスみたいな繊細さが漂う、清楚で可愛らしい女の子だった。
一目見て、僕は恋に落ちた。
彼女は僕の好みを体現した存在だった。
何度も思い返したおかげで、初対面の彼女の様子は、10年たった今でも詳細に思い出せる。
「とても畏まった話し方をするんだね。緊張してる?」
「実は、大好きなおばあさまの話し方なんです。とっても可愛らしくて、わたくし、真似っこしてしまっているんです。……似合いませんか?」
上目遣いでこちらを見てくる様子は天使だった。
似合ってる。可愛い。好きだ。
衝動的に褒めちぎったせいか、彼女は照れたような嬉しそうな顔をしていた。
そんなところも可愛い。
そしてもう一人、フリードリヒも、僕にとって特別だった。
「ご機嫌よう、ジェイラス殿下」
朱色の目をした、僕と同じ金髪の男の子。
そう言ってこちらを見る顔は何だか挑戦的で、僕に対して怯まないところが新鮮だった。
僕は小さい頃から割と優秀な方だったとは思う。
だけど、何をやっても周りが褒めそやしてくるから、本当に自分が優秀なのかよく分からなくて、やる気のない子供に仕上がっていた。
兄は二人いたけれども、年齢が離れていたこともあって、特に張り合うこともなかった。
そして何より、大人達は、子供が集まる場ではとにかく僕をリーダーにしようとするので、その場のメンバーの向き不向きに関係なく皆を引っ張る役をさせられることに辟易していた。
そんな中、フリードリヒは率先して皆を引っ張るリーダー役を買って出てくれたのだ。
僕はリーダー役は嫌いではないけれども、別に固執するほどでもなかったので、大人しくフリードリヒにその立場を譲った。
そうしたら、あの子は迷子になりそうだな、とか、あの子は別の子と組ませた方がいいな、とか、色々と見えてくるものがあって、なんだか楽しく時間を過ごすことができたのだ。
フリードリヒの先導の仕方を見て、自分のやり方と比較することもできたし、学ぶところも大きかった。
僕はフリードリヒに、かなりの好印象を抱いていた。




