23 やはりわたくしは変態のようです
「なっ、な、なっ……!」
真っ赤になって口をはくはくさせているわたくしを、フリードリヒは楽しそうに見ています。
「エリーは昔から、いじめられると喜んでたもんな」
「そ、そんなことありません!」
「そんなことあると思うぞ。俺は三人で遊ぶ時、色々提案したもんだけどさ。難易度が高くてエリーだけがついていけないような状況を作ると、いつも何故か喜んでたじゃないか」
そ、そうだったかしら!?
改めて言われてみても、混乱していていまいち実感がありません。
わたくし、そんな子供だったの!?
「うちの母さんは危ない遊びはするなって言ってたんだけどさ。危なくない遊びだとエリーがどことなくつまらなさそうだって言ったら、その場にいたエリーの母さんが、『うちの子ドMだからごめんなさいねー』って」
お母様ぁあー!!
「実際俺に惚れたのもさ、基本的にはいつも振り回されるのが好きだったからだろう?」
「そ、そんなっ、わたくしは……!」
「エリーは自分の顔色を窺ってくる優しいけど刺激のない男、興味ある?」
「ありませんわ」
はっ。即答してしまいました。
「もう分かってるだろう? エリーは、いつも振り回されながら、たまーにサプライズとかで優しくされるのが好きな変態なんだよ」
わたくしが変態であることが、もはや事実であるかのように諭してくるフリードリヒ。
ひ、ひどい。
あんまりですわ。
でも、その……完全には…………。
………………否定できない……ような…………。
わ、わたくしはやはり変態なんですの!?
「だから最近まで、エリーはジェイに興味なかっただろ」
「えっ……」
「あいつ昔から、エリーの前では猫かぶってたし」
逆効果なんだけど言ってやらなかったんだ、とフリードリヒは楽しそうに笑っています。
わたくしは、話についていくのが精一杯で、「え? え?」とずっと震えています。
「でもあいつ最近、割と本性出して好き勝手してるから、エリーも気になってるんじゃないかと思ってさ」
「フリッツ……」
「だからまあ、色々と詫びも兼ねて、あと一押ししておいてやるよ」
そうして、フリードリヒが教えてくれた内容は、わたくしにとって衝撃的なものでした。
わたくし……わたくしの、王子様は…………。
彼のことで胸がいっぱいになっているわたくしを、フリードリヒは優しい顔で見つめています。
そうしていたら、フリードリヒが「あっ」と声を上げました。
「ジェイだ」
「えっ!?」
振り向くと、遠くの渡り廊下のところに、ジェイラス殿下がいました。
わたくしは、嬉しくて嬉しくて、つい頬が緩んでしまいます。
けれども、声をかける前に、青い顔をしたジェイラス殿下はくるりと踵を返して、その場を立ち去ってしまいました。
「えっ……ジェイ、どうして」
「あー。あれは誤解したな」
「ご、誤解?」
「俺とエリーが元鞘に戻ったと思ったんじゃないか」
な、なんですって!?
そんな、わたくし困るわ!
だって、わたくしは今せっかく、わたくしの気持ちを確認したところなのに……!
それになにより、そんな誤解をしたら、きっとジェイラス殿下は悲しそうな顔をしてしまうに違いありません。
(そんなのは絶対に嫌……!)
真っ青になったわたくしは、慌ててジェイラス殿下を追いかけるべく走り出します。
そんなわたくしを見たフリードリヒが、ヒューと口笛を吹きましたが、わたくしはそんなことには気がつきません。
(ジェイ、ジェイ……!)
わたくしは、早くジェイラス殿下に追いつかなければと、必死に足を動かしたのです。




