25 当て馬のはずの僕 ※ジェラス第三王子目線
結局僕はフリードリヒに首根っこを掴まれたまま、エリザベスに追いつかれてしまった。
「ジェ、ジェイっ、はひっ、はふ、はっ………ジェイっ…………」
「ちょっ、エリー!? 息をするんだ!」
到着したエリザベスは、息を切らしすぎて、酸欠で倒れそうになっていた。
休んだ方がいいと言ってベンチの方へ誘導しようとしても、僕の右手を両手で握ったまま、動こうとしてくれない。
よく見ると、その手の中には、フリードリヒのものと思しきハンカチが握られているようだ。
僕の心はもうズタズタだった。
今すぐ、この場から逃げ出したい……。
そんなふうに思っているうちに、エリザベスは僕の方を見つめて、必死に何かを伝えようとしていた。
「ジェイっ……」
「……うん、どうしたの」
自分でも笑ってしまうくらい掠れた声が出て、僕は自分にげんなりしてしまう。
一方でエリザベスは、そんな僕の様子を見て泣きそうな顔をしていた。
うん、この二人の様子を見るに、きっとエリザベスはフリードリヒと仲直りしたのだろう。
そしてそのことを、僕には言いづらいのかもしれない。
……エリザベスは優しい子だからな。
やはり僕が背中を押してあげるのがいいんだろうな……。
「フリードリヒと仲直りしたんだろう?」
「ええ。そう、なの……」
「…………良かったね」
思ったより泣きそうな声が出てしまった。
だから今日はエリザベスと話をしたくなかったんだ。
だめだ。今彼女の口から直接『フリードリヒがやっぱり好き』とか言われたら、耐えられる気がしない。
僕の手を握りしめたまま、こちらを見ている彼女の気配を感じながら、僕は彼女の方を見ないようにして呟くように訴える。
「エリー、その、いいんだ。君の気持ちは全部分かってる。だからその、はっきり言わなくても……」
「え!? そ、そんな……フリッツから聞いたんですの?」
「いや、別にそういう訳ではないけど」
「じゃ、じゃあ……ジェイはいつの間にか、わたくしがジェイのことを大好きだってことに気がついてしまったのね……!?」
…………ん?
今何か、聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
ジェイが大好き?
ジェイって誰だ。
……………………。
「えっ、僕?」
「フリッツったら、本当にジェイに何も言ってないの?」
「俺が言ってどうするんだよ」
「そ、そうね。じゃあ……ジェイはやっぱり凄いのね……。わたくしのこと、なんでもお見通しなんだわ」
ちょっと待ってくれ。どういうことだ。
エリザベスが、僕を好き?
好意的すぎる解釈で深まっていくエリザベスの誤解に、僕は慌ててフリードリヒの方を見る。
奴は今にも爆笑していまいそうな顔で、こちらをニヤつきながら見ていた。
お前、全部分かってて楽しんでるな!?




