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28 エピローグ



「ジェイ、待って」

「エリー早く早く。こっちだよ!」

「ジェイったら、もう!」


 今日のわたくしは、ジェイに手を引かれるまま、王都の近くにある小さな森に散歩に来ていました。

 ここの小さな森は、王都の観光地の一つで、道もある程度整備されていて、いつも人で賑わっているのです。


 あれ、でも今日は人が少ない気がしますわね?

 先に進むほどに、人気がなくなって行く気がします。

 気のせいかしら。


 ジェイは、もたもた進むわたくしを幸せそうに眺めながら急かしてきますが、わたくしは足が遅いのでなかなか早く進むことができません。

 でも、楽しそうに行き先を目指すジェイを追いかけるのは、胸がドキドキして、正直嫌いじゃないのです。

 やはりわたくしは変態……!


 ジェイに案内されるままにたどり着いたのは、大きな湖と、その周りに広がる花畑のある、開けた広場でした。


 沢山の白詰草が、春の風に揺られています。


「ジェイ……!」

「エリーに見せたかったんだ。こういうの、好きだろう?」

「ええ! とっても素敵よ。凄いわ……!」


 誰もいないその開けた空間に、澄んだ湖に映り込む空と花々に、わたくしは大興奮です。


 そんなわたくしを、嬉しそうに見たジェイは、そっと白詰草を一本摘んで、器用に指輪を作っていきます。


「ジェイ、それ……!」

「うん。エリー、こっちにおいで」


 わたくしがジェイに駆け寄ると、ジェイはわたくしの右手の中指にそれをそっとはめます。


 いつかに貰った指輪と同じ、白詰草の指輪です。


「ジェイ……あの……」

「中指なのが気になる?」

「ち、違うの、そうじゃなくて……」


 わたくしは嬉しくて胸がいっぱいで、それを伝えることができないくらい幸せでジェイを見つめてしまいます。


「これじゃあ物足りないの? じゃあ仕方ないなぁ」

「……?」


 ジェイは再度わたくしの右手を取ると、今度はその隣の薬指に、なんと本物の指輪をはめました。

 その指輪は、白詰草がモチーフとされているものでした。わたくし好みの可愛らしい意匠に、わたくしは目を見開きます。


「ジェイ……!」

「本物の白詰草の指輪は、萎れるのも早いから。エリーがいつでも見ていられる指輪を贈りたかったんだ」


 あまりのことに、わたくしはさらに喉が詰まってしまって、涙に揺れる目でジェイを見つめることしかできません。

 そんなわたくしを見て、ジェイはそっとわたくしの頬にキスを落としました。


「……! ジェイ、その……」

「エリー。僕のお姫様。僕はこれからもずっと君だけを見つめてると思う。エリーは僕のこと、好き?」

「好きよ。大好き。ジェイが好き……!」


 ポロポロと涙をこぼしながら、必死に気持ちを伝えるわたくしに、ジェイはふわりと微笑みます。


「じゃあ、確かめさせて」


 そう言うと、ジェイはわたくしの唇をそっと奪っていきました。

 無理矢理ではありません。

 わたくし、ジェイとそういうことをするのは、全然嫌じゃなかったのです。


「……エリー?」

「あのね、わたくし……」

「うん」


 ジェイはわたくしの言葉に耳を傾けながらも、わたくしと額を合わせて、至近距離にいるままです。

 そうやってわたくしがときめくようなことばかりする意地悪な彼に、わたくしはなんとかこの気持ちを伝えたくて、言葉を紡ぎました。


「ジェイがわたくしのこと、好きでいてくれて良かった。素敵なキスをありがとう」


 そう言って笑うと、ジェイは一瞬泣きそうな顔をした後、わたくしを抱きしめました。



「何があっても婚約解消なんてしないから、覚悟して」



 ジェイの言葉に、わたくしはまた感極まって泣き出してしまいます。



「わ、わたくしだって、絶対に解消なんてしないんだから」

「本当かな?」

「本当よ! ジェイも覚悟していてね」



 そうして、わたくしとわたくしの王子様は、せっかく素敵なお花畑に来たのに、お互いだけを見ながら、くすくすと笑い合っていました。



 そしてわたくしは、大好きな婚約者に振られたわたくしを愛してくれた王子様を、これからは沢山幸せにしてあげようと心に誓ったのです。






おわり








エリザベスがジェイに溺愛されている描写が少なかったので、番外編を追加しました。


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