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7 わたくしの正直な気持ち



「わたくしの気持ちの整理がつかないのは、8割方、ジェイのせいです!」

「僕のせい?」


 恨みがましい目で見るわたくしに、寂しそうな顔をしていたジェイが、キョトンと目を瞬きます。


「ここのところ、人が変わったみたいですもの。わたくしの知ってるジェイじゃないわ」

「そうかなぁ? 僕は割と好きに生きてるから、ずっとこんな感じだけど」

「そんなことありませんわ。フリードリヒと三人で遊んでいるときは、もっとこう……」

「こう?」


 不思議そうな顔をしてジェイラス殿下がわたくしの顔を覗き込んできます。

 そんなジェイラス殿下に、わたくしはまた、かぁっと顔に熱がこもるのを感じます。


 ジェイラス殿下は中性的な美人さんとはいえ、男性です。

 急に間近に来られると、美しさの中に垣間見える男性的な肩幅の広さとか色々意識してしまって、わたくしの心臓は大忙しです。


「だ、だから、そういうところが!」

「そういう? ああ、フリードリヒが婚約者の間は当然、遠慮はしていたけど……」

「ち、違うんです。そうじゃなくて」


 首を傾げるジェイラス殿下に、わたくしは言葉を続けることができません。


 なんとなく、自分の気持ちの原因が分かってきたような気がして、胸の奥がむずむずしてしまいます。


「とにかく! 気持ちの整理がつくまで、婚約を受けたくないんです。ジェイのことが大切だから」


 真っ直ぐにジェイラス殿下を見つめる私に、ジェイラス殿下は息を呑みました。


 殿下は少し思案するようにした後、意地悪な笑顔を浮かべます。

 わたくしはそれを見て、逆にヒッと息を呑みます。


「ふぅん。気持ちの整理がついたら、受けてくれるんだ?」

「そんなことは言っていません!」

「……エリーが僕のことを意識してくれてるみたいだから、今のところはそれでいいや」


 今度はふわりと優しく微笑むジェイラス殿下に、わたくしは目を白黒させながら、ドギマギしてしまいます。


「エリーが嫌がることはしたくない。エリーはあいつのせいで沢山悩んできたんだから、これからは自分のためにゆっくり考えるといいよ」


 ジェイラス殿下はそれだけ言うと、遠くの席に座ってくれたキャロラインを呼びに席を立ちました。


 ジェイラス殿下は、お優しいのです。

 本当に優しい。


 でも。


「……エリー?」

「え?」

「あの、手が」


 気がつくと、わたくしがジェイラス殿下の服の端を掴んでいて、そのせいでジェイラス殿下は動けなくなっていました。


「あっ、ご、ごめんなさい。わたくし」

「エリーは甘えん坊だなぁ」


 慌てて手を離したわたくしを見て、ジェイラス殿下は立ち上がったまま、頭を撫でて、立ち去って行きました。


 でも、そうじゃないのです。

 わたくしが望んでいるのは……。


 はっと我に返ったわたくしは、頭をぶんぶん振って、邪念を振り払います。



 ……わたくしは一体、どうしたいのかしら。



 困っているわたくしの脳裏に思い浮かぶのは、ジェイラス殿下の、「僕じゃ不足かな」と言った際の優しいけれども悲しそうな笑顔です。


 早く決意しなければと、わたくしはお腹に力を入れました。





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